■学会にて(京大数理解析研,その9)
【1】等周不等式
この節では,多面体に対する等周問題と取り上げますが,任意のn次元の等周不等式は,
S^n/V^(n-1)≧n^nvn (vnはn次元単位球の体積)
=n^nπ^(n/2)/Γ(n/2+1)
で表されます.
n次元等周比(Cn)において,とくに,n=2のときとn=3のときについては,
C2=4π,C3=36π
すなわち,
L^2≧4πS
S^3≧36πV^2
がわかります.以下,
C4=2^7π^2,C5=8/3*5^4π^2,C6=6^5π^3,・・・
となりますが,等周比が有理数(整数)×πの形となるのは,2次元・3次元だけのようです.
また,凸体Vを囲む曲面Sにおいて,平均曲率は,
H=1/2(1/R1+1/R2)
で定義されます.ここで,平均曲率の積分を
M=∫Hds
で表すと,ミンコフスキーの不等式
S^2−3VM≧0
M^2−4πS≧0
これから直ちに
S^3≧36πV^2
が導かれます.
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ともあれ,3次元凸集合に対し,表面積をS,体積をVとすると,
S^3≧36πV^2
が成り立ちます.等号成立は球のときだけで,すべての立体中で球が表面積に対して最大の体積をもっています.
多面体の等周問題は,単位球に外接する多面体では,
V=S/3
となることから,
S^3/V^2=9S=27V
が成り立ちます.したがって,与えられた面数nをもつ多面体に関する等周問題は,最小の体積または最小の表面積をもち,球に外接するn面体を定めるという問題に帰着されます.
等周比の点からいえば,5種の正多面体では正4面体が最も球に遠く,正20面体が最も球に近いことになります.それでは,f個の面をもつ多面体の中で等周比の最小値を与えるものはなんでしょうか?
答えはf=4,6,12ではプラトンの正多面体,すなわち,正四面体,立方体,正十二面体が最小値をとります.しかし,f=8で等周比の最小値をあたえるものは正八面体ではありません(アルキメデスの反プリズム).f=20は未解決のまま残っています.
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三次元の問題はなかなか一筋縄ではいきませんが,凸n面体の表面積をS,体積をVとすれば,等周不等式は,
S^3/V^2≧54(n−2)tan(ωn)(4sin^2(ωn)−1)
ただし,等号は3稜頂点多面体に対してのみ成り立つことに注意して下さい.これによって,3稜頂点多面体に対しては,正多面体(正4面体,立方体,正12面体)が同じ面数の多面体の中でも最良となることが証明されるのです.
一方,3角形多面体に関しては
S^3/V^2≧54(n−2)(3tan^2(ωn)−1)
であることが予想されています.
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[補]
ωn=n/(n−2)・π/6 n≧3
を導入しておきます.球面上にn個の点を配置した場合,2n−4はn個の頂点をもつ三角形面正多面体の面数となりますから,△n=6ωn−πは単位球面が分割されてできる球面三角形の平均面積,また,球面正三角形の場合,2ωnは面積が6ωn−πの球面正三角形△nの1つの内角を表しています.
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