■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その41,杉岡幹生)
(その40)の結果を加え、(その40)冒頭の表を更新しておきます。
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ζ(s) 仮想?実2次体Q(√1)ゼータ、導手N=1 ⇒ n分割可能。
L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4 ⇒ n分割可能。
LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3 ⇒ 1〜10分割可能。n分割可能と考えられる(予想)。
LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5 ⇒ 2分割、4分割、6分割、8分割、10分割が可能。2n分割可能と考えられる(予想)。2分割が最良か?(問題)
注記:nは1以上の整数
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<付記>
ゼータ関数の分割をやりはじめて半年になります。これはあまりにも基本的なものなので、「だれかが先にやっているのではないか、オイラー(1707-1783)はこの景色を見ていなかったか?」と思ってきました。それを数学仲間に問うたところ、Sugimoto氏が、「オイラーが似たことをやっている」と教えてくれました。
『無限解析序説』への招待
サイエンスセミナー 2007 年 p.17-19
http://www.sci.kobe-u.ac.jp/old/seminar/pdf/noumi2007.pdf
神戸大・野海正俊先生の論文「オイラーの数学から −『無限解析序説』への招待」です。驚きました。これを見ると、私と同じような結果を出しています。やはりオイラーはやっていた。例えば、論文p.19にある
1/3^2 +1/5^2 +1/11^2 +1/13^2 +1/19^2 +・・=(2-√2)π^2 /32
は、「ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造」(その13)でやったζ(s)の2分割の一方(A2)と同じです。
http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu2/12031_xx.htm
ただし、オイラーの時代はおそらくゼータ”関数”という概念自体がまだ成熟していなくて、オイラーはいろんな色とりどりの”級数”を出して喜んでいるだけの感があります。オイラーが生きた時代は、ディリクレのL関数L(χ,s)という巨大なゼータ族が発見される前だったので、それはそれで当然のことです。
ゼータがそれ自体として重要視されはじめたのは、ディリクレ(1805-1859)やリーマン(1826-1866)からではないでしょうか。ですから、このオイラーの結果にも「ゼータは何分割できるか?」という問題意識は全く出ていない。ゼータが関数として、それ単独のものとして非常に重要視される現代において古典的な部分分数展開式に着目し、「ゼータは何分割できるか?」という視点から私が計算をはじめたという流れになると思います。そして、『ζ(s)やL(s)はn分割可能、すなわち”無限分割”可能』という予想だにしない結果が出た。
それにしても、オイラー恐るべし!!です。ゼータ分割の起源はオイラーにあると言える。不可思議な”三角関数の部分分数展開式”もおそらくオイラーが出したものとわかりました。「部分分数展開式は一番最初に誰が導いたか?」と疑問に思ってきたのですが、オイラーだった。私がゼータ分割の生成核として使っているG[1](x)とかG[2](x)は、上記論文中のp.17〜18にあるPs(cotπx)式と本質的に同じです。さらに、p.18,19などを眺めると、L(χ,s)ゼータが既にそこに顔を出している!例えば、p.18の”1/1 -1/2 +1/4 -1/5+・・”は虚2次体Q(√-3)ゼータです。ディリクレはオイラーの「無限解析序説」を参照してL(χ,s)ゼータを構成した可能性もあります。
私たちは、オイラーの手のひらの上で遊んでいるだけかもしれません。以上。(杉岡幹生)
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