■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その38,杉岡幹生)

 今回から、実2次体Q(√5)ゼータLN(s)の分割を調べていきます。

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ここから、これまでとはすこし違った様相を見せはじめます。生成核G[2](x)関数からはLN(s)の1分割は出ないようです。

 LN(s)分割は、G[2](x)の世界ではいきなり2分割からはじまります。そのため”2×n”の2n分割つまり、2分割、4分割、6分割、8分割・・が実現されていきます。

 これまでの分割の結果をまとめると次のようになります。

 導手の小さいゼータから調べていっているわけですが、N=3の次に大きな導手(N=5)をもつLN(s)の分割を調べようとしています。今回から?を埋めていきます。

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 ζ(s) 仮想?実2次体Q(√1)ゼータ、導手N=1  ⇒ n分割可能。

  L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4    ⇒ n分割可能。

  LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3    ⇒ 1〜10分割可能。n分割可能と考えられる(予想)。

  LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5    ⇒ ?

 注記:nは1以上の整数

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 LN(s)ゼータはディリクレのL関数L(χ,s)=Σχ(n)/n^sの一種で(n=1〜∞)、次のディリクレ指標χ(n)をもつ実2次体Q(√5)ゼータです。

 LN(s)=1 -1/2^s -1/3^s +1/4^s +1/6^s -1/7^s -1/8^s +1/9^s +1/11^s -1/12^s -1/13^s +1/14^s ・・ -----@

(導手N=5, n≡1 or 4 mod 5に対しχ(n)=1,  n≡2 or 3 mod 5に対しχ(n)=-1, その他のnではχ(n)=0) ----@-2

 導手とは、ゼータを特徴づけるχ(n)の”最小ブロック単位”のことです。@を見るとわかるように、LN(s)では@-2の規則にしたがってχ(n)が+1や-1になっていることがわかります。mod 5だから導手は5となります。

 仮想?実2次体ゼータと考えられるリーマンゼータζ(s)を除くと、LN(s)は実際の実2次体では最小の導手(N=5)をもつゼータ関数となります。

 LN(s)の特殊値では、LN(2)、LN(4)、LN(6)・・が明示的な特殊値をもちます。これはζ(s)ではζ(2)、ζ(4)、ζ(6)、・・が明示的であることと対応しています。さらには、これは「実2次体ゼータはcos級数から生まれる。虚2次体ゼータはsin級数から生まれる。」という原理とも関係しています。

(その36)参照。http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu2/12499_s8.htm

 以下ではLN(2)を代表選手として考察していきます。(LN(4)、LN(6)、・・でもまったく同じ議論が成立するのでそれらは略します)

 さて、LN(2)分割を行う前に、すこし前準備をしましょう(LA(s)でやったのと同類の準備)。

LN(2)=1 -1/2^2 -1/3^2 +1/4^2 +1/6^2 -1/7^2 -1/8^2 +1/9^2 +1/11^2 -1/12^2 -1/13^2 +1/14^2 ・・

=1 -1/3^2 -1/7^2 +1/9^2 +1/11^2 -1/13^2 -1/17^2 +1/19^2 +・・

  +(-1/2^2 +1/4^2 +1/6^2 -1/8^2 -1/12^2+1/14^2 +1/16^2 -1/18^2 -1/22^2 +1/24^2 +・・)

=1 -1/3^2 -1/7^2 +1/9^2 +1/11^2 -1/13^2 -1/17^2 +1/19^2 +・・

  -1/2^2(1 -1/2^2 -1/3^2 +1/4^2 +1/6^2 -1/7^2 -1/8^2 +1/9^2 +1/11^2 -1/12^2 -・・)

=1 -1/3^2 -1/7^2 +1/9^2 +1/11^2 -1/13^2 -1/17^2 +1/19^2 +・・

  -1/2^2・LN(2)

 ここで、Ln(2)=1 -1/3^2 -1/7^2 +1/9^2 +1/11^2 -1/13^2 -1/17^2 +1/19^2 +・・ とおくと、上式は次のようになる。

 Ln(2)=(1 +1/2^2)LN(2) --------A

 これより、Ln(2)はLN(2)と本質的に同じとわかります。すなわち、Ln(s)はLN(s)と本質的に同じです。以下でLn(2)が出てきます。

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 では、以下にLN(2)またはLn(2)の2分割、4分割、6分割を示します。”⇒無視”は分割に関係しないものであり無視します。

■LN(2)2分割

 A1=1 +1/4^2 +1/6^2 +1/9^2 +1/11^2 +1/14^2 +・・=(π/5)^2 /{cos(3π/10)}^2

 A2=1/2^2 +1/3^2 +1/7^2 +1/8^2 +1/12^2 +1/13^2 +・・=(π/5)^2 /{cos(π/10)}^2

  A1 -A2=LN(2)であることがわかります。念のため、上記式に対しExcelマクロで数値検証を実行しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。

■Ln(2)4分割

 A1=1 +1/19^2 +1/21^2 +1/39^2 +1/41^2 +1/59^2 +・・=(π/20)^2 /{cos(9π/20)}^2

 A2=1/3^2 +1/17^2 +1/23^2 +1/37^2 +1/43^2 +1/57^2 +・・=(π/20)^2 /{cos(7π/20)}^2

 A3=1/5^2 +1/15^2 +1/25^2 +1/35^2 +1/45^2 +1/55^2 +・・=(π/20)^2 /{cos(5π/20)}^2 ⇒無視

 A4=1/7^2 +1/13^2 +1/27^2 +1/33^2 +1/47^2 +1/53^2 +・・=(π/20)^2 /{cos(3π/20)}^2

 A5=1/9^2 +1/11^2 +1/29^2 +1/31^2 +1/49^2 +1/51^2 +・・=(π/20)^2 /{cos(π/20)}^2

  A1 -A2 -A4 +A5=Ln(2)であることがわかります。上記式に対しExcelマクロで数値検証を実行しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。

■LN(2)6分割

 A1=1/1^2 +1/14^2 +1/16^2 +1/29^2 +1/31^2 +1/44^2 +・・=(π/15)^2 /{cos(13π/30)}^2

 A2=1/2^2 +1/13^2 +1/17^2 +1/28^2 +1/32^2 +1/43^2 +・・=(π/15)^2 /{cos(11π/30)}^2

 A3=1/3^2 +1/12^2 +1/18^2 +1/27^2 +1/33^2 +1/42^2 +・・=(π/15)^2 /{cos(9π/30)}^2

 A4=1/4^2 +1/11^2 +1/19^2 +1/26^2 +1/34^2 +1/41^2 +・・=(π/15)^2 /{cos(7π/30)}^2

 A5=1/5^2 +1/10^2 +1/20^2 +1/25^2 +1/35^2 +1/40^2 +・・=(π/15)^2 /{cos(5π/30)}^2 ⇒無視

 A6=1/6^2 +1/9^2 +1/21^2 +1/24^2 +1/36^2 +1/39^2 +・・ =(π/15)^2 /{cos(3π/30)}^2

 A7=1/7^2 +1/8^2 +1/22^2 +1/23^2 +1/37^2 +1/38^2 +・・ =(π/15)^2 /{cos(π/30)}^2

  A1 -A2 -A3 +A4 +A6 -A7=LN(2)であることがわかります。上記式に対しExcelマクロで数値検証を実行しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。

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 上の分割級数の導出過程を簡単に述べます。三角関数タンジェントの部分分数展開式をG[1](x)と表現すると、次のようになります。

 G[1](x)=1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・=(π/(4x))tan(πx/2)

 LN(2)では、これを1回微分して得られる次の生成核G[2](x)を使います。

 G[2](x)=1/(1^2-x^2)^2 +1/(3^2-x^2)^2 +1/(5^2-x^2)^2 +・・=(π/(4x))^2/{cos(πx/2)}^2 + Others(x)

 ここで右辺のOthers(x)は、じつはOthers(x)=-{π/(8x^3)}tan(πx/2)ですが、今回は無視してよい個所なのでOthers(x)としました。

 G[2](x)のxに特定の値を代入することで、LN(2)の分割級数が次々に求まっていきます。以下の通りです。

 G[2](x)のxに値3/5を代入すると、LN(2)2分割のA1が得られる。

 G[2](x)のxに値1/5を代入すると、LN(2)2分割のA2が得られる。

 G[2](x)のxに値9/10を代入すると、Ln(2)4分割のA1が得られる。

 G[2](x)のxに値7/10を代入すると、Ln(2)4分割のA2が得られる。

 G[2](x)のxに値5/10を代入すると、Ln(2)4分割のA3が得られる。⇒無視。5/10代入は1/2代入であり、これはζ(2)となる。

 G[2](x)のxに値3/10を代入すると、Ln(2)4分割のA4が得られる。

 G[2](x)のxに値1/10を代入すると、Ln(2)4分割のA5が得られる。

 G[2](x)のxに値13/15を代入すると、LN(2)6分割のA1が得られる。

 G[2](x)のxに値11/15を代入すると、LN(2)6分割のA2が得られる。

 G[2](x)のxに値 9/15を代入すると、LN(2)6分割のA3が得られる。

 G[2](x)のxに値 7/15を代入すると、LN(2)6分割のA4が得られる。

 G[2](x)のxに値 5/15を代入すると、LN(2)6分割のA5が得られる。⇒無視。5/15代入は1/3代入であり、これはLA(s)類似物といえるが、対応ゼータ無し。

 G[2](x)のxに値 3/15を代入すると、LN(2)6分割のA6が得られる。

 G[2](x)のxに値 1/15を代入すると、LN(2)6分割のA7が得られる。

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 このようにLN(s)でも規則的に分身たちが生成され、真の分割が実現されていきます。無視したものの残りで分割が実現されていることに着目ください。

 代入する値が分母、分子で約分される場合が無視するものの候補になります。

 「この分割ではどうして○/5代入から始まるのか?」と思われるかもしれませんが、答えは「それはLN(s)の導手Nが5だから」です。代入する値は、まず導手をヒントに探せばよいのです。

 生成核G[2](x)の世界ではいきなり2分割からはじまりました。そして2分割からはじまったために2分割、4分割、6分割・・と2n分割となったわけですが、1分割からはじまる生成核は存在しないのでしょうか。そして、もしその生成核があればn分割可能となるのでしょうか。

 ζ(s)、L(s)、LA(s)ではn分割ができたのに、LN(s)は2n分割が最良なのでしょうか。

 こんな疑問が出ますが、現時点ではまったくわかりません。直観的にn分割は無理なような気がします。とりあえずは生成核G[2](x)でやっていきます。

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