■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その37,杉岡幹生)
虚2次体Q(√-3)ゼータLA(s)に関し、(その33)と(その35)で1〜8分割を示しましたので、今回は9分割と10分割を報告します。
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もう一度復習しますと、LA(s)ゼータはL関数L(χ,s)の一種で、次のディリクレ指標をもつ虚2次体Q(√-3)ゼータです。
LA(s)=1 -1/2^s +1/4^s -1/5^s +1/7^s -1/8^s +1/10^s -1/11^s +1/13^s -1/14^s +1/16^s -1/17^s +1/19^s -1/20^s +1/22^s -・・
(導手N=3, n≡0, 1, 2 mod 3に対し、それぞれχ(n)=0, 1, -1)
LA(2n-1)のうち(nは1以上の整数)、次のLA(1)を代表選手として考察します。
LA(1)=1 -1/2 +1/4 -1/5 +1/7 -1/8 +1/10 -1/11 +1/13 -1/14 +1/16 -1/17 +1/19 -1/20 +1/22 -・・=π/(3√3) ------@
ここで
La(1)=1 -1/5 + 1/7 -1/11 +1/13 -1/17 +1/19 -1/23 +1/25 -1/29 +1/31 -1/35 +・・ とおくと
La(1)=3/2LA(1) ------A
となります(導出過程は(その33)参照)。よって、La(1)はLA(1)と本質的に同じゼータとなります。
また@、Aより
La(1)=π/(2√3) -----B
ではLA(1)またはLa(1)の9分割、10分割を示します。分割に関係のないものは”⇒無視”としました。
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■LA(1)9分割
B1= 1 -1/26 +1/28 -1/53 +1/55 -1/80 + ・・ =(π/27)tan(25π/54)
B2= 1/2 -1/25 +1/29 -1/52 +1/56 -1/79 + ・・ =(π/27)tan(23π/54)
B3= 1/3 -1/24 +1/30 -1/51 +1/57 -1/78 + ・・ =(π/27)tan(21π/54) ⇒無視
B4= 1/4 -1/23 +1/31 -1/50 +1/58 -1/77 + ・・ =(π/27)tan(19π/54)
B5= 1/5 -1/22 +1/32 -1/49 +1/59 -1/76 + ・・ =(π/27)tan(17π/54)
B6= 1/6 -1/21 +1/33 -1/48 +1/60 -1/75 + ・・ =(π/27)tan(15π/54) ⇒無視
B7= 1/7 -1/20 +1/34 -1/47 +1/61 -1/74 + ・・ =(π/27)tan(13π/54)
B8= 1/8 -1/19 +1/35 -1/46 +1/62 -1/73 + ・・ =(π/27)tan(11π/54)
B9= 1/9 -1/18 +1/36 -1/45 +1/63 -1/72 + ・・ =(π/27)tan(9π/54) ⇒無視
B10=1/10 -1/17 +1/37 -1/44 +1/64 -1/71 + ・・ =(π/27)tan(7π/54)
B11=1/11 -1/16 +1/38 -1/43 +1/65 -1/70 + ・・ =(π/27)tan(5π/54)
B12=1/12 -1/15 +1/39 -1/42 +1/66 -1/69 + ・・ =(π/27)tan(3π/54) ⇒無視
B13=1/13 -1/14 +1/40 -1/41 +1/67 -1/68 + ・・ =(π/27)tan(π/54)
B1 -B2 +B4 -B5 +B7 -B8 +B10 -B11 +B13=LA(1) であることを確認ください。B3, B6, B9, B12は無視します。Excelマクロで数値検証しましたが、左辺の級数は全て右辺値に一致しました。右辺値の” B1 -B2 +B4 -B5 +B7 -B8 +B10 -B11 +B13”も@右辺値に一致しました。
■La(1)10分割
B1= 1 -1/59 +1/61 -1/119 +1/121 -1/179 + ・・ =(π/60)tan(29π/60)
B2= 1/3 -1/57 +1/63 -1/117 +1/123 -1/177 + ・・ =(π/60)tan(27π/60) ⇒無視
B3= 1/5 -1/55 +1/65 -1/115 +1/125 -1/175 + ・・ =(π/60)tan(25π/60)
B4= 1/7 -1/53 +1/67 -1/113 +1/127 -1/173 + ・・ =(π/60)tan(23π/60)
B5= 1/9 -1/51 +1/69 -1/111 +1/129 -1/171 + ・・ =(π/60)tan(21π/60) ⇒無視
B6= 1/11 -1/49 +1/71 -1/109 +1/131 -1/169 + ・・ =(π/60)tan(19π/60)
B7= 1/13 -1/47 +1/73 -1/107 +1/133 -1/167 + ・・ =(π/60)tan(17π/60)
B8= 1/15 -1/45 +1/75 -1/105 +1/135 -1/165 + ・・ =(π/60)tan(15π/60) ⇒無視
B9= 1/17 -1/43 +1/77 -1/103 +1/137 -1/163 + ・・ =(π/60)tan(13π/60)
B10=1/19 -1/41 +1/79 -1/101 +1/139 -1/161 + ・・ =(π/60)tan(11π/60)
B11=1/21 -1/39 +1/81 -1/99 +1/141 -1/159 + ・・ =(π/60)tan(9π/60) ⇒無視
B12=1/23 -1/37 +1/83 -1/97 +1/143 -1/157 + ・・ =(π/60)tan(7π/60)
B13=1/25 -1/35 +1/85 -1/95 +1/145 -1/155 + ・・ =(π/60)tan(5π/60)
B14=1/27 -1/33 +1/87 -1/93 +1/147 -1/153 + ・・ =(π/60)tan(3π/60) ⇒無視
B15=1/29 -1/31 +1/89 -1/91 +1/149 -1/151 + ・・ =(π/60)tan(π/60)
B1 -B3 +B4 -B6 +B7 -B9 +B10 -B12 +B13 -B15=La(1) であることを確認ください。B2, B5, B8, B11,B14は無視します。Excelマクロで数値検証しましたが、左辺の級数は全て右辺値に一致しました。右辺値の”B1 -B3 +B4 -B6 +B7 -B9 +B10 -B12 +B13 -B15”もB右辺値に一致しました。
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上の分割式の導出過程を簡単に述べます。次の部分分数展開式を使います。
G[1](x)=1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2)
このxに次の値を代入することで、分割された級数とその値が求まります。
G[1](x)のxに25/27を代入すると、LA(1)9分割のB1が得られる。
G[1](x)のxに23/27を代入すると、LA(1)9分割のB2が得られる。
G[1](x)のxに21/27を代入すると、LA(1)9分割のB3が得られる。 ⇒無視 21/27代入は7/9代入。
G[1](x)のxに19/27を代入すると、LA(1)9分割のB4が得られる。
G[1](x)のxに17/27を代入すると、LA(1)9分割のB5が得られる。
G[1](x)のxに15/27を代入すると、LA(1)9分割のB6が得られる。 ⇒無視 15/27代入は5/9代入。
G[1](x)のxに13/27を代入すると、LA(1)9分割のB7が得られる。
G[1](x)のxに11/27を代入すると、LA(1)9分割のB8が得られる。
G[1](x)のxに 9/27を代入すると、LA(1)9分割のB9が得られる。 ⇒無視 9/27代入は3/9代入、すなわち1/3代入。
G[1](x)のxに 7/27を代入すると、LA(1)9分割のB10が得られる。
G[1](x)のxに 5/27を代入すると、LA(1)9分割のB11が得られる。
G[1](x)のxに 3/27を代入すると、LA(1)9分割のB12が得られる。⇒無視 3/27代入は1/9代入。
G[1](x)のxに 1/27を代入すると、LA(1)9分割のB13が得られる。
G[1](x)のxに29/30を代入すると、LA(1)10分割のB1が得られる。
G[1](x)のxに27/30を代入すると、LA(1)10分割のB2が得られる。⇒無視 27/30代入は9/10代入。
G[1](x)のxに25/30を代入すると、LA(1)10分割のB3が得られる。
G[1](x)のxに23/30を代入すると、LA(1)10分割のB4が得られる。
G[1](x)のxに21/30を代入すると、LA(1)10分割のB5が得られる。⇒無視 21/30代入は7/10代入。
G[1](x)のxに19/30を代入すると、LA(1)10分割のB6が得られる。
G[1](x)のxに17/30を代入すると、LA(1)10分割のB7が得られる。
G[1](x)のxに15/30を代入すると、LA(1)10分割のB8が得られる。⇒無視 15/30代入は5/10代入、すなわち1/2代入。
G[1](x)のxに13/30を代入すると、LA(1)10分割のB9が得られる。
G[1](x)のxに11/30を代入すると、LA(1)10分割のB10が得られる。
G[1](x)のxに 9/30を代入すると、LA(1)10分割のB11が得られる。⇒無視 9/30代入は3/10代入。
G[1](x)のxに 7/30を代入すると、LA(1)10分割のB12が得られる。
G[1](x)のxに 5/30を代入すると、LA(1)10分割のB13が得られる。
G[1](x)のxに 3/30を代入すると、LA(1)10分割のB14が得られる。⇒無視 3/30代入は1/10代入。
G[1](x)のxに 1/30を代入すると、LA(1)10分割のB15が得られる。
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このようにLA(1)の9分割、10分割が得られました。きれいに規則的に得られていく様を味わってください。
(その33),(その35)と同様、ここでも無視するものが出てきました。代入するxの値の分母、分子で約分できるものが無視されています。10分割で無視した5つは、”L(1)の”5分割となっています。すなわち(その28)と同じです。また9分割では、無視した4つのうち3つはLA(1)3分割であり、残りの一つはLA(1)1分割となっています。なにやら法則が出てきそうな雰囲気があります。
(その33)から今回まででLA(1)は1〜10分割可能とわかりました。無視するものが出たり、またディリクレ指標がL(s)やζ(s)のように単純ではないので証明はできませんが、LA(s)もn分割可能であることは間違いないと思います(nは1以上の整数)。
L(s)やリーマンゼータζ(s)では、分割したパーツ(級数)を全部使って真の分割が実現されていました。それ以外のL(χ,s)では、何個かのパーツを無視して真の分割が実現されていくようです。
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これまで見てきたゼータの分割をまとめます。
ζ(s) 仮想?実2次体Q(√1)ゼータ、導手N=1 ⇒ n分割可能。
L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4 ⇒ n分割可能。
LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3 ⇒ 1〜10分割は可能とわかった。n分割可能と考えられる(予想)。 注記:nは1以上の整数
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LA(s)は今回で終了します。上記は導手Nが小さいゼータばかりです。導手の小さいゼータの分割では、割合歩きやすい道が多かったのですが、N=5以上の導手をもつゼータの領域では険しい道が多いような予感があります。 以上。(杉岡幹生)
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