■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その30,杉岡幹生)
L(s)の”奇数分割”2n-1分割のn=4,5の場合、すなわち7分割、9分割の事例を示します。L(1)を代表選手として見ていきます。
L(1)=1 -1/3 +1/5 -1/7 +1/9 -1/11 +1/13 -15 + ・・=π/4
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■L(1)7分割
A1= 1 -1/27 +1/29 -1/55 +1/57 -1/83 +・・ =(π/28)tan(13π/28)
A2=1/3 -1/25 +1/31 -1/53 +1/59 -1/81 +・・=(π/28)tan(11π/28)
A3=1/5 -1/23 +1/33 -1/51 +1/61 -1/79 +・・=(π/28)tan(9π/28)
A4=1/7 -1/21 +1/35 -1/49 +1/63 -1/77 +・・=(π/28)tan(7π/28)
A5=1/9 -1/19 +1/37 -1/47 +1/65 -1/75 +・・=(π/28)tan(5π/28)
A6=1/11 -1/17 +1/39 -1/45 +1/67 -1/73 +・・=(π/28)tan(3π/28)
A7=1/13 -1/15 +1/41 -1/43 +1/69 -1/71 +・・=(π/28)tan(π/28)
A1 -A2 +A3- A4 +A5 -A6 +A7=L(1) となっていることを確認ください。数値検証も行いました。左辺の級数が右辺値に一致し、右辺値の”A1 -A2 +A3- A4 +A5 -A6 +A7”がπ/4 になることを確認しました。
■L(1)9分割
A1= 1 -1/35 +1/37 -1/71 +1/73 -1/107 +・・ =(π/36)tan(17π/36)
A2=1/3 -1/33 +1/39 -1/69 +1/75 -1/105 +・・=(π/36)tan(15π/36)
A3=1/5 -1/31 +1/41 -1/67 +1/77 -1/103 +・・=(π/36)tan(13π/36)
A4=1/7 -1/29 +1/43 -1/65 +1/79 -1/101 +・・=(π/36)tan(11π/36)
A5=1/9 -1/27 +1/45 -1/63 +1/81 -1/99 +・・ =(π/36)tan(9π/36)
A6=1/11 -1/25 +1/47 -1/61 +1/83 -1/97 +・・=(π/36)tan(7π/36)
A7=1/13 -1/23 +1/49 -1/59 +1/85 -1/95 +・・=(π/36)tan(5π/36)
A8=1/15 -1/21 +1/51 -1/57 +1/87 -1/93 +・・=(π/36)tan(3π/36)
A9=1/17 -1/19 +1/53 -1/55 +1/89 -1/91 +・・=(π/36)tan(π/36)
A1 -A2 +A3- A4 +A5 -A6 +A7 -A8 +A9=L(1) となっていることを確認ください。数値検証も行いました。左辺の級数が右辺値に一致し、右辺値の”A1 -A2 +A3- A4 +A5 -A6 +A7 -A8 +A9”がπ/4 になることを確認しました。
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上の分割式の導出過程を簡単に述べます。次の部分分数展開式@を使います。
1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2) ---@
このxに次の値を代入することで、分割された級数とその値が求まります。
@のxに13/14を代入すると、L(1)7分割のA1が得られる。
@のxに11/14を代入すると、L(1)7分割のA2が得られる。
@のxに9/14を代入すると、L(1)7分割のA3が得られる。
@のxに7/14を代入すると、L(1)7分割のA4が得られる。⇒L(1)1分割が出現!(7/14代入は1/2代入だから)
@のxに5/14を代入すると、L(1)7分割のA5が得られる。
@のxに3/14を代入すると、L(1)7分割のA6が得られる。
@のxに1/14を代入すると、L(1)7分割のA7が得られる。
@のxに17/18を代入すると、L(1)9分割のA1が得られる。
@のxに15/18を代入すると、L(1)9分割のA2が得られる。 ⇒L(1)3分割が出現!(15/18代入は5/6代入だから)
@のxに13/18を代入すると、L(1)9分割のA3が得られる。
@のxに11/18を代入すると、L(1)9分割のA4が得られる。
@のxに9/18を代入すると、L(1)9分割のA5が得られる。⇒L(1)1分割が出現!(9/18代入は1/2代入だから)
@のxに7/18を代入すると、L(1)9分割のA6が得られる。
@のxに5/18を代入すると、L(1)9分割のA7が得られる。
@のxに3/18を代入すると、L(1)9分割のA8が得られる。 ⇒L(1)3分割が出現!(3/18代入は1/6代入だから)
@のxに1/18を代入すると、L(1)9分割のA9が得られる。
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このようにL(1)の7分割、9分割が求まりました。
今回も(その22)の2n分割で見た『2n分割においてそれが2^n分割でない場合は、その当該分割以外の分割の結果も含まれる』と類似の現象が出ています。
上記の7分割のA4で、次のように書きました。
”@のxに7/14を代入すると、L(1)7分割のA4が得られる。→L(1)1分割が出現!(7/14代入は1/2代入だから)”
これは、L(1)7分割のA4の左辺を変形し、右辺tanの()内を約分すると次のようになるということです。
A4=(1/7)(1 -1/3 +1/5 -1/7 +1/9 -1/11 +・・) =(1/7){(π/4)tan(π/4)}
これはL(1)そのもの(1分割)になっているというわけです!
9分割でも上記の→の所で三つ同類の現象が出ています。
このようにきれいな規則にしたがってL(1)の分身たちが生み出されていく様子がわかると思います。基本規則は次の通りです。まず1/2代入でL(1)1分割が出ることに着目。「7分割を出したい!」場合は2×7に着目して、x=○/14を@に代入すればよい。
これまで見てきたようにL(s)は、2n分割のみならず、2n-1分割も可能です。それは、計算過程でL(s)の分身たちのディリクレ指標が”任意のn分割で”保存されることからわかります。(注記:A1 -A2 +A3- A4 +A5 -A6 +A7=L(1) のように、分身たちに”-1”を掛けるという調整は行います)
L(s)の事例は十分に見たので、L(s)の”明示的な”特殊値の分割に関してはこの辺で終了とします。
これまでの考察から、『L(1),L(3),L(5)・・はn分割可能である(nは1以上の整数)』という驚くべきことがわかったことになります。 (杉岡幹生)
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