■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その29,杉岡幹生)

 下記URLの「その7」でLA(s)ゼータのLA(1)の2分割に失敗していましたが、分割できたので報告します。また3分割、4分割、5分割もできたので同時にお知らせします。

http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu2/11911_lx.htm

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 復習になりますが、LA(s)ゼータはL関数L(χ,s)の一種で、次のディリクレ指標をもつ虚2次体Q(√-3)ゼータです。

 LA(s)=1 -1/2^s +1/4^s -1/5^s +1/7^s -1/8^s +1/10^s -1/11^s +1/13^s -1/14^s +1/16^s -1/17^s +1/19^s -1/20^s +1/22^s -・・

(Q(√-3)ゼータ、導手N=3, n≡0, 1, 2 mod 3に対し、それぞれχ(n)=0, 1, -1)

 明示的に求まる特殊値LA(1),LA(3),LA(5)・・のうち、次のLA(1)を代表選手として考察します。

 LA(1)=1 -1/2 +1/4 -1/5 +1/7 -1/8 +1/10 -1/11 +1/13 -1/14 +1/16 -1/17 +1/19 -1/20 +1/22 -・・=π/(3√3) ----@

 LA(1)の値は右辺の通りですが、これは虚2次体の類数公式というものから求まります。下記の通り”1分割”の方法からも簡単に求まります。

はじめに少し準備します。「その7」で示した通り、次のように変形できます。

 LA(1)=1 -1/2 +1/4 -1/5 +1/7 -1/8 +1/10 -1/11 +1/13 -1/14 +1/16 -1/17 +1/19 -1/20 +1/22 -1/23 +1/25 -1/26 + ・・・

  =(1 -1/5 + 1/7 -1/11 +1/13 -1/17 +1/19 -1/23 +1/25 -・・)+ (-1/2 +1/4 -1/8 +1/10 -1/14 +1/16 -1/20 +1/22 -1/26 +・・)

  =(1 -1/5 + 1/7 -1/11 +1/13 -1/17 +1/19 -1/23 +1/25 -・・) - 1/2(1 -1/2 +1/4 -1/5 +1/7 -1/8 +1/10 -1/11 +1/13 -・・)

  =(1 -1/5 + 1/7 -1/11 +1/13 -1/17 +1/19 -1/23 +1/25 -・・) -1/2LA(1)

右辺の2項目を左辺に移項して、

  1 -1/5 + 1/7 -1/11 +1/13 -1/17 +1/19 -1/23 +1/25 -1/29 +1/31 -1/35 +・・ =3/2LA(1)

 となります。

 ここで、1 -1/5 + 1/7 -1/11 +1/13 -1/17 +1/19 -1/23 +1/25 -1/29 +1/31 -1/35 +・・=La(1)

とおくと、

  La(1)=3/2LA(1)  -----A

となります。La(1)はLA(1)と本質的に同じゼータというわけです。以下でLa(1)が出てきます。

また@、Aより、

  La(1)=π/(2√3)-----B

です。

 なお、LA()やLa()という記号は私が便宜的に用いているものです。一般的なものではないので注意してください。

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 では、LA(1)もしくはLa(1)の分割を示していきます。L(s)やζ(s)の場合と同様に1分割も含めました。

■LA(1)1分割

 A1=1 -1/2 +1/4 -1/5 +1/7 -1/8 +1/10 -1/11 +1/13 -1/14 +1/16 -1/17 +1/19 -1/20 +1/22 -・・=(π/3)tan(π/6)

 あえてtan()の形を残しました。tan(π/6)=1/√3であり、右辺は@右辺に一致します。

■La(1)2分割

A1= 1 -1/11 +1/13 -1/23 +1/25 -1/35 +・・ =(π/12)tan(5π/12)

A2=1/5 -1/7 +1/17 -1/19 +1/29 -1/31 +・・=(π/12)tan(π/12)

 A1 -A2=La(1) であることを確認ください。上記式に対しExcelマクロで数値検証しましたが、左辺の級数は右辺値に一致しました。

 右辺値の”A1 -A2”もB右辺値に一致しました。

■LA(1)3分割

A1= 1 -1/8 +1/10 -1/17 +1/19 -1/26 +・・ =(π/9)tan(7π/18)

A2=1/2 -1/7 +1/11 -1/16 +1/20 -1/25 +・・=(π/9)tan(5π/18)

A3=1/4 -1/5 +1/13 -1/14 +1/22 -1/23 +・・=(π/9)tan(π/18)

 A1 -A2 +A3=LA(1) であることを確認ください。上記式に対しExcelマクロで数値検証しましたが、左辺の級数は右辺値に一致しました。

 右辺値の”A1 -A2 +A3”も@右辺値に一致しました。

■La(1)4分割

A1= 1 -1/23 +1/25 -1/47 +1/49 -1/71 +・・ =(π/24)tan(11π/24)

A2=1/5 -1/19 +1/29 -1/43 +1/53 -1/67 +・・=(π/24)tan(7π/24)

A3=1/7 -1/17 +1/31 -1/41 +1/55 -1/65 +・・=(π/24)tan(5π/24)

A4=1/11 -1/13 +1/35 -1/37 +1/59 -1/61 +・・=(π/24)tan(π/24)

 A1 -A2 +A3 -A4=La(1) であることを確認ください。上記式に対しExcelマクロで数値検証しましたが、左辺の級数は右辺値に一致しました。

 右辺値の”A1 -A2 +A3 -A4”もB右辺値に一致しました。

■LA(1)5分割

A1= 1 -1/14 +1/16 -1/29 +1/31 -1/44 +・・ =(π/15)tan(13π/30)

A2=1/2 -1/13 +1/17 -1/28 +1/32 -1/43 +・・=(π/15)tan(11π/30)

A3=1/4 -1/11 +1/19 -1/26 +1/34 -1/41 +・・=(π/15)tan(7π/30)

A4=1/5 -1/10 +1/20 -1/25 +1/35 -1/40 +・・=(π/15)tan(5π/30)

A5=1/7 -1/8 +1/22 -1/23 +1/37 -1/38 +・・ =(π/15)tan(π/30)

 A1 -A2 +A3 -A4 +A5=LA(1) であることを確認ください。上記式に対しExcelマクロで数値検証しましたが、左辺の級数は右辺値に一致しました。

 右辺値の”A1 -A2 +A3 -A4 +A5”も@右辺値に一致しました。

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 上の分割式の導出過程を簡単に述べます。次の部分分数展開式Cを使います。

 1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2) ---C

 このxに次の値を代入することで、分割された級数とその値が求まります。

 Cのxに1/3を代入すると、LA(1)の1分割が得られる。(Cのxに2/3を代入すると、La(1)の1分割が得られる)

 Cのxに5/6を代入すると、La(1)2分割のA1が得られる。

 Cのxに1/6を代入すると、La(1)2分割のA2が得られる。

 注記:3/6(つまり1/2)を代入すると、L(1)そのもの(1分割)が得られる!

 Cのxに7/9を代入すると、LA(1)3分割のA1が得られる。

 Cのxに5/9を代入すると、LA(1)3分割のA2が得られる。

 Cのxに1/9を代入すると、LA(1)3分割のA3が得られる。

 注記:3/9を代入すると、LA(1)そのもの(1分割)が得られる!

 Cのxに11/12を代入すると、La(1)4分割のA1が得られる。

 Cのxに7/12を代入すると、La(1)4分割のA2が得られる。

 Cのxに5/12を代入すると、La(1)4分割のA3が得られる。

 Cのxに1/12を代入すると、La(1)4分割のA4が得られる。

注記:9/12,3/12つまり3/4,1/4を代入すると、L(1)2分割が出る!⇒「その14」

http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu2/12043_z2.htm

 Cのxに13/15を代入すると、LA(1)5分割のA1が得られる。

 Cのxに11/15を代入すると、LA(1)5分割のA2が得られる。

 Cのxに7/15を代入すると、LA(1)5分割のA3が得られる。

 Cのxに5/15を代入すると、LA(1)5分割のA4が得られる。⇒これはLA(1)そのもの(1分割)! 上のA4を見られたし。

 Cのxに1/15を代入すると、LA(1)5分割のA5が得られる。

注記:Cのxに9/15(つまり3/5)や3/15(つまり1/15)を代入すると他種類のゼータが出る。考察中。

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 このようにしてLA(1)の分割ができました。

 きれいな規則にしたがってLA(1)の分身たちが生み出されています。基本規則は次の通りです。

 まず1/3代入で1分割が出ることに着目。「5分割を出したい!」場合は、3×5に着目して、x=○/15をCに代入すればよいのです。

 いま気づきましたが、偶数分割ではLa(1)分割が、奇数分割ではLA(1)分割が出るようです(本質的には同じですが)。また奇数分割と偶数分割では、右辺値の形が違っています。面白いことです。

 ゼータ世界は美しい秩序で成り立っています。「その10」でQ(√-5)ゼータの4分割を見ましたが、今回のものやL(s)、ζ(s)の分割を見てきて、ディリクレのL関数L(χ,s)の全部でn分割が可能(nは1以上の整数)となっている考えられます。一般的な証明は私には無理ですが、具体例を積み上げていき、確信の度合いを高めたいと考えます。L(χ,s)には無数の2次体ゼータがあります。以上。  (杉岡幹生)

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