■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その22,杉岡幹生)
L(s)が2n分割可能とわかったことから前回はL(1)の6分割、10分割例を見ましたが、今回は12分割例を報告します。最後にゼータ分割における予想や問題を思いつくままあげました。
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次のL(1)を例にとり、2n分割のn=6の場合すなわち12分割を示します。
L(1)=1 -1/3 +1/5 -1/7 +1/9 -1/11 +1/13 -15 + ・・=π/4
■L(1)12分割
A1= 1 -1/47 +1/49 -1/95 +1/97 -1/143 +・・ =(π/48)tan(23π/48)
A2=1/3 -1/45 +1/51 -1/93 +1/99 -1/141 +・・=(π/48)tan(21π/48)
A3=1/5 -1/43 +1/53 -1/91 +1/101 -1/139 +・・=(π/48)tan(19π/48)
A4=1/7 -1/41 +1/55 -1/89 +1/103 -1/137 +・・ =(π/48)tan(17π/48)
A5=1/9 -1/39 +1/57 -1/87 +1/105 -1/135 +・・ =(π/48)tan(15π/48)
A6=1/11 -1/37 +1/59 -1/85 +1/107 -1/133 +・・ =(π/48)tan(13π/48)
A7=1/13 -1/35 +1/61 -1/83 +1/109 -1/131 +・・ =(π/48)tan(11π/48)
A8=1/15 -1/33 +1/63 -1/81 +1/111 -1/129 +・・ =(π/48)tan(9π/48)
A9=1/17 -1/31 +1/65 -1/79 +1/113 -1/127 +・・ =(π/48)tan(7π/48)
A10=1/19 -1/29 +1/67 -1/77 +1/115 -1/125 +・・ =(π/48)tan(5π/48)
A11=1/21 -1/27 +1/69 -1/75 +1/117 -1/123 +・・ =(π/48)tan(3π/48)
A12=1/23 -1/25 +1/71 -1/73 +1/119 -1/121 +・・ =(π/48)tan(π/48)
A1 -A2 +A3 -A4 +A5 -A6 +A7 -A8 +A9 -A10 +A11 -A12=L(1) であることを確認ください。上記全式に対し数値検証しましたが、全て左辺の級数は右辺値に一致しました。
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上の分割式の導出過程を簡単に述べます。次の@の部分分数展開式を使います。
1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2) ---@
このxに次の値を代入することで、分割された級数が求まります。
@のxに値23/24を代入すると、A1が得られる。
@のxに値21/24を代入すると、A2が得られる。
@のxに値19/24を代入すると、A3が得られる。
@のxに値17/24を代入すると、A4が得られる。
@のxに値15/24を代入すると、A5が得られる。
@のxに値13/24を代入すると、A6が得られる。
@のxに値11/24を代入すると、A7が得られる。
@のxに値 9/24を代入すると、A8が得られる。
@のxに値 7/24を代入すると、A9が得られる。
@のxに値 5/24を代入すると、A10が得られる。
@のxに値 3/24を代入すると、A11が得られる。
@のxに値 1/24を代入すると、A12が得られる。
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このようにL(1)の12分割が求まりました。
さて、前回の最後に指摘した2n分割における興味ある特徴をすこし見てみることにします。
それは『2n分割においてそれが2^n分割でない場合は、その当該分割以外の分割の結果も含まれる。』に関するものですが、12分割ではどうなっているか、早速見てみましょう。
A2,A5,A8,A11は上記から次の通りです。
A2=1/3 -1/45 +1/51 -1/93 +1/99 -1/141 +・・=(π/48)tan(21π/48)
A5=1/9 -1/39 +1/57 -1/87 +1/105 -1/135 +・・ =(π/48)tan(15π/48)
A8=1/15 -1/33 +1/63 -1/81 +1/111 -1/129 +・・ =(π/48)tan(9π/48)
A11=1/21 -1/27 +1/69 -1/75 +1/117 -1/123 +・・ =(π/48)tan(3π/48)
右辺tanの()内が約分できることに注目してください。
tan(21π/48) はtan(7π/16) であり、tan(15π/48) はtan(5π/16) です。またtan(9π/48) はtan(3π/16) であり、tan(3/π48) はtan(π/16) です。
さらに、左辺は次のように変形できます。
A2=1/3 -1/45 +1/51 -1/93 +1/99 -1/141 +・・=1/3(1 -1/15 +1/17 -1/31 +1/33 -1/47 +・・)
A5=1/9 -1/39 +1/57 -1/87 +1/105 -1/135 +・・ =1/3(1/3 -1/13 +1/19 -1/29 +1/35 -1/45 +・・ )
A8=1/15 -1/33 +1/63 -1/81 +1/111 -1/129 +・・ =1/3(1/5 -1/11 +1/21 -1/27 +1/37 -1/43 +・・ )
A11=1/21 -1/27 +1/69 -1/75 +1/117 -1/123 +・・ =1/3(1/7 -1/9 +1/23 -1/25 +1/39 -1/41 +・・ )
これらは4分割の結果とまったく同じであることに気づきます。すなわち、A2 -A5 +A8 -A11=L(1)となっているのです! なお4分割の場合に関しては(その14)を参照ください。
前回見た6分割や10分割では、2分割の結果が含まれる形になり、それを合わせて真の分割が実現されていました。今回の12分割では、4分割の結果が含まれる形になり、それを合わせて真の分割が実現されているのです。面白いですね。
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