■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その21,杉岡幹生)
ゼータの分割に関して進展があったので報告します。これまでL(s)ゼータでは「少なくとも2^n分割可能である」ことがわかっていましたが、研究の結果、「少なくとも2n分割可能である」ことがわかりました。
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2^n分割可能というのと、2n分割可能というのでは大きな違いがあります。これらの分割でn=1,2,3,4,5・・と変化させると、それぞれ次のようになります。
・2^n分割 ⇒2分割、4分割、8分割、16分割、32分割、64分割・・・
・2n分割 ⇒2分割、4分割、6分割、8分割、10分割、12分割・・・
2^n分割より2n分割の方がはるかに分割のし方が多いことがわかります(2^n分割では濃度が薄いが、2n分割は濃度が濃いともいえる)。なぜL(s)が2n分割可能なのかといいますと、それは2n分割を行なっても、各分割級数のディリクレ指標の規則性が壊されずに保存されるためです。L(s)はディリクレ指標χ(n)をもったL関数L(χ,s)に属するゼータ関数です。L(s)は、おそらく2n分割が最良の分割となります。
L(1)でもL(3)でもL(5)でも分割の本質は同じなので、最も簡単な表記の次のL(1)を例にとり、6分割(2×3=6)、10分割(2×5=10)の結果を以下に示していきます。
L(1)=1 -1/3 +1/5 -1/7 +1/9 -1/11 +1/13 -15 + ・・=π/4
■L(1)6分割
A1= 1 -1/23 +1/25 -1/47 +1/49 -1/71 +・・ =(π/24)tan(11π/24)
A2=1/3 -1/21 +1/27 -1/45 +1/51 -1/69 +・・=(π/24)tan(9π/24)
A3=1/5 -1/19 +1/29 -1/43 +1/53 -1/67 +・・=(π/24)tan(7π/24)
A4=1/7 -1/17 +1/31 -1/41 +1/55 -1/65 +・・ =(π/24)tan(5π/24)
A5=1/9 -1/15 +1/33 -1/39 +1/57 -1/63 +・・ =(π/24)tan(3π/24)
A6=1/11 -1/13 +1/35 -1/37 +1/59 -1/61 +・・ =(π/24)tan(π/24)
A1 -A2 +A3 -A4 +A5 -A6=L(1) であることをご確認ください。上記6式に対しExcelマクロで数値検証しましたが、全て左辺の級数は右辺値に一致しました。
■L(1)10分割
B1= 1 -1/39 +1/41 -1/79 +1/81 -1/119 +・・ =(π/40)tan(19π/40)
B2=1/3 -1/37 +1/43 -1/77 +1/83 -1/117 +・・=(π/40)tan(17π/40)
B3=1/5 -1/35 +1/45 -1/75 +1/85 -1/115 +・・=(π/40)tan(15π/40)
B4=1/7 -1/33 +1/47 -1/73 +1/87 -1/113 +・・ =(π/40)tan(13π/40)
B5=1/9 -1/31 +1/49 -1/71 +1/89 -1/111 +・・ =(π/40)tan(11π/40)
B6=1/11 -1/29 +1/51 -1/69 +1/91 -1/109 +・・ =(π/40)tan(9π/40)
B7=1/13 -1/27 +1/53 -1/67 +1/93 -1/107 +・・ =(π/40)tan(7π/40)
B8=1/15 -1/25 +1/55 -1/65 +1/95 -1/105 +・・ =(π/40)tan(5π/40)
B9=1/17 -1/23 +1/57 -1/63 +1/97 -1/103 +・・ =(π/40)tan(3π/40)
B10=1/19 -1/21 +1/59 -1/61 +1/99 -1/101 +・・ =(π/40)tan(π/40)
B1 -B2 +B3 -B4 +B5 -B6 +B7 -B8 +B9 -B10=L(1) であることをご確認ください。上記10式に対し数値検証しましたが、全て左辺の級数は右辺値に一致しました。
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上の分割式の導出過程を簡単に述べます。次の@の部分分数展開式を使います。
1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2) ---@
このxに次の値を代入することで、分割された級数が求まります。
@のxに値11/12を代入すると、A1が得られる。
@のxに値 9/12を代入すると、A2が得られる。
@のxに値 7/12を代入すると、A3が得られる。
@のxに値 5/12を代入すると、A4が得られる。
@のxに値 3/12を代入すると、A5が得られる。
@のxに値 1/12を代入すると、A6が得られる。
同様にして、@のxに19/20,17/20,15/20,13/20,11/20,9/20,7/20,5/20,3/20,1/20の値を代入して、それぞれB1〜B10が得られる。
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このように、2分割/4分割/8分割で行なったのとまったく同様にして、L(1)の6分割、10分割が求まりました。
今回の6分割と10分割では、2^n分割に対応する2分割/4分割/8分割の場合とは”すこし違った現象”が見えています。
どのようなものか、まず6分割の場合から説明します。そのA2とA5は次の通りです。
A2=1/3 -1/21 +1/27 -1/45 +1/51 -1/69 +・・=(π/24)tan(9π/24)
A5=1/9 -1/15 +1/33 -1/39 +1/57 -1/63 +・・ =(π/24)tan(3π/24)
tan()の()内は約分ができることに着目してください。つまりtan(9π/24) はtan(3π/8)であり、tan(3π/24)はtan(π/8) となります。tan(3π/8)、tan(π/8)はじつは2分割の結果と同じです! 2分割結果は(その14)を参照してください。
次に10分割を見てみましょう。そのB3とB8は次の通りです。
B3=1/5 -1/35 +1/45 -1/75 +1/85 -1/115 +・・=(π/40)tan(15π/40)
B8=1/15 -1/25 +1/55 -1/65 +1/95 -1/105 +・・ =(π/40)tan(5π/40)
このtanの()内も約分ができることに注目ください。tan(15π/40)はtan(3π/8) であり、tan(5π/40) はtan(π/8)です。これも2分割の結果と同じです。
このように6分割や10分割では、2分割の結果も含まれる形になり、それを合わせて真の分割が実現されているのです。
『2n分割でもそれが2^n分割でない場合は、その分割の結果は、当該の分割以外の分割の結果も含みながら分割が実現される』という構造になっているのです。面白いことです。
さてそれでは、12分割はどうなるでしょうか? その場合は”4分割の”結果が含まれてくるのですが、別の機会に示すことにします。
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まとめておきます。
●L(2m-1)は、少なくとも2n分割可能である。(ここでm, nは1以上の整数)
●2n分割でもそれが2^n分割でない場合は、その当該分割以外の分割の結果も含まれる。以上。 (杉岡幹生)
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