■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その20,杉岡幹生)

 リーマンゼータζ(s)=1 +1/2^s +1/3^s +1/4^s +・・のs=10,12の場合の2分割の結果を求めましたので報告します。(その18)で提示した私の予想も確認しました。なお、4分割、8分割は略しますが、(その17)を参考にしてもらえばそれらがどのようになるかすぐに類推できます。

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 ここでも(その13)や(その17)と同様に、今回もζ(s)を変形した次のZ(s)を考察します。

 Z(s)=1 +1/3^s +1/5^s +1/7^s +1/9^s +1/11^s +・・   ----@

 Z(s)は本質的にζ(s)に等しいものです。なぜなら次のように変形でき、Z(s)はζ(s)そのものだからです。

 Z(s)=1 +1/3^s +1/5^s +1/7^s +1/9^s +1/11^s +・・

   =1 +1/2^s +1/3^s +1/4^s + 1/5^s +1/6^s +1/7^s・・ - (1/2^s +1/4^s +1/6^s + ・・)

   =ζ(s) - 1/2^sζ(s)

   =(1-1/2^s)ζ(s) ----A

 これよりζ(10)、ζ(12)の2分割はZ(10)、Z(12)の2分割を見ればよいとわかるので、それを見ていきます。

 なお、以下に示す分割は、本質的な分割(真の分割)です。上記Z(s)の@の姿は一見ζ(s)の分割(分裂)に見えますが、sが10や12の時Aのように「分割級数=有理数×ゼータ」の形に容易に変形できるので、それは仮の(見かけ)の分割となります。ご注意ください。

なお、ζ(10), ζ(12)の単独での値は次のようになります。

 ζ(10)=π^10/93555

 ζ(12)=691π^12/638512875

したがって、

 Z(10)=31π^10/2903040

 Z(12)=691π^12/638668800

となります。

 以下、表記を簡単にするため、α=π/8、β=3π/8とし、またsinを”s”、cosを”c”と略記しました。すなわち、sin(π/8)は”sα”、cos(3π/8)は”cβ”などとなります。

 それではZ(10)、Z(12)(すなわちζ(10)、ζ(12))の2分割の結果を示します。

■Z(10)2分割

 A1= 1 + 1/7^10 +1/9^10 +1/15^10 + 1/17^10 +1/23^10 + ・・

  =α^10 {62+1072(sβ)^2+1452(sβ)^4+247(sβ)^6+2(sβ)^8}/{2835(cβ)^10}

 A2=1/3^10 +1/5^10 +1/11^10 +1/13^10 + 1/19^10 +1/21^10 +・・

  =α^10 {62+1072(sα)^2+1452(sα)^4+247(sα)^6+2(sα)^8}/{2835(cα)^10}

 A1 +A2=Z(10)であることを確認ください。左辺の級数が右辺の値に収束することをExcelマクロで確認しました。

■Z(12)2分割

 A1= 1 + 1/7^12 +1/9^12 +1/15^12 + 1/17^12 +1/23^12 + ・・

  =α^12 {1382+35396(sβ)^2+83021(sβ)^4+34096(sβ)^6+2026(sβ)^8+4(sβ)^10}/{155925(cβ)^12}

 A2=1/3^12 +1/5^12 +1/11^12 +1/13^12 + 1/19^12 +1/21^12 +・・

  =α^12 {1382+35396(sα)^2+83021(sα)^4+34096(sα)^6+2026(sα)^8+4(sα)^10}/{155925(cα)^12}

 A1 +A2=Z(12)であることを確認ください。左辺の級数が右辺の値に収束することをExcelマクロで確認しています。

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 上の分割級数A1,A2の導出過程を簡単に述べます。タンジェントの部分分数展開式G[1](x)は次の通りです。

 G[1](x)=1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・=(π/(4x))tan(πx/2)

 今回はこれを9回、11回微分して得られる次のG[10](x)、G[12](x)を使います。

 以下で、X=πx/2としています。したがって”sX”、”cX”は、それぞれsin(πx/2)、cos(πx/2)のことです。

G[10](x)=1/(1^2-x^2)^10 +1/(3^2-x^2)^10 +1/(5^2-x^2)^10 +・・

     =(π/(4x))^10 {62+1072(sX)^2+1452(sX)^4+247(sX)^6+2(sX)^8}/{2835(cX)^10} + Others(x) ---D

G[12](x)=1/(1^2-x^2)^12 +1/(3^2-x^2)^12 +1/(5^2-x^2)^12 +・・

  =(π/(4x))^12 {1382+35396(sX)^2+83021(sX)^4+34096(sX)^6+2026(sX)^8+4(sX)^10}/{155925(cX)^12} + Others(x) ---E

 ここで右辺のOthers(x)は目的のゼータ値には関係しない項なで”Others(x)”としました。

 上式のxに特定の値を代入することで(X=πx/2)、Z(s)の分割級数が次々に求まっていきます。以下の通りです。

 Dのxに値3/4を代入すると、Z(10)のA1が得られる。

 Dのxに値1/4を代入すると、Z(10)のA2が得られる。

 Eのxに値3/4を代入すると、Z(12)のA1が得られる。

 Eのxに値1/4を代入すると、Z(12)のA2が得られる。

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 (その18)で提示した予想を再び掲げます。

『ゼータ分割に関する予想:ζ(2n)、L(2n-1)を分割した結果に関し、分子sin式におけるsin項の係数の和(定数項も含める)と、分母cosにかかる係数は一致するだろう。 ここで、nは1以上の整数。』

 Z(10)、Z(12)で予想が成り立っているかを確認してみましょう。(α=π/8, β=3π/8であり、sinは”s”, cosは”c”と略記されています)

 Z(10)のA1の右辺は次の通りです。

 A1=α^10 {62+1072(sβ)^2+1452(sβ)^4+247(sβ)^6+2(sβ)^8}/{2835(cβ)^10}

 分子のsin係数の和=62+1072+1452+247+2=2835、 分母のcos係数=2835

 よって、予想は成り立っています。

 Z(12)のA1の右辺は次の通り。

 A1=α^12 {1382+35396(sβ)^2+83021(sβ)^4+34096(sβ)^6+2026(sβ)^8+4(sβ)^10}/{155925(cβ)^12}

 分子のsin係数の和=1382+35396+83021+34096+2026+4=155925、 分母のcos係数=155925

 よって、予想は成り立っています。

 すでに気づかれていると思いますが、分割の結果(右辺の値)はZ(10)、Z(12)(すなわちζ(10)、ζ(12))を生み出す核関数DやEの右辺の姿を反映しています。   (杉岡幹生)

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