■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その19,杉岡幹生)
L(s)=1 -1/3^s +1/5^s -1/7^s +・・のs=5,7,9,11,13の場合の2分割の結果を求めましたので報告します。(その18)で提示した私の予想も確認しました。
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4分割、8分割は略しますが、(その14)のL(1)分割や(その16)のL(3)分割を参考にしてもらえば、それらがどのようになるかすぐにわかります。
なお、L(5), L(7), L(9), L(11), L(13)の単独での値は、次のようになります。L(13)だけ分母は掛け算で表記しました。
L(5)=5π^5/1536
L(7)=61π^7/184320
L(9)=277π^9/8257536
L(11)=50521π^11/14863564800
L(13)=2702765π^13/(2^14×12!)
以下、表記を簡単にするため、α=π/8、β=3π/8とし、またsinを”s”、cosを”c”と略記しました。すなわち、sin(π/8)は”sα”、cos(3π/8)は”cβ”などとなります。
各L(s)の2分割の結果を示します。
■L(5)2分割
A1= 1 - 1/7^5 +1/9^5 -1/15^5 + 1/17^5 -1/23^5 + ・・ =α^5 {2sβ+(sβ)^3}/{3(cβ)^5}
A2=1/3^5 -1/5^5 +1/11^5 -1/13^5 + 1/19^5 -1/21^5 +・・=α^5 {2sα+(sα)^3}/{3(cα)^5}
■L(7)2分割
A1= 1 - 1/7^7 +1/9^7 -1/15^7 + 1/17^7 -1/23^7 + ・・ =α^7 {17sβ+26(sβ)^3+2(sβ)^5}/{45(cβ)^7}
A2=1/3^7 -1/5^7 +1/11^7 -1/13^7 + 1/19^7 -1/21^7 +・・=α^7 {17sα+26(sα)^3+2(sα)^5}/{45(cα)^7}
■L(9)2分割
A1= 1 - 1/7^9 +1/9^9 -1/15^9 + 1/17^9 -1/23^9 + ・・ =α^9 {62sβ+192(sβ)^3+60(sβ)^5+(sβ)^7}/{315(cβ)^9}
A2=1/3^9 -1/5^9 +1/11^9 -1/13^9 + 1/19^9 -1/21^9 +・・=α^9 {62sα+192(sα)^3+60(sα)^5+(sα)^7}/{315(cα)^9}
■L(11)2分割
A1= 1 - 1/7^11 +1/9^11 -1/15^11 + 1/17^11 -1/23^11 + ・・
=α^11 {2764sβ+14384(sβ)^3+10194(sβ)^5+1004(sβ)^7+4(sβ)^9}/{28350(cβ)^11}
A2=1/3^11 -1/5^11 +1/11^11 -1/13^11 + 1/19^11 -1/21^11 +・・
=α^11 {2764sα+14384(sα)^3+10194(sα)^5+1004(sα)^7+4(sα)^9}/{28350(cα)^11}
■L(13)2分割
A1= 1 - 1/7^13 +1/9^13 -1/15^13 + 1/17^13 -1/23^13 + ・・
=α^13 {21844sβ+171511(sβ)^3+217186(sβ)^5+55196(sβ)^7+2036(sβ)^9+2(sβ)^11}/{467775(cβ)^13}
A2=1/3^13 -1/5^13 +1/11^13 -1/13^13 + 1/19^13 -1/21^13 +・・
=α^13 {21844sα+171511(sα)^3+217186(sα)^5+55196(sα)^7+2036(sα)^9+2(sα)^11}/{467775(cα)^13}
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上の分割級数の導出過程を簡単に述べます。タンジェントの部分分数展開式G[1](x)は次の通りです。
G[1](x)=1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・=(π/(4x))tan(πx/2)
今回はこれを4回、6回、8回、10回、12回微分して得られる次のG[5](x)、G[7](x)、G[9](x)、G[11](x)、G[13](x)を使います。
以下で、X=πx/2としています。したがって”sX”、”cX”は、それぞれsin(πx/2)、cos(πx/2)のことです。
G[5](x)=1/(1^2-x^2)^5 +1/(3^2-x^2)^5 +1/(5^2-x^2)^5 +・・
=(π/(4x))^5 {2sX+(sX)^3}/{3(cX)^5} + Others(x) ---@
G[7](x)=1/(1^2-x^2)^7 +1/(3^2-x^2)^7 +1/(5^2-x^2)^7 +・・
=(π/(4x))^7 {17sX+26(sX)^3+2(sX)^5}/{45(cX)^7} + Others(x) ---A
G[9](x)=1/(1^2-x^2)^9 +1/(3^2-x^2)^9 +1/(5^2-x^2)^9 +・・
=(π/(4x))^9 {62sX+192(sX)^3+60(sX)^5+(sX)^7}/{315(cX)^9} + Others(x) ---B
G[11](x)=1/(1^2-x^2)^11 +1/(3^2-x^2)^11 +1/(5^2-x^2)^11 +・・
=(π/(4x))^11 {2764sX+14384(sX)^3+10194(sX)^5+1004(sX)^7+4(sX)^9}/{28350(cX)^11} + Others(x) ---C
G[13](x)=1/(1^2-x^2)^13 +1/(3^2-x^2)^13 +1/(5^2-x^2)^13 +・・
=(π/(4x))^13 {21844sX+171511(sX)^3+217186(sX)^5+55196(sX)^7+2036(sX)^9+2(sX)^11}/{467775(cX)^13} + Others(x) ---D
ここで右辺のOthers(x)は目的のゼータ値には関係しない項なで”Others(x)”としました。
上式のxに特定の値を代入することで(X=πx/2)、各L(s)の分割級数が次々に求まっていきます。以下の通りです。
@のxに値3/4を代入すると、L(5)のA1が得られる。
@のxに値1/4を代入すると、L(5)のA2が得られる。
同様にしてAからL(7)分割が、BからL(9)分割が、CからL(11)分割が、そしてDからL(13)分割が求まります。以上。
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(その18)で提示した予想を再び掲げます。
『ゼータ分割に関する予想: ζ(2n)、L(2n-1)を分割した結果に関し、分子sin式におけるsin項の係数の和(定数項も含める)と、分母cosにかかる係数は一致するだろう。ここで、nは1以上の整数。』
L(5)〜L(13)で予想が成り立っているかを確認してみましょう。(α=π/8, β=3π/8であり、sinは”s”, cosは”c”と略記されています)
L(7)のA1の右辺は次の通りです。
A1=α^7 {17sβ+26(sβ)^3+2(sβ)^5}/{45(cβ)^7}
分子のsin係数の和=17+26+2=45、 分母のcos係数=45
よって、予想は成り立っています。
L(13)のA1の右辺は次の通り。
A1=α^13 {21844sβ+171511(sβ)^3+217186(sβ)^5+55196(sβ)^7+2036(sβ)^9+2(sβ)^11}/{467775(cβ)^13}
分子のsin係数の和=21844+171511+217186+55196+2036+2=467775、 分母のcos係数=467775
よって、予想は成り立っています。
L(5)、L(9)、L(11)でも成り立っているので、皆様も確認してください。 (杉岡幹生)
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