■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その16,杉岡幹生)
L(s)ゼータのL(3)の分割級数(ゼータの分身)を求めましたので報告します。すなわち今回は、L(s)=1 -1/3^s +1/5^s -1/7^s +・・のs=3の場合、
L(3)=1 -1/3^3 +1/5^3 -1/7^3 +・・=π^3/32 -----@
の2分割、4分割、8分割の結果を示します。(その13)からの継続で、タンジェントの部分分数展開式から求めました。(その14)のL(1)分割とも比較してみてください。
なお、L(s)は、ディリクレのL関数L(χ,s)の中の虚2次体Q(√(-1)ゼータです(導手N=4, χ(n)はn≡0, 1, 2, 3 mod 4に対し、それぞれχ(n)=0, 1, 0, -1となる)。L(χ,s)から無数に生み出されるゼータの中の一種がL(s)というわけです。
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以下、分割の結果を示していきますが、統一的視点から見たいので”1分割”から示します。
■L(3)1分割
L(3)=1 -1/3^3 +1/5^3 -1/7^3 +・・=(π/4)^3 sin(π/4)/{cos(π/4)}^3
右辺はπ^3/32になり上記@に一致します。以下の結果も一緒に眺めると、右辺はきれいです。
■L(3)2分割
A1= 1 - 1/7^3 +1/9^3 -1/15^3 + 1/17^3 -1/23^3 + ・・ =(π/8)^3 sin(3π/8)/{cos(3π/8)}^3
A2=1/3^3 -1/5^3 +1/11^3 -1/13^3 + 1/19^3 -1/21^3 +・・=(π/8)^3 sin(π/8)/{cos(π/8)}^3
右辺の三角関数の値を計算した結果は、以下の通り。
sin(3π/8)/{cos(3π/8)}^3 =8 +6√2、sin(π/8)/{cos(π/8)}^3 =-8 +6√2
A1 -A2=L(3)=π^3/32 であることがわかります。上記A1,A2式に対しExcelマクロで数値検証しましたが、左辺の級数は右辺値に収束しました。
■L(3)4分割
B1= 1 -1/15^3 +1/17^3 -1/31^3 +1/33^3 -1/47^3 +・・ =(π/16)^3 sin(7π/16)/{cos(7π/16)}^3
B2=1/3^3 -1/13^3 +1/19^3 -1/29^3 +1/35^3 -1/45^3 +・・=(π/16)^3 sin(5π/16)/{cos(5π/16)}^3
B3=1/5^3 -1/11^3 +1/21^3 -1/27^3 +1/37^3 -1/43^3 +・・=(π/16)^3 sin(3π/16)/{cos(3π/16)}^3
B4=1/7^3 -1/9^3 +1/23^3 -1/25^3 +1/39^3 -1/41^3 +・・ =(π/16)^3 sin(π/16)/{cos(π/16)}^3
右辺の三角関数の値を計算した結果は、以下の通り。
sin(7π/16)/{cos(7π/16)}^3= 32 +24√2 +16√(2+√2) +14√(4+2√2)
sin(5π/16)/{cos(5π/16)}^3=-32 +24√2 -16√(2-√2) +14√(4-2√2)
sin(3π/16)/{cos(3π/16)}^3= 32 -24√2 -16√(2-√2) +14√(4-2√2)
sin(π/16)/{cos(π/16)}^3 =-32 -24√2 +16√(2+√2) +14√(4+2√2)
B1 -B2 +B3 -B4=L(3)=π^3/32であることがわかります。上記B1〜B4式に対しExcelマクロで数値検証しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。
■L(3)8分割
C1= 1 -1/31^3 +1/33^3 -1/63^3 +1/65^3 -1/95^3 +・・ =(π/32)^3 sin(15π/32)/{cos(15π/32)}^3
C2=1/3^3 -1/29^3 +1/35^3 -1/61^3 +1/67^3 -1/93^3 +・・ =(π/32)^3 sin(13π/32)/{cos(13π/32)}^3
C3=1/5^3 -1/27^3 +1/37^3 -1/59^3 +1/69^3 -1/91^3 +・・ =(π/32)^3 sin(11π/32)/{cos(11π/32)}^3
C4=1/7^3 -1/25^3 +1/39^3 -1/57^3 +1/71^3 -1/89^3 +・・ =(π/32)^3 sin(9π/32)/{cos(9π/32)}^3
C5=1/9^3 -1/23^3 +1/41^3 -1/55^3 +1/73^3 -1/87^3 +・・ =(π/32)^3 sin(7π/32)/{cos(7π/32)}^3
C6=1/11^3 -1/21^3 +1/43^3 -1/53^3 +1/75^3 -1/85^3 +・・=(π/32)^3 sin(5π/32)/{cos(5π/32)}^3
C7=1/13^3 -1/19^3 +1/45^3 -1/51^3 +1/77^3 -1/83^3 +・・=(π/32)^3 sin(3π/32)/{cos(3π/32)}^3
C8=1/15^3 -1/17^3 +1/47^3 -1/49^3 +1/79^3 -1/81^3 +・・=(π/32)^3 sin(π/32)/{cos(π/32)}^3
上記8式に対しExcelマクロで数値検証しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。また右辺値の和がπ^3/32となることも確かめました。すなわち、C1 -C2 +C3 -C4 +C5 -C6 +C7 -C8=L(3)=π^3/32 となっています。
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上の分割級数の導出過程を簡単に述べます。タンジェントの部分分数展開式G[1](x)は次の通りです。
G[1](x)=1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・=(π/(4x))tan(πx/2)
今回はこれを2回微分して得られる次のG[3](x)を使います。
G[3](x)=1/(1^2-x^2)^3 +1/(3^2-x^2)^3 +1/(5^2-x^2)^3 +・・=(π/(4x))^3 sin(πx/2)/{cos(πx/2)}^3 + Others(x) ---A
ここで右辺のOthers(x)はL(3)値には関係しない関数なので(ζ(2)とL(1)に関係)、”Others(x)”としました。
上記Aのxに特定の値を代入することで、L(3)の分割級数が次々に求まっていきます。以下の通りです。
Aのxに値1/2を代入すると、L(3)=π^3/32が得られる。
Aのxに値3/4を代入すると、A1が得られる。
Aのxに値1/4を代入すると、A2が得られる。
Aのxに値7/8を代入すると、B1が得られる。
Aのxに値5/8を代入すると、B2が得られる。
Aのxに値3/8を代入すると、B3が得られる。
Aのxに値 1/8を代入すると、B4が得られる。
Aのxに値15/16を代入すると、C1が得られる。
Aのxに値13/16を代入すると、C2が得られる。
Aのxに値11/16を代入すると、C3が得られる。
Aのxに値 9/16を代入すると、C4が得られる。
Aのxに値 7/16を代入すると、C5が得られる。
Aのxに値 5/16を代入すると、C6が得られる。
Aのxに値 3/16を代入すると、C7が得られる。
Aのxに値 1/16を代入すると、C8が得られる。
注記:Aの左辺級数からL(1)とζ(2)の分割級数が出ますが、それは興味がないので無視します。右辺からも左辺のL(1)とζ(2)の分割級数に対応した値がOthers(x)から出ますがそも無視します。興味がないものは、Others(x)に押し込んで無視するのです。前回のζ(2)分割でも述べたこの方法を使うことで、計算量を減らすことができ、割合簡単にL(3)分割級数を求めることができるのです。以上。
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このようにL(3)もゼータの分身たちが求まりました。そしてこの結果は当然、ゼータの特殊値に関係しています。
ζ(2)、ζ(4)、・・はベルヌーイ数Bnに関係します。一方L(1)、L(3)・・はオイラー数Enに関係します。上記のL(3)=π^3/32は、E2=-1に関係しています。分割の結果を観察することで、オイラー数やベルヌーイ数のふしぎが解明されていくような気がします。
このような分割を調べているうちに、私はある予想(conjecture)を得ました。その予想は、ζ(4)以降の分割値(右辺の三角関数の姿)を眺めていてだんたんと見えてきたものです。現在ζ(8)分割まで求めていますがその予想は「絶対に正しい」という確信に変わっています。乞うご期待。 (杉岡幹生)
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