■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その10,杉岡幹生)
ゼータ分割(分裂)問題の件、今回、虚2次体Q(√-5)のゼータLc(1)は四つに分裂することがわかりましたので、報告します。
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まず先にQ(√-5)ゼータLc(1)を示します。次のものです。
Lc(1)=1 +1/3 +1/7 +1/9 -1/11 -1/13 -1/17 -1/19 +1/21 +1/23 +1/27 +1/29 -1/31 -1/33 -1/37 -1/39 +1/41 +1/43 +1/47 +1/49 -1/51 -1/53 -1/57 -1/59 +・・
=π/√5
これをL(χ,s)ゼータのディリクレ指標χ(n)で表せば、次のようになります。
n≡1,3,7,9 mod 20のとき、χ(n)=1
n≡11,13,17,19 mod 20のとき、χ(n)=-1
それ以外のときは、χ(n)=0
すなわち、
L(χ,s)=χ(1)/1^s+χ(2)/2^s+χ(3)/3^s+χ(4)/4^s+・・の上記χ(n)でのs=1の場合がLc(1)です。
なお、この”Lc()”という表記は、私が便宜的に使っているもので一般的に使われているものではありません。
さて今回、Lc(1)は次の四つに分裂することがわかりました。
分割a=1 -1/19 +1/21 -1/39 +1/41 -1/59 +1/61 -・・
=(π/20)tan(9π/20)
分割b=1/3 -1/17 +1/23 -1/37 +1/43 -1/57 +1/63 -・・
=(π/20)tan(7π/20)
分割c=1/7 -1/13 +1/27 -1/33 +1/47 -1/53 +1/67 -・・
=(π/20)tan(3π/20)
分割d=1/9 -1/11 +1/29 -1/31 +1/49 -1/51 +1/69 -・・
=(π/20)tan(π/20)
これら四つを足し合わせたものが、Lc(1)となることは容易にわかります。
Lc(1)=分割a +分割b +分割c +分割d です。
これらそれぞれに対し数値検証を実施し、左辺が右辺値に収束することを確認しました。(Lc(1)そのものも検証しました。Lc(1)はπ/√5に収束。OK)
ちなみに右辺をtan無しで表示すると、次のようになります。
(π/20)tan(9π/20)=(π/20){1 +√5 +√(5+2√5)}
(π/20)tan(7π/20)=(π/20){-1 +√5 +√(5-2√5)}
(π/20)tan(3π/20)=(π/20){-1 +√5 -√(5-2√5)}
(π/20)tan(π/20)=(π/20){1 +√5 -√(5+2√5)}
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さて、上記の分割式の導出方法を簡単に述べます。ゼータの香りの漂う公式
1/(1^2+a^2) +1/(3^2+a^2) +1/(5^2+a^2) +・・
=(π/(4a))・{e^(aπ)-1}/{e^(aπ)+1} ----@
を使います。
@のaに複素数i/10を代入すると、分割dが得られる。
@のaに複素数3i/10を代入すると、分割cが得られる。
@のaに複素数7i/10を代入すると、分割bが得られる。
@のaに複素数9i/10を代入すると、分割aが得られる。
以上。
簡単ですので、読者も試してみてください。
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今回の分割(分裂)も、本質的な分割となっています。
見せかけの分割の場合は、
級数の値=(有理数)×ゼータ値
と変形が可能です。しかし今回の4つに関してはこのような変形はできない、つまり、分割a=(有理数)×Lc(1) などと変形できませんので”真の分割”といえます。
計算していると、非常に美しい秩序が存在していることがわかります。ゼータ香り式には、巨大な構造が埋め込まれています。ですから、いくらでもL(χ,s)ゼータに関しての重要な情報を取り出してくることができるのです。ゼータの香りの漂う公式は、豊かな鉱脈をもつ鉱山といえます。 (杉岡幹生)
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