■原始ピタゴラス数に関するバーニングとホールの定理の逆問題について(その2)

 島田正雄さんご自身でもっと詳細を解説していただいた.

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[1]原始ピタゴラス数は、{ n^2 - m^2, 2 mn, n^2 + m^2 } (ただし、m, n は偶奇の異なる互いに素な数で、 0 < m < n),または,{ (q^2 - p^2) / 2, pq, (q^2 + p^2) / 2 } (ただし、p, q は互いに素な奇数で、 0 < p < q)の関係を使って「二つの互いに素な数」に一意に写像することができます。つまり「原始ピタゴラス数の自由度は2」ということであり、「縦横の長さが互いに素な長方形」に対してU・D・Aに相当する三つの操作を行なうと、別の原始ピタゴラス数を生成する種になる縦横の長さが互いに素な長方形」が作れる、ということです。

[2]ですから「三次元から二次元に“落とす”」ことを考えました。

[3]「ユークリッドの互除法」は「長方形から正方形を取り去ってゆく操作」です。すなわち、その「逆回し」に相当するのは「長方形の一辺に正方形を附け加える」という操作です。ところが、これをやってしまうと「縦横の偶奇が異なる」「縦横がともに奇数である」という性質が失われてしまいます。

[4]そこでどうするかというと「正方形をふたつ付け加える」とすれば「奇数+偶数=奇数」「偶数+偶数=偶数」ですから、偶奇が保存されます。

[5]もっとも最初からこんなふうに うまいことを思いついたわけではありません。最初は「三次のベクトルに行列を掛ける」という操作を「二次元空間(これはふたつの自然数が互いに素なわけですから、既約分数の空間です)の間の変換」という操作に置き換えて考えたらどうなるか、という話から始まりました。これが「要するにこれは連分数への展開である」という話になったのが『四角い三角形』という以下のエントリです。

http://animaleconomicus.blog106.fc2.com/blog-entry-1150.html

[6]「連分数による表現はユークリッドの互除法そのものである」ので、これをユークリッドの互除法と考えたとき、図形的にはどんな操作になるか?といったことを考えているうちに「U・D・Aに相当する三つの操作」のうち、「Aに相当する操作はなんだろう?」という話になりました。そこで「折り返し」的な操作を考えて図形的な証明に辿り着いたという経緯がありま

す。

[7]UとDについては、ギリシャ時代に発見されたピタゴラス数の系列に対応するのですが、Aに対してはフェルマーあたりまで下らないと文献的に見つからないようです。

[8]バーニングとホールの定理については、細矢治夫先生の『トポロジカル・インデックス』に詳しいのですが、アプローチが若干違うので(私は非数値処理と有限組合せ数学からのアプローチなので、有機化学に関する応用数学あたりは手薄でした。専門は日本語処理とかの自然言語処理方面ですので,自分としては「非数値処理・記号処理が特技の市井のプログラマ」的なポジションでやっております。

[9]バーニングとホールの定理については、細矢治夫先生の『トポロジカル・インデックス − フィボナッチ数からピタゴラスの三角形までをつなぐ新しい数学』で詳しく分析されているので、逆問題の解決というのは、正直「まぐれ当たり」でしかありません。

[10]岐阜東高校の亀井 喜久男先生がバーニングとホールの定理を再発見したりしていらっしゃいますけど,逆問題については、よっぽどの物好きでないと、たぶん、そんなマイナーな問題には興味を持たないんでしょう。

[11]図形的な証明に関しては、

『バビロニアの長方形定理』

http://animaleconomicus.blog106.fc2.com/blog-entry-1460.html

に書きましたので、こちらをご参照ください。

[12]バーニングとホールの定理について言及したエントリとしては

『プリンプトン322、まとめ』

http://animaleconomicus.blog106.fc2.com/blog-entry-1475.html

『書籍化計画』

http://animaleconomicus.blog106.fc2.com/blog-entry-1486.html

があります.

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