■漸化式と母関数(その19)
n次の行列式(determinant)はn個の項の積のn!個の項に適当な符号をつけた和として表される.符号をつけずに全部+にして加えた式はpermanentと呼ばれる.訳語はないが,強いて訳せば永久式である.
2つの行(または列)が比例するとき,行列式の値は0となるから,すべての成分aij=1/nの行列Jnの行列式は0であるが,永久式の値はn!/n^nである.
===================================
【1】ファン・デル・ヴェルデン予想
n次の行列で成分aij≧0,行和=1,列和=1のとき,永久式の値≧n!/n^nである.等号はJnのときのみ成立する.
この予想は2人のロシア人Egorycev(1980年),Falikman(1981年)により独立にまったく別な方法で証明された.
ところで,
n!は直角三角錐
n^nは立方体
と関係している部分である.すなわち,n^n/n!は1辺の長さnの立方体を切断した直角三角錐の体積になる.
スターリングの近似
n!〜(2πn)^1/2n^nexp(−n)
n!≧n^nexp(−n)
の組み合わせ論的証明も可能である.
n^nは{1,2,3,・・・n}から{1,2,3,・・・n}へのinto写像,n!は{1,2,3,・・・n}から{1,2,3,・・・n}へのonto写像であるからだ.
===================================