■わが闘争・2017

 今年は

[1]サマーヴィル角柱:サマーヴィル単体を角柱状に空間充填させたもの

[2]コクセターらせん柱:正単体を円柱内に空間らせん状に配置したもの

に関する話題が1/3以上を占めた.

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【1】サマーヴィル角柱

 サマーヴィル単体は空間充填単体であるが,直角三角形をもっていないことが特徴である.そのため計算が難しくなるのであるが,その計算中に2通りの空間充填が可能であることを発見した.

 3次元の場合で確かめてみたところ,

[1]正三角柱

[2]別の三角柱

を2通りに充填できる四面体の無限系列を発見した.

 当初これは特別な四面体であると思われたのであるが,正三角柱を充填できる四面体はどれも二等辺三角柱も充填できることが判明した.いずれにせよ(非整数次元も考えることによって)2種類の三角柱に埋め込み可能な空間充填四面体は無数に構成できることがわかる.

 ゴールドバーグは正三角柱を充填できる四面体は,

 3a^2−3b^2+c^2=0

を満足することを発見しているが,それの高次元版

3次元の場合,3a^2−3b^2+c^2=0

4次元の場合,4a^2−6b^2+4c^2−d^2=0

5次元の場合,5a^2−10b^2+10c^2−5d^2+e^2=0

6次元の場合,6a^2−15b^2+20c^2−15d^2+6e^2−f^2=0

を発見することができた.これらは簡単な整数係数式になっていて,中川宏さんが「それは新しい発見ですね!」と評してくれた.

 これらの一般化は,特別な場合の数値から帰納的・実験的(?)に未定係数法的な実験式として求められた.結果は正しいようであるが,同一の値を与える同値でない公式が複数個あり得る.必要条件式なのか必要十分条件式なのかという意味において,数学の問題の正解はひとつとは限らないのである.

 ただし,位相幾何学的な公式ではなく,対称性に基づく深い理論的根拠をもっている.証明はこの議論を少し深くすれば正しくできそうに感じられる.

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【2】コクセターらせん柱

 液晶パネルが現代人の生活を担保する発明品であることはいうまでもないが,液晶分子のねじれによって光の透過性が変化することを応用していることを知っている人はかなり少ない.

 コクセターらせん柱は正単体を円柱内に空間らせん状に配置したものであるが,その側面を観察すると,液晶分子のねじれ構造を模していて,物理学者や化学者が液晶研究に用いたことはほとんど知られていない.

 一方,サマーヴィル角柱はサマーヴィル単体を角柱状に空間充填させたものであるが,サマーヴィル単体の辺の長さをすべて等しくなるように変形させると,角柱状空間充填図形が正単体からなる空間らせんに遷移する.これは結晶と非結晶(液晶)の間の相転移である.

 本年11月,京都大学の数理解析研究所で行われたタイリングに関する研究会に参加.高次元液晶の数理について講演した.

 サマーヴィル単体の辺の長さとコクセターらせん柱のねじれ角の間には奇妙な数理関係が成り立つという内容であるが,物理学者や化学者であればともかくとして,数学者にうける話だったかどうかは定かでない.

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