■学会にて(形の科学会,その2)
【3】アリの眼と副像
レンズを通過した光は焦点付近に主像を形作る.しかし,レンズ面が凹面鏡の役割を果たすことによって,レンズ面近くに副像を作るのだそうである.その意味では主虹・副虹のでき方とは異なる.
副像の存在は高校生の発表ではじめて知ったのであるが,自然界ではどのようなところに副像が利用されているのかというと,たとえば,アリはまったく目印もないことも多い環境の中を,食物を探しながら膨大な距離を動き回り,最短距離を通って巣に食物を持ち帰ることができる.
その際,太陽からの光によって方角を知ったり,ほぼ一定の歩幅から距離を知ったりできるからだといわれているが,アリの眼は曲率半径が小さく,また,光を反射しやすいところから副像をみているのではないかとも考えられるのである.
アリに限らず,昆虫の眼は複眼であることが多いので,多数の副像が方角と距離を求めるナビゲーションシステムとして役立っているのかもしれない.
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【4】鴨川等間隔則と映画館の空席
京都・鴨川沿いに腰掛けるカップル同士の間隔が等間隔になるという「人間の行動法則」が知られている.この法則の2次元版は如何に?
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映画館の客はランダムに着席するものとする.はじめのうちはまだがらがらであるが,隣り合った席は避けることができる.もし,すべての客が連れのない一人客だとすると,あいだに必ず空席を残しながら席が埋まっていく.この場合,ひとりの客が計2席を使うことになり,半分の座席が無駄になる.客が増えてくると空席は次第に埋まっていく.
次に,すべての客がカップルの場合を考える.カップルが座れなくなった時点で,映画館にはどれくらい空席が残るか? その答えは
1/e^2=0.135
になるのだそうだ.
この問題はランダム充填問題として科学の世界では別の形で研究されてきたものであり,1/e^2と関係する空間配置問題なのである.ラフにスケッチしてみよう.
カップルが非効率的に席をとるとすると,カップルのあいだに必ず空席を残しながら席が埋まっていく.この場合,一組のカップルが計3席を使うことになり,1/3の座席が無駄になる.完全に効率的に隙間を空けずに座ると無駄は0になる.
両者を平均すると(1/2+0)/2=1/6(16.7%)の席が無駄になるが,これは正確な値1/e^2(13.5%)に極めて近い値である.
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