■対称多項式入門
組合せ論の基本的な道具は「分割」,「母関数」,「対称関数(多項式)」である.このうち「分割」と「母関数」についてはコラム「母関数と整数の分割」に記したので,今回のコラムでは「対称関数(多項式)」を取り上げて説明することにしたい.
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【1】基本対称式
対称式の基本定理より,n変数のどんな対称式も基本対称式を用いて表すことができる.たとえば,2変数の場合,
α1^2+α2^2=(α1+α2)^2−2α1α2
α1^3+α2^3=(α1+α2)^3−3(α1+α2)α1α2
α1^2α2+α1α2^2=(α1+α2)α1α2
など.
次に,n変数対称式:
pj=α1^j+α2^j+・・・+αn^j
を基本対称式:
σ1=α1+・・・+αn
σ2=α1α2+・・・+αn-1αn
σ3=α1α2α3+・・・+αn-2αn-1αn
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
σn=α1α2α3・・・αn
を用いて表してみることにしよう.
f(t)=Π(1+tαi)=1+σ1t+σ2t^2+・・・+σnt^n
とおくと,
f'(t)/f(t)=d/dtlogf(t)=Σαi/(1+tαi)=ΣΣ(-1)^kαi^(k+1)t^k
=Σ(-1)^kp(k+1)t^k
ゆえに,
f’(t)=f(t)Σ(-1)^kp(k+1)t^k
となり,
σ1+2σ2t+・・・+nσnt^(n-1)
=(1+σ1t+σ2t^2+・・・+σnt^n)(p1−p2t+p3t^2−・・・)
両辺の係数を比較することによって,順次
p1=σ1
p2=σ1p1−2σ2
p3=σ1p2−σ2p1+3σ3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
p(k+1)=σ1pk−σ2p(k-1)+・・・+(-1)^(k-1)σkp1+(-1)^k(k+1)σ(k+1)
が得られる.このことから「α1,α2,・・・,αnの基本対称式は,累乗和:α1^j+α2^j+・・・+αn^jの有理数を係数とする整式で表される」という結果が導き出される(ニュートンの定理).
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ここで述べた定理はニュートンに拠るとされるものであるが,このことから逆に,n次方程式:
f(x)=x^n+a1x^(n-1)+・・・+an=Π(x−αi)=0
が与えられたとき,累乗和
p1=α1+・・・+αn
p2=α1^2+α2^2+・・・+αn^2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
pn=α1^n+α2^n+・・・+αn^n
を根とする方程式の係数を導出することができる.したがって,もし係数a1,・・・,anがすべて有理数(整数)なら,求める方程式の係数もまたみな有理数(整数)となる.
アーベルは「ニュートンの定理」を援用して方程式論を形成したことになるといえるだろう.アーベルは5次以上の一般代数方程式がベキ根によっては解けない(5次以上の方程式には,係数の間の四則と累乗根を使って表す根の公式はない)ことを初めて証明したノルウェーの数学者である.
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r次の基本対称式(の総和)σrについては,不等式
σr-1σr+1≦σr^2 (1<=r<n)
が成り立つことが知られている.
また,
Π(1+tαi)=1+σ1t+σ2t^2+・・・+σnt^n
=1+nC1c1t+nC2c2t^2+・・・+σnt^n
と表すと,
cr=σn/nCr
すなわち,r次の基本対称式の平均である.
crは
σr-1σr+1≦σr^2 (1<=r<n)
よりも強い,次のような不等式を満たす.
(1):cr-1cr+1≦cr^2 (1<=r<n) (ニュートンの定理)
(2):c1≧c2^(1/2)≧c3^(1/3)≧・・・≧cn^(1/n)
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【2】対称式とヤング図形
対称式の計算は,ヤング図形を用いて見通しよく行うことができる.この節の目的はヤング図形を用いて対称式のかけ算を見通しよく行うことであるが,その計算法はヤング図形のテンソル積で定義される.
とはいっても,具体的な方法については割愛せざるを得ないのだが,
[参]硲文夫「代数学」森北出版
に非常にわかりやすい解説があるので,それをご覧頂きたい.
さて,対称式の基本定理より,n変数のどんな対称式も基本対称式を用いて表すことができる.たとえば,2変数の場合,
α1^2+α2^2=(α1+α2)^2−2α1α2
α1^3+α2^3=(α1+α2)^3−3(α1+α2)α1α2
α1^2α2+α1α2^2=(α1+α2)α1α2
など.
2変数の場合,α1+α2やα1α2が基本対称式であるが,n変数の場合の基本対称式は
σ1=x1+・・・+xn (項数nC1)
σ2=x1x2+・・・+xn-1xn (項数nC2)
σ3=x1x2x3+・・・+xn-2xn-1xn (項数nC3)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
σn=x1x2x3・・・xn (項数nCn)
となる.
単項式
x1^a1x2^a2・・・xn^an (a1≧a2≧・・・≧an≧0)
において,x1,x2,・・・,xnを置換して加えて得られる多項式を
(a1a2・・・an)
と表すことにする.
この記号を用いると
σ1=x1+・・・+xn=[1,0,0,・・・,0]=(1)
σ2=x1x2+・・・+xn-1xn=[1,1,0,・・・,0]=(11)=(1^2)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
σn=x1x2x3・・・xn=[1,1,1,・・・,1]=(111・・・1)=(1^n)
のように表すことができる.0はあってもなくても同じものを表している.
また,この記号の表す式は変数の個数nが決まれば一意に定まる.しかし,逆にいうとnが変わると異なり,たとえば,(41)は,n=2のとき
(41)=x1^4x2+x1x2^4
であるが,n=3のときは
(41)=x1^4x2+x1^4x3+x2^4x1+x2^4x3+x3^4x1+x3^4x2
となる.
(41)のヤング図形は
□□□□
□
で表されるのだが,任意の対称式は基本対称式を用いて表すことができるという「対称式の基本定理」は,任意のヤング図形を
(1),(1^2),(1^3),(1^4),・・・
すなわち
□,□,□,□,・・・
□ □ □
□ □
□
で表せるということと同値である.
(41),すなわち
□□□□
□
の場合は
□|□|□|□
□|
のように縦に切り分けて,分けたもの同士のかけ算を行うことになる.
そこで(ほとんど説明なしにではあるが)
[参]硲文夫「代数学」森北出版
に掲載されているヤング図形とテンソル積の計算例を紹介しておきたい.
たとえば,ヤング図形のテンソル積を用いると
□×□=□□+3□
□ □ □
□
すなわち,
(1^2)×(1)=(21)+3(1^3)
となるのだが,これはn=2のとき
x1x2(x1+x2)=x1^2x2+x1x2^2
n=3のとき
(x1x2+x1x3+x2x3)(x1+x2+x3)=x1^2x2+x1^2x3+x2^2x1+x2^2x3+x3^2x1+x3^2x2)+3x1x2x3
n=4のとき
(x1x2+x1x3+x1x4+x2x3+x2x4+x3x4)(x1+x2+x3+x4)=x1^2x2+x1^2x3+x1^2x4+x2^2x1+x2^2x3+x2^2x4+x3^2x1+x3^2x2+x3^2x4+x4^2x1+x4^2x2+x4^2x3+3(x1x2x3+x1x2x4+x1x3x4+x2x3x4)
を意味していて,
(1^2)×(1)=(21)+3(1^3)
が「変数の数によらず常に成り立つ」ことを示している.
このテンソル積は一般化することができて
(1^3)×(1)=(21^2)+4(1^4)
(1^n)×(1)=(21^(n-1))+(n+1)(1^(n+1))
また,ここで得られた
(21)=(1^2)×(1)-3(1^3)
はヤング図形を基本対称式を用いて表したものと考えることができるが,一般の場合に拡大していくことができる.ヤング図形は対称式の基本定理の証明にも用いられるというわけである.
なお,1968年,ヤング図形と同様の図形があるゲームに関連して佐藤幹夫先生によって導入され,マヤ図形と呼ばれている.
[参]野海正俊「パンルヴェ方程式」朝倉書店
には,ヤング図形と1:1対応するマヤ図形についての解説もあるので,併せて読まれるとよいであろう.
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【3】分割と基本的な対称多項式
非負整数の非増加列,すなわち,
λ=(λ1,λ2,・・・,λn)
λ1≧λ2≧・・・≧λn>0
なる整数列を分割(partition)という.分割はλ=(λ1,λ2,・・・,λn)でパラメトライズされるわけであるが,分割λに対して
|λ|=Σλi
を分割λのサイズ,λiが零でないiの総数をl(λ)と書いて分割λの長さという.
次に,分割の集合に自然な順序を定義したい.λ≧μとは
|λ|=|μ|
かつすべてのiに対して
λ1+・・・+λi≧μ1+・・・+μn
が成り立つこととする.
すると
(2)>(1^2)
(3)>(21)>(1^3)
(4)>(31)>(2^2)>(21^2)>(1^4)
(5)>(41)>(32)>(31^2)>(2^21)>(21^3)>(1^5)
(6)>(51)>(42)>(41^2)>(321)>(31^3)>(2^21^2)>(21^4)>(1^6)
>(3^2)> >(2^3)>
となって|λ|≦5の場合には全順序(辞書式順序)であるが,|λ|≧6の場合は半順序となることが理解される.
分割λに対応する単項対称多項式(モノミアル対称多項式)を
mλ(x)=Σx1^α1・・・xn^αn
により定義する.ただし,この和はλ=(λ1,λ2,・・・,λn)の入れ替えで生じる単項式すべてを動くものとする.すなわち,単項対称多項式は単項式x1^α1・・・xn^αnの線形結合をとって得られる対称化多項式である.
|λ|=3,n=3とすれば
m(3)(x)=x1^3+x2^3+x3^3
m(21)(x)=x1^2x2+x1^2x3+x2^2x1+x2^2x3+x3^2x1+x3^2x2
m(1^3)(x)=x1x2x3
また,ベキ和対称関数をr次のベキ和
pr=Σx^r=m(r)(x)
と分割λ=(λ1,λ2,・・・)に対して
pλ=pλ1pλ2・・・=Πpλi
と定義すると,n=3の場合,
p(3)(x)=x1^3+x2^3+x3^3
p(21)(x)=(x1^2+x2^2+x3^2)(x1+x2+x3)
p(1^3)(x)=(x1+x2+x3)^3
のようになる.
さらに,ヤング図形の縦1列に対応する場合がr次の基本対称式
er(x)=σr=m(1^r)
ヤング図形の横1列に対応する場合がr次の完全(同次)対称多項式
hr(x)=Σmλ(x) |λ|=r
であるが,eλ(x),hλ(x)についてもベキ和対称多項式の場合と同様に定義する.
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【4】シューア対称多項式
いくつかの対称関数を定義したが,ここでは最も重要な対称多項式であるシューア対称多項式を導入する.
シューア対称多項式sλ(x)は,n個の変数x=(x1,x2,・・・,xn)が与えられたとき,l(λ)≦nなる分割に対して定義されるn変数対称多項式で,次のような行列式の比として定義される.
sλ(x)=det(xi^(λj+n-j))/det(xi^(n-j))
det(xi^(n-j))= |x1^(n-1) x1^(n-2)・・・x1^0|
|x2^(n-1) x2^(n-2)・・・x2^0|
|・・・・・・・・・・・・・・・|
|xn^(n-1) xn^(n-2)・・・xn^0|
det(xi^(λj+n-j))= |x1^(λ1+n-1) x1^(λ2+n-2)・・・x1^λn|
|x2^(λ1+n-1) x2^(λ2+n-2)・・・x2^λn|
|・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・|
|xn^(λ1+n-1) xn^(λ2+n-2)・・・xn^λn|
分母はファンデルモンド行列式だから,差積Π(xi−xj)に等しい.
det(xi^(n-j))=Π(xi−xj)
また,分子はxの交代式なので,差積で割り切れて全体として対称多項式になる.したがって,sλ(x)は|λ|=Σλi次の斉次対称式となる.l(λ)>nに対してはsλ=0と約束する.
n=3の場合,定義にしたがって計算すれば
s(1)(x)=x1+x2+x3
s(1^2)(x)=x1x2+x1x3+x2x3
s(21)(x)=(x1+x2)(x1+x3)(x2+x3)
などが得られる.
また,シューア対称多項式の内積の直交性
〈sλ,sμ〉=δ (クロネッカーのδ)
は,シューア対称多項式が直交多項式の理論の枠内で捉えることができることを示している.
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sλ(x)はヤング図形に対応する母関数であって,単項式の非負整数係数の1次結合として表せることが知られている.n≧3とすれば
s(3)(x)=m(3)(x)+m(21)(x)+m(1^3)(x)
s(21)(x)=m(21)(x)+2m(1^3)(x)
s(1^3)(x)=m(1^3)(x)
一般に,
sλ(x)=mλ(x)+ΣKmμ(x) (μ<λ)
sλ(x)=mλ(x)+(それより低い順序のモノミアル)
において,Kは非負整数という形になっている.このことから一般のsλ(x)がn変数対称多項式のなす空間の基底であり,任意の対称多項式がこれらの1次結合で一意に表されることがいえるのである.
次に,n変数のシューア多項式sλをベキ和多項式prで表してみよう.すると
s(1)=p1
s(2)=1/2p2+1/2p1^2
s(1^2)=−1/2p2+1/2p1^2
s(3)=1/3p3+1/2p2p1+1/6p1^3
s(21)=−1/3p3+1/3p1^3
s(1^3)=1/3p3−1/2p2p1+1/6p1^3
などとなる.これらの公式はシューア多項式を「変数の数nに依存しない形に表現できる」とても便利なものになっていて,n→∞のときの無限個の変数の極限を考えたシューア多項式すなわちシューア関数の定義に用いることができる.
同様に,モノミアル対称多項式mλをベキ和多項式prで表せば(とりあえず3次まで),
m(1)=p1
m(2)=p2
m(1^2)=−1/2p2+1/2p1^2
m(3)=p3
m(21)=−p3+p2p1
m(1^3)=1/3p3−1/2p2p1+1/6p1^3
この両辺は無限変数の多項式でも成り立つことに注意されたい.対称多項式の無限変数版は対称関数と呼ばれ,変数の数nに依存しない形が望まれるのである.
シューア関数は組合せ論と表現論の関わりにおいて別格の扱いを受けているばかりではなく,数理物理の諸問題などに頻繁に現れる.たとえば,自由電子系に対する任意の励起状態はシューア対称多項式によって記述可能である.
以下に述べるジャック多項式,マクドナルド多項式はシューア関数の変形であり,内積のβ変形がジャック多項式,(q,t)変形がマクドナルド多項式となる.
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【5】ジャック対称多項式
シューア多項式は一般線形群の表現の指標として自然に現れるが,有理数係数のなす対称空間の基底となるもうひとつの例として,ジャック多項式がある.
それは結合定数βがパラメータβとしてはいった形で,たとえば,3変数の場合,
J(3)(x)=m(3)(x)+3β/(2+β)m(21)(x)+6β^2/(1+β)(2+β)m(1^3)(x)
J(21)(x)=m(21)(x)+6β/(1+2β)m(1^3)(x)
J(1^3)(x)=m(1^3)(x)
と求まる.
パラメータβを1(自由電子の場合)とするとシューア多項式sλ,β=0とすると単項対称多項式mλ,β→∞とすると基本対称式eλの定数倍になることが見て取れるだろう.
相互作用をもつ系の場合,一般に相関関数の計算を厳密に行うことはとても困難で近似計算するしかないが,その点,ポテンシャルに三角関数解を仮定したカロジェロ-サザーランド模型(量子可積分系)は解析的な結果を期待することができる価値のある模型である.
ジャック対称多項式も,直交多項式
〈Jλ,Jμ〉=δ
であり,また,カロジェロ-サザーランド模型では
Δ(x,β)=Π(1−xi/xj)^β
が基底状態
Jλ(x,β)Δ(x,β)
が励起状態を表していて,量子可積分系の理論に自然に現れるものである.ジャック多項式はまたビラソロ代数という無限次元リー代数の表現論においても現れることが知られている.
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【6】マクドナルド対称多項式
ジャック多項式のqアナログを考えると
Δ(x,β)=Π(1−xi/xj)^β
がヒントになって
Δ(x,q,t)=Π(xi/xj;q)∞(xj/xi;q)∞/(txi/xj;q)∞(txj/xi;q)∞
が得られる.
q=tとするとシューア多項式,t=q^βとしてq→1とするとジャック多項式となる.マクドナルド多項式はジャック多項式の兄貴分であって,ジャック多項式にパラメータを加えて拡張し,固有値が縮退しないような状況を実現しているのである.
シューア,ジャック多項式での理論の多くは,マクドナルド多項式に対しても成り立つ.すなわち,直交多項式
〈Pλ,Pμ〉=δ
であり,また,
Pλ(x)=mλ(x)+ΣKmμ(x) μ<λ
である.
3次までの例を計算すると
P(1)=p1
P(2)=(1−q)(1+t)/2(1−qt)p2+(1+q)(1−t)/2(1−qt)p1^2
P(1^2)=−1/2p2+1/2p1^2
P(3)=−1/3・(1−t^3)/(1−t)・(1−q)(1−q^2)/2(1−qt)(1−q^2t)p3+1/2・(1−q^3)(1−t^2)/(1−qt)(1−q^2t)p2p1+1/6・(1−q^2)/(1−q)・(1−q^3)/(1−q)・(1−t)^2/(1−qt)(1−q^2t)p1^3
P(21)=−1/3・(1−t^3)/(1−t)・(1−q)/(1−qt^2)p3−1/2・(1−t^2)/(1−t)・(q−t)/(1−qt^2)p2p1+(2+q+t+2qt)/6・(1−t)/(1−qt^2)p1^3
P(1^3)=1/3p3−1/2p2p1+1/6p1^3
実はこれはAn-1型離散系という特定のルート系に対応するマクドナルド多項式であって,それ以外のルート系に付随したマクドナルド多項式も考えることができる.そしてそれらを統一的に扱う枠組みとして提唱されたのが,アフィン・ヘッケ代数である.多変数の直交多項式に対しては,アフィン・ヘッケ代数という代数構造が重要な役割を果たすのである.
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【7】おわりに
これらの対称多項式において無限個の変数の場合を考えたものが,シューア関数,ジャック関数,マクドナルド関数である.本稿ではこれらの共通点すなわち
(1)モノミアル多項式を用いて展開される対称多項式
かつ
(2)多変数の直交多項式
であるという数学的側面について説明してきたのだが,とはいっても天下り的であって,相違点や物理的背景についてはほとんど何も説明しなかった.
そのため,不満に感じておられる読者も多いかと思う.参考文献を追記しておきたいのだが,詳細については
[参]三町勝久「ダイソンからマクドナルドまで」群論の進化・第4章,朝倉書店
[参]白石潤一「量子可積分系入門」サイエンス社
を参照されたい.
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