■無限次元空間の球充填問題(その6)

 オイラーはいろいろな工夫をして,
  log(sinx)=-Σcos(2nx)/n-log2
であることをつきとめ,広義積分
  ∫(0,π/2)log(sinx)dx=-π/2log2
の値を求めています.
 
 また,これを代入して計算すれば
  1/1^3+1/3^3+1/5^3+・・・=π^2/4log2+2∫(0,π/2)xlog(sinx)dx
  ζ(3)=2π^2/7log2+16/7∫(0,π/2)xlog(sinx)dx
が得られます(1772年).
 
  Σcos(2nx)/n=-log(sinx)-log2
というわけですが,ところで(その5)においてシュレーフリ関数について解説した際,
  Σcos(2nx)/n^2
が出現しました.
  |Σcos(2nx)/n^2|<Σ1/n^2=ζ(2)=π^2/6
は容易にわかりますが,この値は如何に?
 
 実は,
  Σcos(2nx)/n^2=(π/2-x)^2−π^2/12
となるのですが,x=0を代入すると
  Σ1/n^2=π/2^2−π^2/12=π^2/6
となることがわかります.
 
 ところで,
  Σcos(2nx)/n=-log(sinx)-log2
との関係はどうなっているのでしょうか? そこで,今回のコラムでは,シュレーフリ関数の補足説明を行いたいと思います.
 
 なお,ログコサイン積分
  L(x)=-∫(0,x)log(cosx)dx
はロバチェフスキー関数,ジログ関数
  L2(x)=Σx^n/n^2=-∫(0,x)log(1-t)/tdt=φ(x)
はアーベル関数とも呼ばれ,ともにシュレーフリ関数と関係しています.
  -log(1-x)=x+x^2/2+・・・=Σx^n/n
より
  -∫(0,x)log(1-t)/tdt=Σx^n/n^2
となることは既におわかりでしょう.
 
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【1】シュレーフリ関数S(x,y,z)
 
 シュレーフリ関数は
  S(x,y,z)=ΣX^n/n^2(cos2nx−cos2ny+cos2nz−1)−x^2+y^2−z^2
  X=(D−sinxsinz)/(D+sinxsinz)
  D=(cos^2xcos^2z−cos^2y)^(1/2)
で定義されます.
 
  Σcos2nx/n^2=(π/2−x)^2−π^2/12
  Σy^ncos2nx/n=−1/2log(1−2ycos2x+y^2)
  Σy^nsin2nx/n=arctan((1+y)/(1−y)tanx)−x
が基本等式となり,特殊値
  S(π/6,π/3,π/6)=π^2/15
  S(π/6,π/4,π/6)=π^2/48
  S(π/6,π/4,π/6)=π^2/144
  S(3π/10,π/3,π/6)=π^2/1800
などが得られます.→(その5)参照
 
 また,
  Σy^ncos2nx/n=−1/2log(1−2ycos2x+y^2)
にy=1を代入すると,オイラーが得た結果
  Σcos2nx/n=−log(sinx)−log2
 
  Σy^nsin2nx/n=arctan((1+y)/(1−y)tanx)−x
にy=−1を代入すると,ロバチェフスキー関数,アーベル関数との関係
  1/2Σsin2nx/n=−∫(0,x)log(2cosx)dx
−log2
  1/4i{φ(-exp(2ix))+φ(-exp(-2ix))}=L(x)−xlog2
が得られ,
  L(π/2)=π/2log2
の値が求められます.
 
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【2】シュレーフリ関数Fn(θ)
 
 シュレーフリ関数Fn(θ)は
  Fn+1(θ)=2/π∫(1/2arcsec(n),θ)Fn-1(φ)dθ
  sec2φ=sec2θ−2
  F0(θ)=1,F1(θ)=1
で再帰的に定義される関数です.
 
 二面角2θのn次元正単体を,その中心から(n−1)次元単位超球面上に射影したとき,1つの胞が占める面積は,
  sn=nvn=2πvn-2
として,
  2^(-n)n!snFn(θ)
で表されます.
 
 とくに,n=2の場合,円周上には2θの円弧が射影され,s2=2πですから,
  F2(θ)=2θ/π
n=3の場合,内角が2θ,2θ,2θの球面正三角形に射影され,その面積は6θ−π,また,s3=4πですから,
  F3(θ)=2θ/π−1/3
となります.
 
 シュレーフリ関数は二面角が直角の場合を基準としています.二面角が直角の1次元基本単体を外接円に射影すると,外接円は4等分(=2^2)されます.二面角が直角の2次元単体を外接球に射影すると,外接球は8等分(=2^3)されますから,
  2^(-n)n!snFn(π/4)=2^(-n)sn
したがって,
  Fn(π/4)=1/n!
 
 正単体の場合,θ=π/3で,超球面は(n+1)胞により分割されますから
  2^(-n)n!snFn(π/3)=sn/(n+1)
より,
  Fn(π/3)=2^n/(n+1)!
となります.
 
 また,相補性を考慮すると
  2^(-n)n!snFn(θ)+2^(-n)n!snFn(π−θ)=sn
すなわち
  Fn(θ)+Fn(π−θ)=2^n/n!
ですから,θ=π/2を代入して
  Fn(π/2)=2^(n-1)/n!
であることがわかります.
 
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  F3(1/2arccos(1/3))=arccos(1/3)/π−1/3
それに対して,F4(θ)を解析的に求めることは難しいのですが,F4(1/2arccos(1/4))の場合,公式
  Fn+1(1/2arccos(1/n))=0
を用いて,
  F5(1/2arccos(1/4))=0
 
 また,
  F5(θ)=F4(θ)-1/3F2(θ)+2/15
より,
  F4(1/2arccos(1/4))=1/3(arccos(1/4)/π-2/5)
と計算されます.
 
 F4では,特殊値
  F4(1/2arccos(1/3))=0
  F4(π-1/2arccos(1/3))=2/3
  F4(1/2arccos(1/4))=1/3(arccos(1/4)/π-2/5)
  F4(π-1/2arccos(1/4))=1/3(12/5-arccos(1/4)/π)
の他にも,
  F4(π/5)=1/900,F4(2π/5)=191/900,F4(3π/5)=409/900,F4(4π/5)=599/900
  F4(π/4)=1/24,F4(π/2)=1/3,F4(3π/4)=5/8
  F4(π/3)=2/15,F4(2π/3)=8/15
が知られています.
 
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【3】kissing numberの上界と下界
 
 n次元ユークリッド空間において,1つの単位球に同時に接触することのできる単位球の最大個数τnは,接吻数(kissing number)あるいは接触数(contact number)と呼ばれていて,最密充填構造「同じ半径の球をできるだけ稠密詰めるにはどうしたらよいか」という空間の球による充填問題と深い関連があります.
  τ1=2,τ2=6,τ3=12
 
 また,4次元以上の高次元では,8次元(240個)と24次元(196560個)の場合を除いて未解決です.
  τ8=240,τ24=196560
 
 n次元球のkissing numberの上界は,コクセターの方法によって粗雑ながら押さえられます.それは1球面上に大きさの等しい球帽(球面上の円,球面半径φ)を埋め込むときの最密充填の問題に帰着されるのですが,(その4)で解説した単体的密度限界
  dn=(2n/(n+1))^(-n/2)Dn
    =(n+1)^(1/2)(n!)^2/2^(3n/2)・vnFn(1/2arcsec(n)θ)
と類似の方法になっています.
 
 n次元正単体(二面角2θ)の頂点を超球の中心において,(n−1)次元球面上に射影します.球面上には(n−1)次元球面正三角形ができ,その面積は
  Σ=2^(-n)n!snFn(θ)
で与えられます.これは正単体の1辺の球面距離2φの関数になります.
 
 また,σを球面正三角形の頂角の和とすると,球面上にはn個の点が配置され,(n−2)次元球帽が(n−1)次元球面を覆うことになります.そして,1つの頂角は(n−1)次元正単体を(n−2)次元球面上に射影したものに等しくなりますから
  σ=n2^(-n+1)(n−1)!Fn-1(θ)
 
 すなわち,上界は
  (p,3,・・・,3),θ=π/p
なる三角形面正多面体(単体的正多面体:n−1次元面が単体)の頂点に(n−2)次元球を配置する問題となるのですが,ここで,球面上にN(φ)個の点を配置した場合,不等式
  N(φ)≦σsn/Σ
が成り立ちますから,最終的に
  N(φ)≦2Fn-1(θ)/Fn(θ)
  sec2θ=sec2φ+n−2
を得ることができます.
 
 kissing number(τn)に関しては,φ=π/6の場合を考えればよいので,  τn≦2Fn-1(1/2arcsecn)/Fn(1/2arcsecn)
となり,
  n=2 → 2F1(π/6)/F2(π/6)=6
  n=3 → 2F2(1/2arcsecn3)/F3(1/2arcsecn3)=6/(3-π/arcsec3)=13.39・・・
  n=4 → 2F3(1/2arcsecn4)/F4(1/2arcsecn4)=5(1+1/(2-2π/arcsec4))=26.44・・・
 
 5次元以上では,数値積分によらなければなりませんが,
  fn(x)=Fn(1/2arcsecx)
と書くことにすると,
  f2(x)=arcsecx/x
  fn(x)=1/π∫(n-1,x)fn-2(x-2)/x√(x^2-1)dx
     =fn(n)+1/π∫(n,x)fn-2(x-2)/x√(x^2-1)dx
  fn(x)=fn-1(x)-1/3fn-3(x)+2/15fn-5(x)-17/315fn-7(x)+62/2835fn-9(x)-・・・(n:odd)
  fn(x)=1/3fn-2(x)-2/15fn-4(x)+17/315fn-6(x)-62/2835fn-8(x)+・・・(n:even)
 
 リーチは台形則を用いて数値積分し,
  2fn-1(n)/fn(n)
を求めました.その結果は
  2f3(4)/f4(4)=22.44・・・
  2f4(5)/f5(5)=48.70・・・
  2f5(6)/f6(6)=85.81・・・
  2f6(7)/f7(7)=146.57・・・
  2f7(8)/f8(8)=244.62・・・
以下,(9)401,(10)648,(11)1035,(12)1637,・・・と続きます.
 
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 n次元球のkissing numberの上界は,正四面体配置(相互に接するよう球を配置)の問題でしたが,それに対して,下界は極大格子状配置,すなわち,
  A1,A2,A3,D4,D5,E6,E7,E8
の問題となります.
 
 たとえば,n=3のみならず,n=4,5の場合も面心立方格子状配置
  (±1,±1,0)
  (±1,±1,0,0)
  (±1,±1,0,0,0)   (±1の個数は2つ)
では2n(n−1)個の球と接することができます.
 
 n=6,7,8では面心立方格子状配置の接触点以外にも隙間ができるので,隙間の分が加わって,それぞれ
  60+12=72
  84+42=126
  112+128=240
個の同じ大きさの球が詰め込み可能になります.
 
 この隙間は,9個の整数に対して法3で合同となるので,
  x1+x2+x3=x4+x5+x6=x7+x8+x9=0  (n=6)
  x1+x2+x3+x4+x5+x6=x7+x8+x9=0  (n=7)
  x1+x2+x3+x4+x5+x6+x7+x8+x9=0  (n=8)
であって,
  12×3=42,42×3=128
という関係にあり,E8では9個の球によって完全に充填した構造となっています.
 
 そして,最終的には簡単なグラフ的算法に帰着されるのですが,1≦n≦8では
  n  1  2  3  4  5  6  7  8
  下界 2  6  12  24  40  72  126  240
となり,ガウス記号を用いて
  下界=n([2^(n-2)/3]+n+1)
の形にまとめられます.→(この式はn>8に対しては成り立ちません.n=9のとき468となるのですが,コクセターの上界401よりも大きくなってしまうからです.)
 
 これより
  n     τn 
  1       2  
  2      6  
  3     12〜13 
  4     24〜26 
  5     40〜48 
  6     72〜85 
  7    126〜146
  8    240〜244
となります.
 
 以下に,現在知られている上界・下界を記しますが,コクセターの方法は,現在知られている上界よりほんの少し大きい方に偏っていることがわかります.
 
  n     τn       n     τn     
  1       2        13    1130〜2233   
  2      6        14    1582〜3492   
  3      12        15    2564〜5431   
  4     24〜25       16    4320〜8313   
  5     40〜46       17    5346〜12215  
  6     72〜82       18    7398〜17877  
  7    126〜140      19   10668〜25901  
  8      240       20   17400〜37974  
  9    306〜380      21   27720〜56852  
  10    500〜595      22   49896〜86537  
  11    582〜915      23   93150〜128096  
  12    840〜1416      24     196560    
 
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[補]kissing numberの問題
 
 1つの10円玉を机の上において,それと触れ合うようにかつお互いに重ならないようにして,6個の10円玉を置くことができます.1次元の球は区間であり,接触数は1次元のとき2個,2次元のとき6個であることは自明であって,幼稚園児でも解くことができそうです.
 
 平面上で与えられるたいていの問題は,3次元あるいは高次元の空間で考察することができます.一般に,n次元ユークリッド空間において,1つの単位球に同時に接触することのできる単位球の最大個数τn は接吻数(kissing number)あるいは接触数(contact number)と呼ばれていて,最密充填構造と深い関連があります.
 
 10円玉の例からわかるようにτ2=6ですが,n≧3のとき,τn はどうなるでしょうか? まず,3次元の場合,単位球のまわりに面心立方格子状に単位球を置いた場合の接触点
  1/√2(±1,±1,0)
  1/√2(±1,0,±1)
  1/√2(0,±1,±1)
を考えてみると,これら12個の相異なる2点に対応するベクトルの内積は,−1,±1/2,0のいずれかであり,したがって,その間の角度(球面距離)は60度以上となりますから,これらの点で接するように12個の単位球を置くことができます.したがって,τ3≧12は直ちにわかります.
 
 実際,正20面体の12個の頂点に対して,そこで接するように12個の単位球を置くことができます.この場合,頂点間の角度は約63゜26′になり,12個の球は互いに接触しておりません.少しだけなら自由に動かせるという状況ですから,その隙間を一つに集めたらもう一個球が入るのではないでしょうか? ところが,これができるかできないかはあまり自明ではありません.というより,3次元になると,とたんに問題が難しくなってしまうのです.
 
 3次元の球の最大接触数τ3については,1694年にニュートンとグレゴリーの間で議論され,ニュートンは12を,グレゴリーは13を主張したといわれています.結局,ニュートンは12個が最大であるという証明ができず,グレゴリーも13個並べたわけではないので,「ニュートンの13球問題」と呼ばれるこの論争は引き和けに終わりました.
 
 1874年,ホッペが12個が最大であることという証明を試みましたが,不備があり,ようやく完全な証明がなされたのは1953年,ファン・デル・ヴェルデンとシュッテによってです.つまり,3次元空間内で1つの球には同時に12個の球しか接することができません.3次元のときは12個という解が得られるまで非常に長い年月がかかったことになります.
 
 4次元の場合はどうなるでしょうか? 24個の面心立方格子状配置の接触点
  1/√2(±1,±1,0,0)
  1/√2(±1,0,±1,0)
  1/√2(±1,0,0,±1)
  1/√2(0,±1,±1,0)
  1/√2(0,±1,0,±1)
  1/√2(0,0,±1,±1)
で重ならないように置けるので,τ4≧24は明らかです.また,τ4≦25は示されていますが,現在でもτ4が24であるか25であるかは未解決です.
 
 τnの正確な値を決定する問題は大変難しく,4次元以上の高次元については,高度に対称的な格子状配置になっている8次元(240個)と24次元(196560個)の場合を除いて未解決であり,現在,正確な値が知られているのは,τ1=2,τ2=6,τ3=12,τ8=240,τ24=196560の5つだけなのです.
 
 少し詳細に調べていきましょう.4次元,5次元においては面心立方格子の類似品となりますが,6次元以上についてはそのようなことはもはや成立しなくなります.次元の上昇とともに,超球の間の隙間が大きくなっていくからです.8次元になると面心立方格子に十分な隙間ができるので,112個の接触点
  1/√2(0,・・・,±1,0,・・・,±1,0・・・)   (±1の個数は2つ)
と128個の隙間の点
  1/√8(±1,±1,±1,±1,±1,±1,±1,±1)   (+の個数は偶数)
に同じ大きさの球が詰め込み可能になります.専門的になりますが,τ8の240個の点はE8型の単純リー代数の240個のルート格子で実現されます.さらに,この詰め込みの断面が6次元と7次元のもっとも効率のいい格子状詰め込みを与えてくれます.
 
 また,1965年,リーチは群論と深く結びついた今日リーチ格子として知られるようになったものに基づいて,24次元空間の格子状詰め込みを構成しました.この詰め込みにおいては,なんと1つの超球に196560個もの超球が接触しています.τ24の196560個の点はリーチ格子の原点から一番近い点の集合として得られることが知られています.
 
 こうして,n≦24のときのすでに知られている上界・下界がスローンらによって与えられています.
 
  n     τn
  1       2
  2      6
  3      12
  4     24〜25
  5     40〜46
  6     72〜82
  7    126〜140
  8      240
  9    306〜380
  10    500〜595
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  24    196560
 
 つまり,8次元と24次元は,接吻数が計算できる特殊な次元なのであり,都合のいい格子(8次元の場合,格子にはE8,24次元の場合,リーチ格子という名前が付いている)がひとつに決まるので,格子上に球を配置することによって,すぐに接吻数を数えることができるというわけです.
 
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[補]kissing numberの漸近評価
 
 kissing numberの漸近評価については
  1/b=sec2θ−n+1
とおくと,
  Fn(θ)〜√{(1+nb)/2}・1/(n!e^(1/b))・(2e/πnb)^(n/2)
したがって,
  N(φ)〜2^(1-n/2)√(πcos2φ)n^(3/2)/(e(sinφ)^(n-1))
 
 φ=π/6のとき
  τn 〜 2^((n-1)/2)n^(3/2)√π/e
となります.
 
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[補]トートの結果(n=3の場合)
 
 3次元球面上にN個の点を配置して,点間の最小球面距離が最大になるようにするとき,最短距離の上限が面積2π/(N−2)の球面正三角形の1辺の長さδ以下となることを証明しましょう.
 
(証明)
 ガウス曲率は,
  K=1/R1R2
で定義されますが,球面三角形ABCにこのことをあてはめると,三角形の頂点の角度をα,β,γとおいて,
  S=∫∫KdA=α+β+γ−π   (ガウス・ボンネの定理)
(球面凸n角形に対しては,S=α1+α2+・・・+αn−(n−2)π)
したがって,球面正三角形の1つの内角をαとすると,その面積は
  △=3α−π
 
 N個の頂点をもつ三角形面多面体では,3f=2eですから,
  (v,e,f)=(N,3N−6,2N−4)
すなわち,球面上にn個の点を配置した場合,2N−4はN個の頂点をもつ三角形面正多面体(単体的正多面体)の面数となります.
 
 したがって,
  3α−π=4π/(2N−4)
より,
  α=Nπ/(3N−6)
 
 ここで,α=2θより,
  θ=α/2=N/(N−2)・π/6
  N=12θ/(6θ−π)
すなわち,球面正三角形の場合,2θは面積が6θ−πの球面正三角形△の1つの内角を表しているのですが,この結果は
  N(φ)≦2Fn-1(θ)/Fn(θ)
  sec2θ=sec2√k+n−1
から得られるものと一致しています.
 
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[参]Coxeter「Twelve geometric essays」Carbondale and Edwardsville,
   Southern Illinois university press
 
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