■リー群とリー代数(その2)
核物理学は中性子Nと陽子Pが結合して原子核をつくる機構を研究するものです.核の中では(重力を無視すれば)3つの力が働いていて,強い力はNまたはPを互いに結びつける,電磁相互作用はP相互間の反発力,弱い相互作用は不安定核のβ崩壊を引き起こす力となっています.
強い相互作用をする素粒子はハドロンと呼ばれますが,強い相互作用をするすべての粒子はクォークからできていると仮定するとうまく説明できる実験事実があり,重粒子(バリオン)は3つのクォークから,中間子(メソン)は2つのクォークからなるものと考えられています.
また,アイソスピン以外にも強い相互作用で保存し,弱い相互作用では保存しないような量が存在するのですが,その1つがハイパーチャージです.強い相互作用はアイソスピンとハイパーチャージの保存によって特徴づけられるのですが,横軸にアイソスピン,縦軸にハイパーチャージをとり,対応する粒子を平面上にプロットすると正六角形を描くとなるというのが八道説です.この六角形はA2型のルート系とまったく同じもので,SU(3)対称性を物語っています.
===================================
【1】リー群とリー代数(復習)
転置と複素共役を組み合わせた作用を(~)で表すことにすると,実数変数行列と複素変数行列の対応は以下のようになります.
実数 複素数
対称行列(A’=A ) → エルミート行列(A~=A)
直交行列(A’=A^(-1))→ ユニタリー行列(A~=A^(-1))
反対称行列(A’=−A )→ 反エルミート行列(A~=−A)
n次実変数一般線形群GL(n,R)は行列の乗法のもとで群をなすわけですが,その行列交換子で定義されるリー代数も同じ行列の集合となり,n×n行列なのでそのベクトル次元はn^2です.また,n×n複素行列GL(n,C)において,複素数は2つの実数で定義されるので,そのリー代数は2n^2次元をもつことになります.
n次元直交群O(n)はA^(-1)=A’を満たす行列の集合をなし,その行列式は±1となります.O(n)のリー代数は反対称行列からなるので,次元はn(n−1)/2であることが示されます.
O(n)において行列式が+1であるものは特殊直交群SO(n)なのですが,とくに,A’A=E,|A|=1を満たす3×3正方行列Aは特殊直交群SO(3)をなします.これは3次元空間の回転を表す群となります.なお,球面上の運動の有限群については5つの回転群(巡回群,正2面体群,正4面体群,正8面体群,正20面体群)=広義の正多面体群に限られることはよく知られています.→[補]
ユニタリー群U(n)は,複素共役をとって転置することを意味する(エルミート共役)~を用いて,A^(-1)=A~を満たす行列の集合です.U(n)のリー代数はn×n反エルミート行列(A~=−A)ですから,n(n−1)/2個の複素数の非対角要素とn個の純虚数の対角要素からなるため,全体でn^2実次元をもちます.
n次元特殊ユニタリー群SU(n)は,U(n)の行列で行列式が1のものです.SU(n)のリー代数はトレースが0の反エルミート行列からなるのですが,トレースが0という条件は自由度を1だけ減らすため,SU(n)のリー代数の次元はn^2−1となります.
===================================
【2】ルート系
(問)1つの3角形を辺に関して次々折り返していって,3角形が互いに重なることなく,平面を埋めつくすことができるか?
(答)この問題は平面を鏡映三角形で埋めるというものですが,1つの頂点に会する三角形は偶数に限る必要はありません.
頂点の角度をαとおくと,頂点を一回りしたので,
α=2π/p ただし,pは3以上の自然数.
まったく,同様に残り2つの内角に対しても
β=2π/q,γ=2π/r
また,α+β+γ=πより
1/p+1/q+1/r=1/2
が成り立ちます.
ここで,3≦p≦q≦rと仮定すると
1/2=1/p+1/q+1/r≦3/p
より,3≦p≦6
さらに,pが奇数のとき,頂点Aからでる2辺の長さは等しくならなければなりません.そうしないと折り返しでうまく重ならないからです.したがって,
(i)p=3のとき,q=rなので,
q(q−12)=0
これより,(p,q,r)=(3,12,12)
(ii)p=4のとき,(q−4)(r−4)=16
これより,(p,q,r)=(4,5,20),(4,6,12),(4,8,8)ですが,(p,q,r)=(4,5,20)は必要条件を満たすものの,十分条件を満たさない,すなわち,1点のまわりだけは完全に埋められても平面のタイル張りになりません.凸な多角形では七角以上になるとどんな型のものも平面充填はうまくいかないのです.
(iii)p=5のとき,q=rより,
q(3q−20)=0
これを満たす3以上の整数はありません.
(iv)p=6のとき,(q−3)(r−3)=9
これより,(p,q,r)=(6,6,6)
結局,求めるタイル張りは
(6,6,6) → 正三角形
(4,8,8) → 直角二等辺三角形
(4,6,12) → 30°,60°,90°の三角形
(3,12,12)→ 30°,30°,120°の三角形
の4通りあることになり,実際に十分条件を満たします.
30°,60°,90°のモザイクは,30°,30°,120°の三角形からなるモザイクをさらに2個の直角三角形に分解してできる模様,直角二等辺三角形モザイクは正方格子(4,4)を4分割したもの,正三角形は正三角形格子(3,6)そのものです.
30°,30°,120°の角をもつ三角形は,正三角形格子(3,6)の各面を3個の合同な三角形に分解することによってできるモザイク模様です.「麻の葉」文様と呼ばれるくり返し文様なのですが,日本では古くから装飾工芸品や寄木細工のデザインなどとして用いられていますから,ご存じの方も多いと思います.
===================================
ここでは,平面を鏡映三角形で埋めつくすというユークリッド幾何学の問題を考えましたが,これを一般の次元に拡張して,R^nの単体に置き換えて得られるベクトルの集合が一般の階数のルート系となります.
n次元空間において高度の対称性をもったベクトルの集合がルート系なのですが,ルート系ではベクトルの間の角度は30°,45°,60°,90°またはその補角に限られるので,2次元の可能なルート系は
A2(正六角形:正三角形格子)
B2=C2(正方形)
G2(星形六角形:正6角形を2個合わせたもの)
しかありません.→[補]
正三角形モザイクからは正六角形が得られるのでA2,直角二等辺三角形モザイクは正方形の頂点と各辺の中点を結んでできるのでB2=C2,麻の葉文様はダビデの星形六角形の各頂点になっているのでG2に相当します.
sl(n,C)の1組(2個)の正規直交基底を決め,n^2−n個のルートを図示すると,sl(3,C)では2次元ユークリッド空間で正6角形が得られます.このことを高次元に拡張してみましょう.
sl(4,C)の1組の正規直交基底を決め,3次元ユークリッド空間で図示すると12個の中心対称な点を得ることができるのですが,これらを頂点とする立体は立方八面体と呼ばれる準正多面体となります.立方八面体は立方体(あるいは正八面体)の各辺の中点を結んでできる6個の正方形面と8個の正三角形面からなる14面体です.
o(2n+1,C)で同様のことを行うと2n^2個のルートは,o(5,C)のR^2の8点の場合,正方形の4個の頂点と各辺の中点4個,o(7,C)のR^2の18点の場合,立方八面体の12個の頂点と6個の正方形面の中心の点となります.
o(2n,C)には2n^2−2n個のルートがあるのですが,o(4,C)のR^2の4点は正方形の4個の頂点,o(6,C)R^2の12点は立方八面体の12個の頂点であって,sl(4,C)のルート系と同型となります.
また,sp(n,C)のルート系は2n^2個の元の集まりであって,sp(2,C)の8点はo(5,C)と同型,sp(3,C)の18点は正八面体の6個の頂点と12本の辺の中点となります.
===================================
【3】ディンキン図形
前節では,平面を鏡映三角形で埋めつくすというユークリッド幾何学の問題を考えましたが,ルート系はn次元ユークリッド空間のベクトルの集合なので,それを平面上に図示するためには特別な工夫が必要となります.
1次独立な2つのルートα,βのなす角をθとすると,
(α,β)=|α||β|cosθ
ただし,(α,β)>0,|α|≦|β|,0<θ≦π/2としても一般性を失いません.
また,
2(α,β)/(α,α)=〈α,β〉
と略記すると,
〈β,α〉=2|β|/|α|cosθ
が成立しますから,
〈α,β〉〈β,α〉=4cos^2θ
が得られます.
ここで,ルート系の定義から,〈α,β〉は整数ですから,
4cos^2θ=0,1,2,3
したがって,
θ=π/2,π/3,π/4,π/6
に限られます.
そのとき,n次元単体の基底となるn個のベクトルの集合を
Φ={α1,α2,・・・,αn}
として,
〈αi,αj〉=2(αi,αj)/(αj,αj)=Cij
で与えられる整数をカルタン数,n次正方行列C={Cij}をカルタン行列といいます.これはαjを長さ√2のベクトルとするとき,カルタン行列は内積(αi,αj)からなるグラミアンとして定義されることを意味しています.
θ |β|/|α| 〈α,β〉 〈β,α〉 〈α,β〉〈β,α〉
π/2 − 0 0 0
π/3 1 1 1 1
π/4 2 1 2 2
π/6 3 1 3 3
カルタン行列ではこの4つの場合の値のみが許されます.カタラン数はそれほど多くの値をとるわけではないので,その状況を端的に表すグラフ(ディンキン図形)を考えることができます.そして,〈α,β〉〈β,α〉,すなわち,
θ=π/2・・・・結ばない
θ=π/3・・・・辺−で結ぶ(・−・)
θ=π/4・・・・辺=で結ぶ(・=・)
θ=π/6・・・・辺≡で結ぶ(・≡・)
と定めます.
===================================
ディンキン図形はカルタン行列に対応する平面グラフというわけですが,リー代数との関係をみてみましょう.
[1]SU(n)
SU(n)代数は古典群と呼ばれる代数のうちの一組で,SU(n+1)代数はカルタンによりAnと呼ばれたものです(An=SU(n+1)).
行列式が1のn×n複素ユニタリー行列の群SU(n)のリー代数は,エルミートでトレース0のn×n行列で生成され,それには線形独立なものがn^2−1個あります.
それらの重みはn−1次元空間で正単体,すなわち,SU(2)に対し正三角形,SU(3)に対し正四面体をなします.したがって,SU(n)のディンキン図形は
・−・−・・・−・−・
になり,SU(2)に対するディンキン図形は・,SU(3)に対しては・−・と表されます.
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
[2]SO(n)
SO(n)はn×n直交行列の群,すなわちn次元実ベクトル空間における回転群です.nが偶数のとき(n=2m),m個の2次元部分空間に分解でき,そのディンキン図形は
・
/
・−・−・・・−・
\
・
となります.この代数so(2m)はカルタンがDnと呼んだものです.
それに対して,n=2m+1のときのディンキン図形は
・−・−・・・=・
となり,この代数so(2m+1)はBnと呼ばれます.
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
[3]Sp(2n)
Aを任意の反対称n×n行列,Sを対称n×n行列,σをパウリ行列として
E(×)A,σi(×)S
の形をした2×2およびn×nエルミート行列のテンソル積(×)の形で与えられる2n×2n行列のなす群は,Sp(2n)のリー代数をなします.
Sp(2n)リー代数はカルタンがCnと呼んだもので,そのディンキン図形は
・−・−・・・=・
となります.
===================================
行列の場合,XとT^(-1)XTを同型といいますが,リー代数の同型とは交換子積の保存(交換子の行き先が行き先の交換子となっているもの)
f([X,Y])=[f(X),f(Y)]なる条件を満たすとき,同型であることをいいます.
たとえば,
J1=1/2[0,i] J2=1/2[0,−1] J3=1/2[i, 0]
[i,0] [1, 0] [0,−i]
とすると,J1,J2,J3はsu(2)の基底をなし,
[J1,J2]=J3
[J2,J3]=J1
[J3,J1]=J2
という交換関係を満たします.
一方,
L1 =[0,0,0] L2 =[0,0,1] L3 =[0,−1,0]
[0,0,−1] [0,0,0] [1,0,0]
[0,1,0] [−1,0,0] [0,0,0]
はo(3)の基底で,
[L1,L2]=L3
[L2,L3]=L1
[L3,L1]=L2
ですから同じ交換関係をみたします.
このことからsu(2)とo(3)は同型であることがわかります.(SU(2)とO(3)は集合としては同型ではありません.念のため・・・)
同型を考慮してまとめあげると,
sl(n+1)・・・An型単純リー代数(n≧1)
o(2n+1)・・・Bn型単純リー代数(n≧2)
sp(2n)・・・・Cn型単純リー代数(n≧3)
o(2n)・・・・・Dn型単純リー代数(n≧4)
となります.これらの代数が5つの特殊な代数E6,E7,E8,F4,G2を合わせてすべての単純リー群を構成しているのです.
===================================
【4】既約ルート系の分類
ルート系の分類は,それ自体大変面白いものらしいのですが,既約ルート系の同型類には,A型からG型までのアルファベットに,添字として階数をつけた名前が付いていて,E8型ルート系などと呼ぶ習慣になっています.
基本単体を鏡映も許しながら自分自身に重ねていく操作がルート系であり,それは,アメリカのキリングやフランスのカルタンによって成し遂げられた単純リー群の分類と関係しています.
それによれば,階数nの既約ルート系は,Ak(k≧1),Bk(k≧2),Ck(k≧3),Dk(k≧4),E6,E7,E8,F4,G2の型のいずれかであり,既約ルート系の分類の基づいて,単純リー群を分類すると9つの型があり,それらはA,B,C,Dと名づけられた4つの古典型とE6,E7,E8,F4,G2と名づけられた5つの例外型でした(カルタンの分類定理).
ルート系(リー型の単純群)はA型からG型まで7種類あるとしてよく,4つの古典群,5系列の例外群,さらにそのうちで対称性をもつA,D,E6,D4の4系列,疑似対称性をもつB2,G2,F4の3系列で16系列に細分することもできるでしょう.
・−・・・・・−・ (An:n≧2のとき位数2の自己同型がある)
・
/
・−・・・・・ (Dn:n≧4のとき位数2の自己同型がある)
\
・
3
/
1−2 (D4:位数3の自己同型がある)
\
4
4
|
1−2−3−5−6 (E6:位数2の自己同型がある)
1=2 (B2) 1≡2 (G2) 1−2=3−4 (F4)
===================================
階数1のルート系はA1の1種類に限られ既約です.また,階数2のルート系はA1×A1,A2,B2,G2の4種類に限られます.A2型,B2型,G2型のルート系は既約ですが,A1×A1型のルート系は既約ではありません.階数nの既約ルート系はAk(k≧1),Bk(k≧2),Ck(k≧3),Dk(k≧4),E6,E7,E8,F4,G2の型のいずれかなのです.
最後に,複素単純リー代数の階数と次元との関係を表にしておきます.
(1)Ak(k≧1) 同次特殊線形群,k(k+2)次元
(2)Bk(k≧2) 直交群,2k+1変数の2次形式,k(2k+1)次元
(3)Ck(k≧3) 斜交群,2k変数のパッフ形式,k(2k+1)次元
(4)Dk(k≧4) 直交群,2k変数の2次形式,k(2k-1)次元
(5)E6 78次元
(6)E7 133次元
(7)E8 248次元
(8)F4 52次元
(9)G2 14次元
===================================
[補]高次元の正多面体群
まず,3次元空間の回転群の有限部分群は,コーシーが示したように
(1)巡回群Cn
(2)正二面体群D2n
(3)正多面体群,すなわち
a)正四面体群(4次交代群:A4)
b)正八面体群(4次対称群:S4)
c)正二十面体群(5次交代群:A5)
に限られる.
そしてこのことは超幾何関数が代数関数になったり,初等関数になったり,特殊関数になったりを決定する条件と関係している.なぜならば,1次分数変換は複素数球面上で考えると1つの回転に対応していて,たとえば,数xを
(x−1)/(x+1)
に置き換えるには,北極と南極が赤道のところにくるように球を90°回転させればよい.
そして,写像関数が1価となるためには,有限な回転群である場合を調べれはよいことになるが,球面上の運動の有限群は5つの回転群(巡回群,正2面体群,正4面体群,正8面体群,正20面体群)=広義の正多面体群に限ることが知られているというわけである.このように回転群の話がまったく別の方面から現れることになにか「数学の神秘」を感じないだろうか.
===================================
正多面体は3,4,5次元以上でそれぞれ5種,6種,3種存在するが,双対正多面体や自己同型があるので,正多面体群としては3次元のときは3種,4次元のときは正5胞体群,正16胞体群,正24胞体群,正600胞体群の4種,5次元以上では正単体群と超立方体群の2種である.
星形正多面体は,n=3のとき4種あり,3次元の9種の正多面体(凸型5種+星形4種)を,
(1)三角四角型(S4,A4):3種
(2)五角型(A5):6種
と分類することもできるだろう.なお,星形正多面体はn=4のとき10種あるが,n≧5では存在しない.
高次元の正多面体群について,コクセターはn次元ユークリッド空間の反転によって生成される群の研究を進め,コクセター群とよばれる一連の群について詳しく研究した.詳細については
一松信「高次元の正多面体」日本評論社
をご覧頂きたいのであるが,n次元ユークリッド空間の変換群で,その基本領域が単体(正多胞体の基本単体)になるものの決定である.
正多面体群とリー群との関連では,n次元の正単体群はAn,超立方体群はBnまたはCn,3次元の正二十面体群はG3,4次元の正24胞体群はF4,4次元の正600胞体群はG4と関連している.
1≡2−3 (G3) 1≡2−3−4 (G4)
ここで,G3,G4はG2に1個または2個の節点をつないだグラフであり,単純リー群では許されない形である(拡張されたディンキン図形).また,例外群はDn,E6,E7,E8のいずれかの形になることが示されている.
ユークリッド空間の有限群(正多面体)または無限離散群(空間充填形)になるのは,4つの無限系列(An,Bn,Cn,Dn)と6つの例外的な場合(G3,F4,G4,E6,E7,E8)に限るのである.
===================================
[補]高次元の正多胞体とルート系
n次元空間において高度の対称性をもったベクトルの集合がルート系なのですが,n次元正単体とn次元立方体の対称群はそれぞれAn-1,Bn(Cn)で表されます.
ルート系では,ベクトルの間の角度は30°,45°,60°,90°またはその補角に限られるので,2次元の可能なルート系は
A2(正六角形:正三角形格子)
B2=C2(正方形)
G2(星形六角形:正6角形を2個合わせたもの)
しかありません.
また,このようにルート系のベクトルの末端を結んでできるn次元図形が正多胞体になるのは比較的少数です.他には
D4(正24胞体の3対性)
Cn(双対立方体)
F4(正24胞体を2個合わせたもの)
があげられます.
正24胞体は,すべての次元を通じて,単体以外の唯一の自己双対な正則胞体です.この24胞体の対称性を,鏡映で生成される既約な有限群(ルート系)との関係でみても興味深いものがあります.たとえば,正24胞体に含まれる正16胞体は互いに60°をなしますから,D4の3対性をもっているというわけです.
また,正24胞体は1つの例外型対称群F4をもつことが知られています.2個の正24胞体を中心を一致させて重ねて回転させます.これはちょうど平面上でダビデの星が2つの正六角形を30°ずらして重ねたものと似ているわけですが,この対称性がF4に相当します.正24胞体は単体以外の唯一の自己双対な正則胞体であるという事実がF4と関係しているのですが,この点もまた注目すべきものでしょう.
===================================
[補]幾何学と単純リー群の分類
単純リー群を分類するという問題はある意味では興味深い幾何学の可能性を決定することになります.キリングやカルタンの研究は面白い幾何学がどれだけできるかという設問に対する解答でもあり,大ざっぱにいえば,A型が複素ユニタリ幾何,B型とD型がそれぞれ奇数次元と偶数次元の実ユークリッド幾何,C型が4元数上の幾何学,5つの例外型は8元数上の幾何学に対応しています.線形代数はAkという特定のルート系の理論であり,ユークリッド空間やシンプレクティック空間の幾何に対応するのはBk,Ck,Dkの理論というわけです.
カルタンによりコンパクト単純リー群は,例外的なものを除き,A型,B型,C型,D型の4系列をなしていることが知られていますが,そのうちの2系列
B型 SO(2n−1)(n≧2)
D型 SO(2n) (n≧3)
は回転群で,B型とD型はそれぞれ奇数次元と偶数次元の実ユークリッド幾何に対応しています.なお,n=4が例外であることがこのことからもみてとれるでしょう.
===================================