正24胞体を,超立方体の上に「立方体錐」を重ねた形8個に分けたものではうまくRPで被覆できそうもありません.中央が正八面体なら4次元の正16胞体ですが,3次元の立方体ですからRPのみでは組み立てられません.この構成法は対称性に欠ける少しひねった構成法といえるでしょう.
今回のコラムでは,一松信先生がオーソドックスな正24胞体の構成をしてくれたので紹介します.
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【1】直角5胞体(right penta)と正8胞体・正16胞体
4次元直角5胞体の各頂点の座標を
(0,0,0,0)
(1,0,0,0)
(0,1,0,0)
(0,0,1,0)
(0,0,0,1)
とおき,RP(right penta)と呼ぶことにする.また,互いに直角に交わる頂点からの辺の長さ(この場合は1)をRPの辺の長さと呼ぶことにする.
このRP4!=24個の体積は1辺の長さ1の正8胞体と等しくなるから,RPの体積は1/24である.辺の長さを1としたRP2^4=16個で1辺の長さ√2の正16胞体(体積16/24=2/3)ができる.正8胞体の辺の長さを1として,ひとつおきの頂点を結べば1辺の長さ√2の正16胞体ができるので,これを16個のRPで組立て,その外側に(ひとつおきに)計8個のRPを埋めて,合計24個のRPで正8胞体を合成できる(体積は1).
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【2】正24胞体
前述の形では対称性に欠けるので正8,16,24胞体が同一のRPで組み立てられるのかどうかはよくわからない.しかし,大きさを不問にすれば可能であり,たとえば,1辺の長さ2の正24胞体を辺の長さ√2のRP192個(=8×24)で組み立てることができる(体積は(√2)^4/24×192=32=2×2^4).
それは胞をなす3次元の正八面体を3次元空間で辺の長さ√2のRT(right tetra:3次元のRP)8個に分解し,それを中心から射影すれば,4次元の中心から3次元胞の中心までの距離が√2で,ちょうど辺の長さ√2の4次元のRPができるので,全体で8×24=192個のRPで埋め尽くせることになる.
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【3】まとめ
1辺の長さ2の正24胞体が辺の長さ2のRP48個,あるいは辺の長さ1のRP768個で組み立てられるかどうかはよくわからない.また,辺の長さ√2のRP96個で正8胞体,RP64個で正16胞体が組み立てられるかどうかもよくわからない.多分,不可能であろう.
高次元の図形は直接眼に見えにくいので直観がきかず,早合点や思い違いをすることが多くある.それだけ十分慎重に検討しないといけないが,[1]+[2]より,
RP16個 → 正16胞体
RP24個 → 正8胞体
RP192個→ 正24胞体
となり「4次元正多胞体の元素数は≦4である」ことが証明されたことになる.
これで,4次元正多胞体すべてを少数の「素子」で合成しようという,秋山仁先生が数学セミナーの「エレガントな解答をもとむ」に出題された3次元正多面体の問題の4次元版は解決であろう.
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