2次元的にランダムに配列した石鹸の泡はいろいろなサイズの泡細胞からなっていますが,表面張力の要請から境界長を極小化しようとしますから,接合角度は120度となります(プラトー問題・最小シュタイナー木問題).
cosθ=−1/2,θ=120°
このことから,石鹸の泡は各頂点の次数がすべて3である平面図形と考えることができます.
また,互いに120°の角度で交わる石鹸膜の交線は
cosθ=−1/3,θ=109.471°
で接触します.正四面体の頂点から中心に向かう3枚の膜は互いに120°の角度をなし,中心に集まる4本の線は109.471°(マラルディの角)をなすのです.
このように120°と109.471°は石鹸膜が接触するときの基本的な角度ですが,正三角形ではcosθ=−1/2,正四面体ではcosθ=−1/3の右辺に現れる分母2,3がそれぞれ平面の次元の2,空間の次元の3と一致することは偶然ではありません.n次元のマラルディの角は
cosθ=−1/n
で与えられるのです.
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【1】n次元正単体の二面角
線分,三角形,四面体(三角錐)はそれぞれ最も簡単な1次元図形,2次元図形,3次元図形であるが,次元数nより1つ多い数の頂点によって作られる高次元図形を単体(シンプレックス)と呼ぶ.線分は一次元単体,三角形は二次元単体,三角錐は三次元単体とも呼ばれる所以である.
n次元正単体の頂点の座標を
V1(1,0,・・・,0)
V2(0,1,・・・,0)
・・・・・・・・・・・
Vn(0,0,・・・,1)
としよう.これらの頂点間距離は√2である.
これらの座標が与えられたとき,残りの1点の座標は
Vn+1(x,x,・・・,x)
とすることができる.他の頂点との距離は√2であるから,
(x−1)^2+(n−1)x^2=2
すなわち,
nx^2−2x−1=0
を満たさなければならないことより,
x={1−√(1+n)}/n
が得られる.
n+1個の頂点:
V1(1,0,・・・,0)
V2(0,1,・・・,0)
・・・・・・・・・・・
Vn(0,0,・・・,1)
Vn+1(x,x,・・・,x)
の中心座標(体心)は
P((x+1)/(n+1),・・・,(x+1)/(n+1))
底面
(1,0,・・・,0)
(0,1,・・・,0)
・・・・・・・・・・・
(0,0,・・・,1)
の重心(面心)は
(1/n,1/n,・・・,1/n)
それに隣接する面
(x,x,・・・,x)
(0,1,・・・,0)
・・・・・・・・・・・
(0,0,・・・,1)
の重心(面心)は
(x/n,(x+1)/n,・・・,(x+1)/n)
であるから,2つの連接する面心ベクトルは
(1/n−(x+1)/(n+1),1/n−(x+1)/(n+1),・・・,1/n−(x+1)/(n+1))
(x/n−(x+1)/(n+1),(x+1)/n−(x+1)/(n+1),・・・,(x+1)/n−(x+1)/(n+1))
より,面心間距離は
cosθ=−1/n
二面角はその補角であるから
cosδ=1/n
と計算される.n=2以外のときは4直角の整数分の1にならないが,これは正三角形による平面充填形(3,6)に他ならない.
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【2】n次元正単体の双対
[1]では二面角を計算したが,n次元正単体の双対を考えるともっと簡単に二面角を求めることができる.
重心から各頂点までの距離は一定だから
|PV1|=|PV2|=・・・=|PVn+1|
PV1=(1−(x+1)/(n+1),−(x+1)/(n+1),・・・,−(x+1)/(n+1))
PVn+1=(x−(x+1)/(n+1),x−(x+1)/(n+1),・・・,x−(x+1)/(n+1),x−(x+1)/(n+1))
|PVn+1|=|PV1|=|PV2|=(n/(n+1))^1/2
としても同じである.
cosθ=(PV1,PV2)/|PVn+1|^2=−1/n
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【3】発展問題
n=3の場合,正四面体の頂点から中心に向かう3枚の膜は互いに120°の角度をなした.それでは正n+1胞体の頂点から中心に向かうn枚の膜(胞)が互いになす角度は?という問題を考えてみる.
n+1個の頂点:
V1(1,0,・・・,0)
V2(0,1,・・・,0)
・・・・・・・・・・・
Vn(0,0,・・・,1)
Vn+1((x+1)/(n+1),・・・,(x+1)/(n+1))
の中心座標(体心)は
((x+n+2)/(n+1)^2,・・・,(x+n+2)/(n+1)^2)
底面に隣接する面
((x+1)/(n+1),(x+1)/(n+1),・・・,(x+1)/(n+1))
(0,1,・・・,0)
・・・・・・・・・・・
(0,0,・・・,1)
の重心(面心)は
V1((x+1)/n(n+1),(x+n+2)/n(n+1),・・・,(x+n+2)/n(n+1))
もうひとつの隣接面の重心(面心)は
V2((x+n+2)/n(n+1),(x+1)/n(n+1),・・・,(x+n+2)/n(n+1))
である.
ここで
(x+1)/n(n+1)=a,
(x+n+2)/n(n+1)=b
とおくと
V1(a,b,b。・・・,b)
V2(b,a,b,・・・,b)
両者に直交するベクトルを構成するため,(1,1,・・・1)上の点を
Q(y,y,・・・,y)
とおくと,
QV1(a−y,b−y,b−y,・・・,b−y)
QV2(b−y,a−y,b−y,・・・,b−y)
QV1⊥Q,QV2⊥Qより
(a−y)y+(n−1)(b−y)y=0
y=(a+(n−1)b)/n
|QV1|=|QV2|
|QV1|^2=(a−y)^2+(n−1)(b−y)^2
(QV1,QV2)=2(a−y)(b−y)+(n−2)(b−y)^2
これに(a−y)=−(n−1)(b−y)を代入すると
cosθ=(QV1,QV2)/|QV1|^2=−1/(n−1)
すなわち,n=3のときは120°,n=4のときは109.471°となることがわかる.
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