(その22)において,4次元正多胞体の元素数は4であると予想されることを述べた.
ところで,元素数の決定にあたって以前から引っかかっていたのが「境界多面体」の問題である.たとえば,4次元空間の正多胞体では「二胞角」の問題より≧2と下限が与えられるが,胞となる境界多面体は正5・16・600胞体では正4面体,正8胞体では立方体,正24胞体では正8面体,正120胞体では正12面体となっているからである.
境界多面体 境界面p 頂点に集まる面q 辺に集まる胞r
5胞体 正4面体 3 3 3
8胞体 立方体 4 3 3
16胞体 正4面体 3 3 4
24胞体 正8面体 3 4 3
120胞体 正12面体 5 3 3
600胞体 正4面体 3 3 5
二胞角についての独立性に加えて,境界多面体の二面角についての独立性を調べてみると,
二胞角 二面角 二辺角
5胞体 A C F
8胞体 B D F
16胞体 B C F
24胞体 B C F
120胞体 B E F
600胞体 A C F
となって4種類の組み合わせができる.
[注]正5胞体と正600胞体の不変量は等しいが,正5胞体と正600胞体が分解合同であるという意味ではなく,両者を合わせると正8胞体と分解合同になると解釈する.
n次元空間の正多胞体(n≧5)では
境界胞体 頂点 双対性 対応
(n+1)胞 n胞体 n+1 自己双対 正4面体・5胞体
2n胞体 (2n−2)胞体 2^n 2^n胞体 立方体・8胞体
2^n胞体 n胞体 2n 2n胞体 正8面体・16胞体
であるから
二胞角 二面角 ・・・ 二辺角
n−1次元 n−2次元 ・・・ 1次元
n+1胞体 A D ・・・ Z
2n胞体 B E ・・・ Z
2^n胞体 C D ・・・ Z
となって3種類の組み合わせができる.
逆に,3次元正多面体の場合は
二面角 二辺角
4面体 A E
6面体 B E
8面体 A E
12面体 C E
20胞体 D E
となって4種類の組み合わせができる.
任意の多角形は同じ面積の正方形と分解合同である(ボヤイ・ゲルビンの定理)を1次元デーン不変量に関する定理とみなすことにして,任意の次元において超立方体と分解合同であるかどうかを示す不変量を
n次元デーン不変量=f(n−1次元デーン不変量,n−2次元デーン不変量,・・・,1次元デーン不変量)
と定義すれば,すべての次元で正多胞体と元素数との辻褄が合い,
[予想]4次元正多胞体の元素数は4である.
は正しいことになる.
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[雑感]
この結果は3次元空間でなくとも,一般の次元の空間の多胞体領域の「二胞角」とその境界の「二面角」を統一することによって,これまで得られた3次元空間の元素定理に抵触しない統一的な見方ができることを意味している.実際に考えるべき二面角は4次元の場合だけがn−2次元までであって,他の次元ではn−1次元だけ(すなわち二胞角だけ)で十分である.ここに至って初めて,各次元での元素定理は統一的に理解されたといえるのである.
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