■デーン不変量と二面角の幾何学(その19)

 4次元正120胞体の600個の頂点の座標は

  (±2,±2,0,0),(±√5,±1,±1,±1),(±τ,±τ,±τ,±1/τ^2),(±τ^2,±1/τ,±1/τ,±1/τ)の置換と(±τ^2,±1/τ^2,±1,0),(±√5,±1/τ,±τ,0),(±2,±1,±τ,±1/τ)の偶置換で与えられる.

 正600胞体の頂点の座標は

  (±1,±1,±1,±1),(±2,0,0,0),(0,±2,0,0),(0,0,±2,0),(0,0,0,±2)の置換と(±τ,±1,±1/τ,0)の偶置換で与えられる.

 正120胞体の頂点をうまくとると,他の正5,8,16,24,600胞体をすべて作ることができるのであるが,どのようにすれば頂点が整合するのであろうか?

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【1】正120胞体の伸縮と回転

 4次元正120胞体の600個の頂点の座標

[0](±2,±2,0,0),(±√5,±1,±1,±1),(±τ,±τ,±τ,±1/τ^2),(±τ^2,±1/τ,±1/τ,±1/τ)の置換と(±τ^2,±1/τ^2,±1,0),(±√5,±1/τ,±τ,0),(±2,±1,±τ,±1/τ)

を1/√2倍して回転すると,

[1](±2,0,0,0)の置換

[2](±τ,±1,±1/τ,0)の置換

[3](±1,±1,±1,±1)の置換

[4](√5/2,√5/2,√5/2,1/2),(τ^2/2,τ^2/2,√5/2τ,1/2τ),(σ/2,1/2τ,1/2τ,1/2τ),(τ√5/2,τ/2,1/2τ^2,1/2τ^2)およびこれに偶数個の負号をつけた点の置換

[5](σ’/2,τ/2,τ/2,τ/2),(3/2,√5/2,1/2,1/2)およびこれに奇数個の負号をつけた点の置換にも表される.

  σ=(3√5+1)/2,σ’=(3√5−1)/2

 正600胞体の頂点の座標は

  (±1,±1,±1,±1),(±2,0,0,0),(0,±2,0,0),(0,0,±2,0),(0,0,0,±2)の置換と(±τ,±1,±1/τ,0)の偶置換で与えられる.[1]+[2]+[3]

 正24胞体の頂点の座標は

  (±1,±1,±1,±1),(±2,0,0,0),(0,±2,0,0),(0,0,±2,0),(0,0,0,±2)で与えられる.[1]+[3]

 正8胞体は16頂点(±1,±1,±1,±1),正16胞体は8頂点(±2,0,0,0),(0,±2,0,0),(0,0,±2,0)(0,0,0,±1)を結んでできる.[3],[1]

 したがって,正600胞体の120個の頂点をうまくとると正8,16,24胞体を作ることができる.

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 つぎに,4次元正単体の頂点の座標を

  (1,0,0,0)

  (0,1,0,0)

  (0,0,1,0)

  (0,0,0,1)

としよう.これらの頂点間距離は√2である.これらの座標が与えられたとき,残りの1点の座標は

  (x,x,x,x)

とすることができる.他の頂点との距離は√2であるから,

  (x−1)^2+3x^2=2

すなわち,

  4x^2−2x−1=0

を満たさなければならないことより,

  x={1−√5)}/4

が得られる.

 5個の頂点:

  V1(1,0,0,0)

  V2(0,1,0,0)

  V3(0,0,1,0)

  V4(0,0,0,1)

  V5(x,x,x,x)

の中心座標(体心)

  ((x+1)/5,・・・,(x+1)/5)

を原点に移動させてから伸縮すると,

  V1(−σ/2,1/2τ,1/2τ,1/2τ)

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  V5(1,1,1,1)

すなわち,正5胞体は(−σ/2,1/2τ,1/2τ,1/2τ),(1/2τ,−σ/2,1/2τ,1/2τ),(1/2τ,1/2τ,−σ/2,1/2τ),(1/2τ,1/2τ,1/2τ,−σ/2),(1,1,1,1)を結んでできる.[3]+[4]

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【2】まとめ

 以上のようにして正120胞体の頂点をうまくとると,他の正5,8,16,24,600胞体をすべて作ることができる.その意味で,正120胞体は4次元の「万有正多面体」である.3次元の正12面体の頂点からは正4面体と立方体を作ることができるが,正8面体と正20面体は面の中心を使わなければ作ることができないから,正120胞体ほど完全な万有正多面体ではないのである.

 なお,ここでは4次元正120胞体の600個の頂点の座標を[1]〜[5]で始めたが,[0]から始めるとどうなっていただろうか? 正24胞体の構成には他の方法もあり,頂点の座標が(±1,±1,0,0)を置換した24点,すなわち(±1,±1,0,0),(±1,0,±1,0),(±1,0,0,±1),(0,±1,±1,0),(0,±1,0,±1),(0,0,±1,±1)で与えられる(±1の個数は2つ)ことがわかるだけで,4次元の「万有正多面体」であるがどうかはまったくわからない.

 すなわち,(その14)(その15)で与えた頂点座標には2系列あり,系列1(正120胞体,正24胞体)と系列2(正600胞体,正16胞体,正8胞体,正5胞体)が混在していたことになる.

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