デュドニーのカンタベリー・パズルは正三角形をそれと等積の正方形に直す問題ですが,正五角形や正六角形を切り刻んで正方形に再構成する仕方も知られています.また,正六角形をいくつかの小片に切り離して並び替え正八角形をつくることや星形を正方形にかえることも可能です.図形の幾何学的特徴をうまく利用して,分割に使われるピース数を少なくすることが分割の面白さといえるでしょう.
任意の多角形は同じ面積の正方形と分解合同(ボヤイ・ゲルビンの定理)ですが,正n角形が平面充填図形であるのはn=3,4,6のときに限られます(プラトンの平面充填形).したがって,n=5の場合,正五角形の周が正方形の内部に移り,正方形の周は正五角形の内部の点だけから構成されるというリバーシブルな性質は保存されません.
今回のコラムでは
[参]Frederickson GN: Dissections: Plane and Fancy, Cambridge University Press, 1997
を参考にして,正六角形の切断と正方形への並べ替えについて考えてみますが,著作権の関係で図は転載できないので,ページ数を掲げることにします.
この場合はプラトンの平面充填形同士ですから,リバーシブルタイプも作ることができるのですが,ここでは平行(定幅)な帯を用いた設計法(Plain strip technique)を採用します.この設計法にも平面充填形(タイル張り)の理論が潜んでいます.
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【1】正六角形から正方形へ(11.2 Busschop's hexagon to square)
正六角形と正方形の面積は等しい.1辺の長さが2の正六角形の面積は
6/tan(π/6)=6√3
だから,同じ面積をもつ正方形の1辺の長さは(6√3)^1/2でなければならない.
A(1,0),B(2,√3),C(x1,√3)
とおくと,
(x1−1)^2+3=6√3
より,
x1=c+1,c=(6√3−3)^1/2=2.71888
また,AC⊥AD,AC=ADなる点をD(x2,y2),ADがy=√3と交わる点をE(x3,√3)とすると,
x2=1−√3,y2=c
x3=1−3/c=−0.103396
これらの点の座標がわかれば,辺の長さや頂角の計算は簡単である.
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【2】雑感
正六角形から正方形へのパズルは5つの断片に分割されることになる.また,菱形や正三角形に見えるピースは等辺多角形ではないこともわかるだろう.
[参]クロムウェル「多面体」,シュプリンガー・フェアラーク東京
には,Plain strip techniqueに基づく別解が掲載されている.それも5ピースパズルになっているが,ここで紹介したパズルのほうが計算はやさしいであろう.
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