■カンタベリー・パズルの木工製作(その13)

 正三角形が4つの断片に切り分けられていて,ハトメを中心として回転させると正三角形が正方形に変身するというパズルをご存知でしょうか? デュドニーはわずか4ピースにして1回のハトメ返しで正三角形から正方形に移すことに成功しました.正方形から正三角形の4つの各ピースは合同ではありませんが,最小の断片でもって効率よく分割することができます.

 デュドニーのカンタベリー・パズルでは,正三角形と正方形の面積は等しいことはもちろんですが,正三角形の周は正方形の内部に移り,正方形の周は正三角形の内部の点だけから構成されているリバーシブルな性質をもっています.このパズルには平面充填形(タイル張り)の理論が潜んでいることに気づけばその切り分け方を見いだすことができます.

 (その2)ではカンタベリー・パズルの設計を行いましたが,正八角形が5つの断片に切り分けられていて,ハトメを中心として回転させると正八角形が正方形に変身するというパズルはもっと簡単に設計することができます.正八角形から正方形の5つのピースのうち,4つは合同だからです.

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【1】正八角形の分割

 正八角形と正方形の面積は等しい.1辺の長さが2の正八角形の面積は

  8/tan(π/8)=8(1+√2)

だから,同じ面積をもつ正方形の1辺の長さは{8(1+√2)}^1/2でなければならない.

 正八角形の周は正方形の内部に移り,正方形の周は正八角形の内部の点だけから構成されるから,c=1+1/√2として,

  A(c,c),B(−c,c),C(x,y)

とおくと,

  AC⊥BC,AC+BC={8(1+√2)}^1/2

が必要条件になる.

 AC⊥BCよりy=c−√(c^2−x^2).これをAC+BC={8(1+√2)}^1/2に代入すると

  x^2=2d−(d/c)^2,d=2(1+√2)

  x=1.70335,y=1.59386

と求められる.点Cの座標がわかれば,辺の長さや頂角の計算は簡単である.

[補]単位円に内接する正n角形の面積は

  An=ncos(π/n)sin(π/n)

で与えられる.n=1000のとき,A1000=3.14157199・・・となり,πを必要な精度に近似することができる.

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【2】正八角形から正方形へ

 中川宏さんに木工製作していただきました.

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【3】雑感

 デュドニーのカンタベリー・パズルはプラトンの平面充填形に基づくものであるが,このパズルはアルキメデスの平面充填形(48^2:基本領域は正方形:正八角形=1:1)に基づいている.5つのピースのうち4つは合同であって,対称性の高さ,優美さをもつ分割パズルであろう.

  [参]Frederickson GN: Dissections: Plane and Fancy, Cambridge University Press, 1997

は2次元・3次元の分割パズルのコレクションであるが,今回紹介したパズルは(13.2 octagon to square)である.また,(13.4 dodecagon to square)にはにはアルキメデスの平面充填形(312^2:正三角形:正十二角形=2:1)に基づいて,正十二角形が6つの断片に切り分けられていて,ハトメを中心として回転させると正十二角形が正六角形に変身するというパズルも掲載されている.これも同様に計量することができる.

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