高次元空間では直観がほとんどきかず,座標で計算することが基本になる.4次元正多胞体の二面角もその例である.
正5胞体 → cosδ5=1/4,sinδa=√15/4 (75°ほど)
正8胞体 → cosδ8=0,sinδ8=1 (90°)
正16胞体 → cosδ16=−1/2,sinδ16=√3/2 (120°)
正24胞体 → cosδ24=−1/2,sinδ24=√3/2 (120°)
正120胞体 → cosδ120=−(√5+1)/4,sinδ120=(10−2√5)^1/2/4 (144°)
正600胞体 → cosδ600=−(3√5+1)/8,sinδ600=(√15−√3)/8 (165°ほど)
である.
4次元の特殊性として,正5胞体と正600胞体以外はすべて二面角が直角と有理比になっている.具体的にはそれらは120°と144°(4直角の1/3と2/5)である.したがって,それらから4次元の充填形ができそうである.このことから4次元正多胞体の元素数の下限は3であることを証明したつもりで安心していたのだが,祝杯をあげるのは早すぎたようである.
正5胞体(cosδ1=1/4,sinδ1=√15/4)と正600胞体の二面角(cosδ2=−(3√5+1)/8,sinδ1=(√15−√3)/8)を足すと240°になるからである.
cos(δ1+δ2)=cosδ1cosδ2−sinδ1sinδ2=−1/2
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【1】4次元の正多胞体元素定理
空間充填形ができるための必要条件は,二面角δが4直角の整数分の1であることであるが,分解合同の場合は有理比をなすどうかが問題となる.
δ2=4π/3−δ1
したがって,6種類の正多面体での分解合同(分解相似?)の関係式は,
N1δ5≠0 (mod π)
とより簡潔に書くことができる.
u=1/4+i√15/4については,
u−1/4=i√15/4
より,uは2次方程式2u^2−u+2=0の解であるから,
2u^2=u−2
2^2u^3=−3u−2
2^3u^4=−7u+6
2^m-1u^m=a1u+b1 (a1,b1は整数でa1≠0,b1≠0)
が成り立つと仮定すると,m+1のとき
2^mu^m+1=2a1u^2+2b1u=a1(u−2)+2b1u
=(a1+2b1)u−2a1
であるから
a1≠0,b1=0 mod 2
を示すことができる.すなわち,
Z=n^N1-1u^N1≠0
であるから,4元の正多胞体の元素数は≧2であることがいえる.
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【2】雑感
3次元では正四面体と正八面体の二面角が直角と有理比になる.4次元では正5胞体と正600胞体の二面角が直角と有理比になる.5次元以上の空間では,正n+1胞体(cosδ1=1/n,sinδ1=√(n^2−1)/n)と正2^n胞体の二面角(cosδ2=−(n−2)/n,sinδ1=(2√(n−1))/n)であるから,二面角はnとともに増加しそれぞて90°,180°に近づく.決して直角と有理比にならないが,二面角の和についても
cos(δ1+δ2)=cosδ1cosδ2−sinδ1sinδ2=−(n−2)/n^2−2(n−1)√(n+1)/n^2
であるから,そうはならない.二面角が直角と有理比になるのは,4次元の特殊性というよりも4次元までの特殊性といったほうがよいだろう.
ところで,私は自分にもわかる数学ネタを持ち前のサービス精神から他人にもわかるように解説記事を書いているアマチュアの数学愛好家にすぎないし,決して専門家ではないが,
[参]一松信「高次元の正多面体」日本評論社
には,専門家ではあっても主流を外れて忘れられた数学研究者(いまや名前さえも忘れられた数学者,生前にはあまり有名でなかった数学者)のささやかだが珠玉のような成果が予想外に多いことが紹介されている.たとえば,・・・
[1]群論がガロアの方程式論(1832年)に始まるという通説は正しいと思いますが,ガロアは決して無から突如として群の概念を創成したのではありません.ガロア群の発見が代数方程式論の面目を一新したのは事実ですが,群の考えそのものはすでに18世紀末から19世紀にかけて活用されています.ガロアの業績を過小評価するものではありませんが,底流をなす先駆者の成果を忘れて,天才が一夜にしてすべての歴史を書き換えたように思うのは,正しい科学史ではないと思います.
[2]「誰が初めて証明したか」についても,たとえば「Aの証明には厳密にいうと不備があり,Bがそれらの完全な証明を最終的にまとめた」というような歴史では不完全な証明をどれだけ認めるかによっては大変厄介な問題をはらんでいます.私個人としては完全でない証明をすべて無価値だとして,先駆者たちを抹消し,最後の証明者のみを取り上げることには必ずしも共鳴できかねる気がします.
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