(その14)では4次元正多胞体の座標構成を示し,正120胞体が4次元の「万有正多面体」となることを述べようとしたのであるが,座標を構成する仕方は他にもあり,その方がわかりやすいらしい.今回のコラムでは
[参]一松信「高次元の正多面体」日本評論社
に従った構成法を述べてみることにしたい.
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【1】4次元正多胞体の構成(補遺)
[1]正8胞体(4次元超立方体)は16頂点(±1,±1,±1,±1)を結んでできる.3次元の立方体では8個の頂点をひとつおきにとると正四面体ができるが,4次元立方体では正16胞体(4次元の正八面体)ができる.
正8胞体の中心からひとつおきの頂点を結んだベクトルをとる.4本のベクトル(1,1,1,1),(1,1,−1,−1),(1,−1,1−,1),(1,−1,−1,1)は互いに直交し,長さは2すなわちもとの正8胞体の1辺の長さに等しい.この4頂点と中心に対する4頂点の合計8頂点は互いに直交する4本の軸上にあるから,正16胞体をなすことになる.(なお,3次元では正四面体,4次元では正16胞体になったが,5次元以上の空間では正多面体にならず,1種の準正多面体になる.)
[2]正24胞体の頂点の座標は
(±1,±1,±1,±1)・・・正8胞体の頂点
(±2,0,0,0),(0,±2,0,0),(0,0,±2,0),(0,0,0,±2)・・・正16胞体の頂点
の24点である.3次元空間で立方体の8頂点(±1,±1,±1)と正八面体の6頂点(±2,0,0),(0,±2,0),(0,0,±2)を結ぶと菱形12面体ができるから,正24胞体は3次元の菱形12面体の4次元版と見ることができる.4次元ではその特殊性から本当に正多面体になるわけである.正24胞体の頂点をうまくとると正16胞体をなし.その代表的な軸は
(1,1,1,1),(1,1,1−1),(2,0,0,0)
で,これらは互いに60°をなす.
たとえば,ひとつの面(2,0,0,0),(1,1,1,1),(1,1,1,−1)の中心(4/3,2/3,2/3,0)に対し,この面を境とする胞(正八面体)の中心(1,1,0,0),(1,0,1,0)を結ぶ形となるから,正24胞体の二面角は120°になることがわかる.
正24胞体の構成には他の方法もあり,(その14)で述べた(±1,±1,0,0)を置換した24点から作るものである.これは正8胞体の2次元面24この中心をとったものである.
[3]3次元の正八面体の各辺を黄金分割した12点をとると,正20面体の頂点になるが,この操作を正24胞体の各胞(正八面体)に施すと120個の正四面体に囲まれた準正多面体ができる.正600胞体はこの図形から作ることができる.最初の正24胞体の頂点をτ倍して(±τ,±τ,0,0)の置換と(±τ,±1,±1/τ,0)の偶置換をとるのであるが,正600胞体の120個の頂点をうまくとると,正5,8,16,24胞体を作ることができる.
4次元正120胞体の構成は4次元正正多胞体のなかでも最も厄介であるが,600個の頂点の座標は
(±2,±2,0,0),(±√5,±1,±1,±1),(±τ,±τ,±τ,±1/τ^2),(±τ^2,±1/τ,±1/τ,±1/τ)の置換と(±τ^2,±1/τ^2,±1,0),(±√5,±1/τ,±τ,0),(±2,±1,±τ,±1/τ)の偶置換で与えられる.
これを√2倍して回転すると
(√5,√5,√5,1),(τ^2,τ^2,√5/τ,1/τ),((3√5+1)/2,1/τ,1/τ,1/τ),(τ√5,τ,1/τ^2,1/τ^2)およびこれに偶数個の負号をつけた点の置換,((3√5−1)/2,τ,τ,τ),(3,√5,1,1)およびこれに奇数個の負号をつけた点の置換,(±4,0,0,0),(±2τ,±2,±2/τ,0),(±2,±2,±2,±2)の置換で与えられる.
興味深いことに,正120胞体の頂点をうまくとると,他の正5,8,16,24,600胞体をすべて作ることができる.その意味で,正120胞体は4次元の「万有正多面体」である.3次元の正12面体の頂点からは正4面体と立方体を作ることができるが,正8面体と正20面体は面の中心を使わなければ作ることができないから,正120胞体ほど完全な万有正多面体ではないのである.
正120胞体の胞の中心は正600胞体の頂点をなし,それらを繋ぐ線分720本は正600胞体の辺と同じ配置である.ところが,正600胞体の辺はちょうど72個の平面上の正10角形をなし,その内角は144°,したがって正120胞体の二面角も144°となる.正120胞体の二面角が正確に144°であることはいささか意外であろう.
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