■n角の穴をあけるドリル(その53)

 フルヴィッツ・藤原曲線の次数は2n次式になると思われますが,今回のコラムではフルヴィッツ・藤原曲線の次数のみではなく,直交座標の式を求める方法について考えてみることにします.

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【1】フルヴィッツ・藤原曲線の回転

 正n角形の枠を(n−2)公転について1回自転させたときの包絡線の方程式は

  x=(n−1)acos(n−1)θ・cosθ+(asin(n−1)θ−R)・sinθ

  y=(n−1)acos(n−1)θ・sinθ−(asin(n−1)θ−R)・cosθ

で表されます.

 ところで,公転に対する自転の向きによって,ペリトロコイド曲線は

  x=Rcosθ+acos(n−1)θ

  y=−Rsinθ−asin(n−1)θ

または

  x=Rcos(−θ)+acos(n−1)θ

  y=−Rsin(−θ)−asin(n−1)θ

で表されます.いずれの場合でもθ=0,θ=πのときy=0となってx軸に関して対称であるため都合がよかったのですが,フルヴィッツ・藤原曲線ではθ=0のときx=n−1,y=−Rですから,そううまくはいきません.

 そこで,曲率が最大となる点を求めてみることにします.

  ρ(θ)=p(θ)+p”(θ)=−{(n−1)^2−1}asin(n−1)θ−R

  a=R/{(n−1)^2−1}

より,

  ρ(θ)=−R{1+sin(n−1)θ)

すなわち

  (n−1)θ=3π/2+2kπ   (k=0〜n−2)

のとき,曲率最大となります.

 このことからθをθ+3π/2(n−1)で置き換えることにします.

  cos(n−1)θ→sin(n−1)θ

  sin(n−1)θ→−cos(n−1)θ

これで

  x=(n−1)sin(n−1)θ・cos(θ+3π/2(n−1))−(cos(n−1)θ+(n−1)^2−1)・sin(θ+3π/2(n−1))

  y=(n−1)sin(n−1)θ・sin(θ+3π/2(n−1))+(cos(n−1)θ+(n−1)^2−1)・cos(θ+3π/2(n−1))

はx軸に関して対称となります.

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【2】フルヴィッツ・藤原曲線の代数曲線表示

 ここで,

  D=((n−1)sin(n−1)θ)^2+(cos(n−1)θ+(n−1)^2−1)^2

とおくと

  cos(θ+3π/2(n−1))={(n−1)sin(n−1)θ・x+(cos(n−1)θ+(n−1)^2−1)・y}/D

  sin(θ+3π/2(n−1))={(n−1)sin(n−1)θ・y−(cos(n−1)θ+(n−1)^2−1)・x}/D

  D0:x^2+y^2=D={1−(n−1)^2}cos^2(n−1)θ+2{(n−1)^2−1}cos(n−1)θ+{((n−1)^2−1)^2+(n−1)^2}

D0はcos(n−1)θの2次式で表されることになります.

 n=3の場合,

  x=2sin2θ・cos(θ+3π/4)−(cos2θ+3)・sin(θ+3π/4)

  y=2sin2θ・sin(θ+3π/4)+(cos2θ+3)・cos(θ+3π/4))

  D0:x^2+y^2=−3cos^22θ+6cos2θ+13

  cos2θ=(3−(48−3(x^2+y^2)^1/2)/3=α

  sin^22θ=1−α^2

  cos^2θ=(1+α)/2

  sin^2θ=(1−α)/2

  cos^2(θ+3π/4)=(1+sin2θ)/2

  sin^2(θ+3π/4)=(1−sin2θ)/2

  sin(2θ+3π/2)=−cos2θ=−α

  D2:x^2={2sin2θ・cos(θ+3π/4)−(cos2θ+3)・sin(θ+3π/4)}^2

より

  x^2=(2sin2θ)^2・cos^2(θ+3π/4)+(cos2θ+3)^2・sin^2(θ+3π/4)−4sin2θ(cos2θ+3)・cos(θ+3π/4)sin(θ+3π/4)

  x^2+1/2(3α^2−6α−13)=−1/2(α^2+6α−5)sin2θ

  3α^2−6α−13=−(x^2+y^2)

を代入して,両辺を2乗すると

  (x^2−1/2(x^2+y^2))^2=1/4(α^2+6α−5)^2sin^22θ=1/4(α^2+6α−5)^2(1−α^2)

さらに

  α^2=2α+(13−x^2−y^2)/3

より

  (x^2−1/2(x^2+y^2))^2=1/4(8α−(2+x^2+y^2)/3)^2(−2α−(10+x^2+y^2)/3)

 このあとは根号部分だけを右辺に移行して両辺を2乗,それを整理するとフルヴィッツ・藤原曲線(n=3)の代数曲線表示が得られることがわかる.6次式ではなく8次式が得られそうであるが,実際の直交座標の式を求めるのは次回の宿題としたい.

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