あらためてコラムを読み返してみると,
コラム「デルトイドの平行曲線(その2),(その3)」
コラム「n角の穴をあけるドリル(その36)、(その38)」
において,接線極座標から曲線の次数を導き出す過程に誤りがあった.(その50)ではそのことをお知らせしたのであるが,その誤りにかなり長い間気づかないでいたことになる.
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【1】n尖点ハイポサイクロイドの面積
その話にはいる前にパラメータ表示型の曲線について注意を喚起しておきたいことがあります.
n個の尖点をもつハイポサイクロイドは,パラメータθを用いて
x=(n−1)rcosθ+rcos(n−1)θ
y=(n−1)rsinθ−rsin(n−1)θ
と記述されます.θで微分すると
x’=−(n−1)rsinθ−(n−1)rsin(n−1)θ
y’=(n−1)rcosθ−(n−1)rcos(n−1)θ
ここで注意しなければならないことは,θは極座標(r,θ)のパラメータではないことです.そのため,
S=1/2∫r^2dθ r^2=x^2+y^2
として計算すると
S=(n^2−2n+2)・πr^2
となって正しい値が得られません.
計算方法はいくつか考えられるのですが,
S=∫ydx=∫yx’dθ
として計算するのが最も簡単なようです.その結果,ハイポサイクロイドの面積は
S=(n−1)(n−2)・πr^2
で表されることが計算されます.定円の半径をR(=nr)とした場合は,
S=(n−1)(n−2)/n^2・πR^2
となります.
デルトイドの場合はn=3,R=3rですから
S=2πr^2
となって回転円の面積の2倍に等しくなります.また,n→∞のとき
S→πR^2
となって定円の面積に近づきます.
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【2】接線極座標
卵形線上に原点をとり,曲線上の点P(x0,y0)における接線とx軸とのなす角度をθとすると,
接線方向の単位ベクトル : e1=(cosθ,sinθ)
それと直交する単位ベクトル: e2=(−sinθ,cosθ)
となります.
また,接線の方程式は
y−y0=tanθ(x−x0)
(x−x0)sinθ−(y−y0)cosθ=0
xsinθ−ycosθ=x0sinθ−y0cosθ=p(θ)
と表されます.このとき,右辺はベクトルPOと法線ベクトルの内積ですから,原点から接線までの距離は|p(θ)|で与えられます.
同様に,法線の方程式は
xcosθ+ysinθ=x0cos+y0sinθ=p’(θ)
原点から法線までの距離は|p’(θ)|で与えられます.
連立方程式
xsinθ−ycosθ=p(θ)
xcosθ+ysinθ=p’(θ)
を解くと
x=p(θ)sinθ+p’(θ)cosθ
y=−p(θ)cosθ+p’(θ)sinθ
が得られますが,これにより曲線(x,y)は(p,θ)でパラメトライズされることがわかります.
また,曲線の長さをs,曲率半径をρとすると
ds^2=dx^2+dy^2=(p+p”)dθ^2
より,
ρ=ds/dθ=p(θ)+p”(θ)
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【3】フルヴィッツ・藤原曲線
正n角形の枠を(n−2)公転について1回自転させたときの包絡線の方程式は
x=(n−1)acos(n−1)θ・cosθ+(asin(n−1)θ−R)・sinθ
y=−(n−1)acos(n−1)θ・sinθ+(asin(n−1)θ−R)・cosθ
で表されます.
包絡線の方程式
x=(n−1)acos(n−1)θ・cosθ+(asin(n−1)θ−R)・sinθ
y=(n−1)acos(n−1)θ・sinθ−(asin(n−1)θ−R)・cosθ
において
dx/dθ={−((n−1)^2+1)asin(n−1)θ−R}cosθ
dy/dθ={−((n−1)^2+1)asin(n−1)θ−R}sinθ
dy/dx=tanθ
より,θは接線極座標のパラメータであり,包絡線の方程式を
xsinθ−ycosθ=p(θ)
に代入すると,包絡線の接線極座標における方程式は
p(θ)=asin(n−1)θ−R
で与えられます.
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【4】デルトイドの平行曲線
デルトイドの平行曲線の方程式
x=2acosθ(1+cosθ)−a+rsin(θ/2)
y=−2asinθ(1−cosθ)−rcos(θ/2)
において,θは接線極座標のパラメータになっているでしょうか?
dx/dθ=−2asinθ−2asin2θ+r/2cos(θ/2)
dy/dθ=−2acosθ+2acos2θ+r/2sin(θ/2)したがって
dy/dx=tanθ
とはならず,デルトイドの平行曲線の方程式を
x=2acosθ(1+cosθ)−a+rsin(θ/2)
y=−2asinθ(1−cosθ)−rcos(θ/2)
を
xsinθ−ycosθ=p(θ)
に代入することはできないのです.
一般に,ハイポサイクロイド
ξ=a((n−1)cosθ+cos(n−1)θ)
η=a((n−1)sinθ−sin(n−1)θ)
において,
dε/dθ=−(n−1)a(sinθ+sin(n−1)θ)
dη/dθ=(n−1)a(cosθ−cos(n−1)θ)
(dε/dθ)^2+(dη/dθ)^2=(n−1)^2a^2(2−2cosnθ)=2(n−1)^2a^2(1−cosnθ)
ですから,平行曲線は
x=a((n−1)cosθ+cos(n−1)+b(cosθ−cos(n−1)θ)/(1−cosnθ)^1/2
y=a((n−1)sinθ−sin(n−1)θ)+b(sinθ+sin(n−1)θ)/(1−cosnθ)^1/2
のようになりますが,同様に
xsinθ−ycosθ=p(θ)
に代入することはできません.
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【5】ペリトロコイド曲線
公転に対する自転の向きによって,ペリトロコイド曲線は
x=Rcosθ+acos(n−1)θ
y=−Rsinθ−asin(n−1)θ
または
x=Rcos(−θ)+acos(n−1)θ
y=−Rsin(−θ)−asin(n−1)θ
で表されます.
x=Rcosθ+acos(n−1)θ
y=−Rsinθ−asin(n−1)θ
の場合だけ示しますが,
dx/dθ=−Rsinθ−(n−1)asin(n−1)θ
dy/dθ=−rcosθ+(n−1)acos(n−1)θ
ですから
xsinθ−ycosθ=p(θ)
に代入することはできません.
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【6】楕円の平行曲線
同様に,楕円の平行曲線の方程式
x=acosθ+cbcosθ/(a^2sin^2θ+b^2cos^2θ)^(1/2)
y=−bsinθ−casinθ/(a^2sin^2θ+b^2cos^2θ)^(1/2)
も
xsinθ−ycosθ=p(θ)
に代入することはできません.
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