■デルタ充填とジョンソン・ザルガラー充填(その14)

 正三角形のみによる凸多面体がデルタ多面体である.f=4,6,8,10,12,14,16,20の8種類あり,f=18はない.デルタ多面体による空間充填は正四面体と正八面体の組み合わせがよく知られているが,そのほかにはないのだろうか?

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【1】デルタ充填

 デルタ多面体の木工製作を終えた中川宏さんがこの問題を検討してくれた.デルタ充填は双子の正12面体を除くと,正三角錘,正四角錘,正五角錘,正三角柱に分解されるが,いろいろ試した結果,どの組み合わせもうまくいかないことがわかった.

 とはいってもすべての組み合わせについてしらみつぶしに検索したわけではないし,試行錯誤でそこまでやることは到底出来ない相談である.そこで,コンピュータで計算させることにした.

  正四面体 → cosδ4=1/3,δ4=70.5288

  正八面体 → cosδ8=−1/3,δ8=109.471

  正二十面体 → cosδ20=−√5/3,δ20=138.19

  △6面体 → δ4=70.5288

         cosδ=−7/9,δ=141.058=2δ4

  △10面体 → δ20=138.19

         cosδ=(−5+4√5)/15,δ=74.7548

  △14面体 → δ8=109.471

          cosδ=−√2/√3,δ=144.736

          cosδ=−√2/√3−1/6,δ=169.471

  △16面体 → δ8=109.471

         cosδ=−(√2−1)/√3,δ=103.836

         cosδ=−2(2√2−1)/7,δ=121.494

 △12面体の場合は3次方程式の解を必要とする.(この方程式とはx^2=zとおくと,z^4−21z^3+132z^2−320z+256=0であるが,  (z−4)(z^3−17z^2+64z−64)=0

となって3次方程式に帰着される.ゆえに△12面体は定規とコンパスによって作図可能ではない.)

 θ=1/3・arctan(24√237/881)

 z=1/3{17−√97(cosθ+√3sinθ)}=1.66196

 x=1.28917

より,△12面体の二面角は

 δ=96.1982

 δ=121.743

 δ=166.441

 これらすべての組み合わせについて

  Σnδ=360

を満たす解を探索すると(正四面体,△6面体)×(正八面体)の組み合わせしかないことがわかった.デルタ多面体による空間充填は本質的に正四面体と正八面体の組み合わせのほかにはないのである.

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【2】ダ・ヴィンチの星

 凸多面体に限らなければ正三角形面のみからなる多面体は無数にできる.たとえば,正多面体のすべての面に正三角錘,正四角錘,正五角錘を載せた多面体(ダ・ヴィンチの星)は凸多面体ではない.デルタ多多面体の面に正四面体をのせるだけでも新しいデルタ多面体が得られる.正八面体をねじれた柱のように積んでいくこともできるから,無限の可能性がでてくる.

 ダ・ヴィンチの星も加えたデルタ充填も存在しないだろうか?

  正四面体+正三角錐 → cosδ=−23/27,δ=211.586

  立方体+正四角錐 → cosδ=−2√2/3,δ=199.471

  正八面体+正三角錐 → cosδ=−1/3,δ=250.529

  正十二面体+正五角錐 → cosδ=−(8+3√5)/15,δ=191.32

  正二十体+正三角錐 → cosδ=(7√5−8√2)/27,δ=279.247

  Σnδ=360

を満たす解を探索すると(正四面体,△6面体)×(正八面体+正三角錐)の組み合わせしかないことがわかった.ダ・ヴィンチの星まで拡張しても,デルタ多面体による空間充填は本質的に正四面体と正八面体の組み合わせのほかにはないのである.

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