このシリーズでは,菱形十二面体の白銀菱形を黄金菱形で,菱形三十面体の黄金菱形を白銀菱形で置き換えることを行ってきたが,対角線で折り曲げる方向(mountain fold, valley fold)から
(1)黄金菱形を長軸で山折りにしたm24面体
(2)黄金菱形を短軸で谷折りにしたv24面体
(3)白銀菱形を長軸で谷折りにしたv60面体
(4)白銀菱形を短軸で山折りにしたm60面体
の計4種類ができた.
そして,おもしろいことに対角線の長軸方向で折り曲げられた2つの多面体(1)(3)において,m24面体の凸部はv60面体の凹部にはぴったりはまりこむことがわかった.
また,(その7)では
(1)黄金菱形を長軸で谷折りにしたv24面体
(2)黄金菱形を短軸で山折りにしたm24面体
(3)白銀菱形を長軸で山折りにしたm60面体
(4)白銀菱形を短軸で谷折りにしたv60面体
について検討した結果,
[1]黄金菱形を長軸で谷折りにしたv24面体
→存在せず(長軸で山折りする場合は2つの解が得られるが,谷折り解は存在しない).
[2]黄金菱形を短軸で山折りにしたm24面体
→存在せず(くぼんだ頂点同士が重なり合ってしまう).
[3]白銀菱形を長軸で山折りにしたm60面体
→存在する
[4]白銀菱形を短軸で谷折りにしたv60面体
→存在せず(短軸で山折りする場合は2つの解が得られるが,谷折り解は存在しない).
今回コラムでは,存在しうる解でこれまで検討しなかったものについて,計量を試みることにした.
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【1】第2種解の検討
[1]黄金菱形を長軸で山折りにしたm24面体(第2種)
長軸で山折りする場合は2つの解が得られるが,m24面体(第2種)の二面角は67.661°となった.
[3]白銀菱形を長軸で山折りにしたm60面体
m60面体(第2種)の二面角は67.661°となり,[1]と一致した.しかし,どちらも山折り同士なので[1]にはめ込むことはできない.
[4]白銀菱形を短軸で山折りにしたm60面体(第2種)
二面角はちょうど90°となった.おもしろい現象である.
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【2】二面角関数
立方体の二面角はπ/2(cosδ6=0,δ6=90°)ですが,他の正多面体については
正四面体 → cosδ4=1/3,δ4=70.5288°
正八面体 → cosδ8=−1/3,δ8=109.471°
正十二面体 → cosδ12=(1−φ^2)/(1+φ^2)=−√5/5,tanδ12=−2,δ12=116.565°
正二十面体 → cosδ20=(1−φ^4)/(1+φ^4)=−√5/3,sinδ20=2/3,δ20=138.19°
と計算されます.正四面体と正八面体の二面角は互いに補角をなすというわけです.
m24面体(第2種)の二面角関数は
tanδ8=−2√2
tanθ=(3/α^2−1)^1/2
として,
δ24=δ8−2θ
それに対して,m60面体の二面角関数は
tanδ20=−2/√5
tanθ=(3/β^2−1)^1/2
として,
δ60=δ20−2θ
で与えられます.
α=φ,β=√2のとき
tan(δ8−2θ)=tan(δ20−2θ)=2(√5+√2)/3
すなわち,二面角は67.661°となって,両者は完全に一致します.
また,グラフを描いてみると交点は存在しないことがわかります.このことは,第2種解が青銅比(あるいは白銅比)
ω=(7+√2−√5+√10)^1/2/2=1.52811
のように魅惑的な比をもっていないことを意味しています.対角線の長さの比が青銅比の山折り異性体の二面角は24面体では53.3015°,60面体では82.02°となります.
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