(その11)ではnが平方数でなければ√nは無理数であることの証明を述べたが,その補足をしておきたい.
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【1】nが平方数でなければ√nは無理数である
√2が無理数であることはギリシア数学のなかでも有名な定理で,ピタゴラスが背理法を用いて証明している.
(証)√2が2つの互いに素な整数の比p/qで表されるとすると,√2=p/qすなわちp^2=2q^2.したがって,pは偶数であり,p=2rという形に表すことができる.代入して2で割ると
2r^2=q^2
が得られるが,qが偶数となって互いに素という仮定に反する.
√3が無理数であることも同様に証明できる.
(証)p,qを3で割り切れない2つの整数で,√3=p/qすなわちp^2=3q^2と仮定する.pは3で割り切れるから,p=3rという形に表すことができる.代入して3で割ると
3r^2=q^2
が得られるが,qが3で割り切れることになり矛盾.
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2で割ることができない2つの整数の積は2で割ることができない.3で割ることができない2つの整数の積は3で割ることができない.この議論は5でも適用され,5で割ることができない2つの整数の積は5で割ることができない.しかし,6ではこの議論は適用できず,検証すべき場合分けが増えていく.それでもこの議論を続けていけば√5,√6,√7,・・・も無理数であることを確認できるが,一般的にnが平方数でなければ√nは無理数であることを証明するには不十分である.
そこで,以下のようにすれば,古代から知られ高校の教科書に載っているものとあまり変わりなく,しかし,異なった味あいがする証明になるだろう.
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√nが有理数であるとし,√n=p/qとおくと,
p^2=nq^2
が成り立つ.素因数分解p=p1p2・・・pr,q=q1q2・・・qs,n=n1^i1n2^i2・・・nk^ik (p1≦・・・≦pr,q1≦・・・≦qs,n1<・・・<nk)を代入すれば
p1^2p2^2・・・pr^2=n1^i1n2^i2・・・nk^ikq1^2q2^2・・・qs^2
nは平方数ではないから,i1,・・・,ikのうち少なくともひとつは奇数,そこでilが奇数であるとする.しかし,p1^2p2^2・・・pr^2とq1^2q2^2・・・qs^2に現れるnlの個数は0または偶数であるから,素因数分解の一意性に矛盾する.
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【2】素数は無限に存在する
素数が無限に存在することもギリシア数学の有名な定理で,ユークリッドが原論の中で背理法を用いて証明している.
(証)全部でn個の素数p1,p2,・・・,pnがあるとする.
N=p1p2・・・pn+1
を考えると,その素因数はp1,p2,・・・,pnとは異なる.このことはn個の素数以外に別の素数が存在しなければならないことを意味する.この証明はだれしもが容易に理解できるものであろう。
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オイラーは素数の逆数の和
1+1/p1+1/p2+・・・+1/pn
が限りなく増大することを示すことによって,素数が無限に存在することを証明した.調和級数Σ(1/n)が無限大に発散すること
1/1+1/2+1/3+・・・→∞
は容易に示すことができるが,それでは,素数の逆数の和
Σ(1/p)=1/2+1/3+1/5+1/7+1/11+・・・
は有限だろうか?
ここでは,不等式
1−1/n≧1/4^1/n
を利用して証明してみよう.
(証)
1−1/pi≧1/4^1/pi
1/(1−1/p1)(1−1/p2)・・・(1−1/pn)≦4^(1/pi+1/p2+・・・+1/pn)
調和級数1/1+1/2+1/3+・・・は,オイラー積表示するとΠ1/(1−1/p)と書けるから,
Π1/(1−1/p)→∞
しかし,素数の数が有限であるとすると,右辺4^(1/pi+1/p2+・・・+1/pn)は有限となり矛盾する.したがって,すべての素数の逆数の和は発散することが示される.
Σ(1/p)→∞
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1737年,オイラーは素数の逆数の和が無限大になることを見つけました.このことから,素数が無限個あることは簡単にわかります.また,調和級数Σ(1/n)は発散し,オイラー級数Σ(1/n^2)=π^2/6で収束しますから,素数は平方数ほどまばらには分布していないこともわかります.
さらに,logΠ(1−1/p)=Σlog(1−1/p).1/pが非常に小さいとき,マクローリン展開より
Σlog(1−1/p)〜−Σ(1/p)
このことを詳しく調べると,
Σ(1/p)〜log(logx) (pはp≦xの素数を動く,証明略)
などがわかってきます.log(logx)は1/(xlogx)の原始関数です.Σ(1/p)はxに近い整数について,その素因数の個数の近似値を与えるもので,ハーディーとラマヌジャンにより明らかにされています.
また,これらの式から
Σlog(1−1/p)〜−log(logx)
がでますが,両辺の指数をとると
Π(1−1/p)〜1/logx
が得られます.
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