昨年8月に開催された学生オリンピックでは,コラム「発泡スチロール正多面体」で紹介した発泡スチロールカッタを用いたプログラム学習が行われた.その際,正四面体を辺の中点で切頂することをイメージさせて,それがもとの立方体においてどの部分に対応するかを考えさせてから,立方体の8個の頂点の切頂により正八面体を切り出した.
ほとんどの生徒が正八面体の各面が立方体の頂点に対応するという事実に気づいたようだ.なかにはこの切り出し方が立方体に含まれる最大体積の正八面体であると推測した生徒がいたが,これで切り出される正八面体は立方体に含まれる最大体積の正八面体ではない.
この生徒の考えは誤りであるが,立方体から最大体積の正八面体を切り出すという興味深い問題を提起したものといえるだろう.
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【1】発泡スチロールカッタ用固定台の試作
そこでNPO科学協力学際センターでは,東北大学創造工学センター(通称・発明工房)の長内譲悦さん,國井誠さん,坂本桂さんに協力してもらって最大正八面体カット用の立体定規を試作した.
まず,立方体に内接する最大の正八面体の作り方を記すことにするが,立方体の頂点からでる3本の辺を3:1に内分する3点をとる.その頂点の対蹠頂点からでる3本の辺を3:1に内分する3点をとり,この6点を選べば立方体に内接する最大の正八面体が得られる.いささか意外な切り方であろう.
この正八面体の2面は立方体の切頂面になるが,切頂の深さは切頂八面体の場合と同じ3:1内分点で,その切削角度は
tanθ=√2 → θ=54.7357°(切頂面)
tanθ=√2/5 → θ=15.7932°(隣接面)
と計算される.
正多面体ユニット(中川宏さんと釜石高校の宮本次郎先生,太田待子さん,田中雅子さん)が開発した切頂用固定台方式を用いて,切削角度54.7357°で切頂面を削り取った後で,それを進行方向に対して15.7932°回転させて,切頂面と隣り合う薄い切頂切稜面を切削角度15.7932°で削り取る.
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【2】立方体に内接する最大の正八面体
この立体定規により,正八面体ではいまあるものよりも3倍以上大きなものが作れるし,そうなると最小(0.167)であった正八面体が最大である正20面体の0.515を超え,最大(0.5625)になるので効果甚大である.百聞は一見にしかず,同じ10センチ角の発泡スチロール立方体から2通りの方法で切り出した正八面体の大きさを比較した写真を掲げる.
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