■良い配置(その11)
【1】アダマール行列
アダマール行列Hnは+1か−1の要素をもつn×n行列で,その行と列は互いに直交している.各行または列のノルム(各要素の2乗和)はnであるから,
HnHn’=Hn’Hn=nIn
が成り立つ.
det|nIn|=n^n
より
det|Hn|=n^n/2
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【2】アダマールの定理
もっと一般に,各成分が1か−1のn×n行列の行列式はn^n/2以下である.
アダマールの定理の証明は,行列式の幾何学的意味を理解すれば簡単である.行列式の絶対値は,n個のそれぞれの長さ√nの行ベクトルが作るn次元平行六面体の体積だから,その値は(√n)^n=n^n/2以下である.等号はベクトル同士が全部直交するときに限る.
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【3】アダマール行列の直積
なお,A(m×n行列)とB(m’×n’行列)の直積(クロネッカー積)は,2つの行列の各要素を直接乗じて作る(mm’×nn’)行列である.直積では第1項の各要素をその項と第2項との積で置き換えることによって定義される.
両者の成分のすべての積を作り,各要素を(ci'j')=(aijbkl)において,
i’=i+m(k−1)
j’=j+n(l−1)
の式にしたがって並べると,
1≦i≦m,1≦j≦n,1≦k≦m’,1≦l≦n’
より,
1≦i’≦mm’,1≦j’≦nn’
また,正方行列X(n×n行列)とY(m×m行列)の直積の固有値は,Xのn個の固有値とYのm個の固有値の積である.テンソルの数学的定義はそれが何であるかよりも座標変換に対していかに振る舞うかによって規定するから,理解しにくいかもしれない.
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