[1]シンプソンのパラドックス
統計学では層別データが指示する仮説とそれらを合わせたときに指示する仮説が違っていることが違うという現象がみられることがある.この現象はシンプソンのパラドックスと呼ばれるが,このパラドックスが生ずるのは
a/b>c/d,p/q>r/s
だとしても
(a+p)/(b+q)>(c+r)/(d+s)
とは限らないことによっている.
a,b,c,d,q,r,sを一定にして,pの上限,下限を求めてみると,
qr/s<p<(c+r)(b+q)/(d+s)−a
となるが,a=1,b=2,c=3,d=7,q=5,r=1,s=6
とすればp=1,すなわち,
1/2>3/7,1/5>1/6
だが
(1+1)/(2+5)=2/7<4/13=(3+1)/(7+6)
となって,このような小集団であってもパラドックスを生じてしまうのである.
[参]ハヴィル「世界で最も奇妙な数学パズル」青土社
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[2]カントールのパラドックス
どんな有限区間も不可算であることは,長さの異なる2本の線分を1:1対応がつけられることから明らかになる.Rのすべての有限区間は不可算で,超越曲線
f(x)=tanπ(x−1/2)
と[0,1]のRとの1:1対応を使って確認できる.
このことから,たとえば,tanδ=−2のときtan(δ−π/2)は有理数であるから
f(x)=tanπ(δ/π−1/2)
を考えれば,δ/πは無理数→n≠0のときtannδ≠0となることがわかる.
[参]I. Niven "Numbers, Rational and Irrational", MAA
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[3]トリチェリのラッパのパラドックス
曲線y=1/xのx≧1の部分をx軸のまわりで回転させて得られるのがトリチェリのラッパである.ラッパの体積は有限であるが,表面積は無限大となる逆説的な立体として知られている.
V=π∫(1,∞)(1/x)^2dx=π[−1/x](1,∞)=π
S=∫(1,∞)1/x(1+1/x^4)^1/2dx>∫(1,∞)1/xdx=[logx](1,∞)=∞
であるが,ラッパ形でなく塔形にすると調和級数に帰着され,複雑な積分計算を回避することができる.
V=π∫(1,∞)(1/x)^2dx<πΣ1/n^2=π^3/6
S=∫(1,∞)1/x(1+1/x^4)^1/2dx>2πΣ1/n=∞
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