Fn=2^(2^n)+1
の形の素数をフェルマー素数といいます.F0=3,F1=5,F2=17,F3=257,F4=65537257は素数であることがわかります.
3,5,17が素数であることは明らかですが,たとえば,257については√257=16.03・・・ですから,これより小さい素数2,3,5,7,13が257を割らないことを確かめればよいことになりますし,65537257については,√65537257=256.0・・・ですから,今度は2,3,5,・・・,233,239,241,251と55個の素数で65537257を割らないことを確かめます.
フェルマーはこの型の数がすべて素数だと勘違いしていて必ず素数を与える式として考え出されたのですが,n=5であっけなく破綻してしまいました.
F5=2^(2^5)+1=4294967297=641×6700417
この間違いを発見したのはフェルマーから約100年後のオイラーです.彼は約数641をたまたまあてずっぽうでみつけたのでも,2,3,5,7,・・・と割っていって執念で見つけたのでもありません.オイラーはFnが合成数であるならば,それはあるkに対してk2^(n+2)+1であることを知っていて,F5の中の因数641=5・2^7+1を見つけたのです(1732年).今回のコラムではオイラーの方法を振り返ってみることにします.
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【1】オイラー独自の理論的裏付け
ここでは,
p|a^(2^n)+1 (p≠2の素数)
ならば
2^(n+1)|p−1
となることの証明をに与えておきます.
[1]2平方和定理(フェルマー・オイラーの定理)
(a^2+b^2)(c^2+d^2)=p^2+q^2,p=ac−bd,q=ad+bc
特別な素数である2を除外して,素数は4で割ると余りが1になるもの(5,13,17,29,37,41,・・・)と3になるもの(3,7,11,19,23,31,・・・)の2種類に分けられます.このうち,4n+1の形の素数は2つの整数の平方の和として表されます.たとえば,5=1^2+2^2,13=2^2+3^2,17=1^2+4^2,29=2^2+5^2,・・・.しかし,4n+3の形の素数は1つもこのようには表せないのです.
この定理はフェルマーの「直角三角形の基本定理」と呼ばれ,フェルマーは無限降下法でこれを証明しましたが,その証明は不十分で,100年後のオイラーによって完全な証明(一意性も込めた証明)がなされています.
[2]この定理を拡張する方向としては,ひとつには未知数の個数を増すこと,もうひとつには指数を大きくすることです.後者の方向に押し進めていくとkousyanohoukouniosisusumeteikuto
(1)a^2+b^2の奇約数はつねに4n+1の形である
(2)a^4+b^4の奇約数はつねに8n+1の形である
(3)a^8+b^8の奇約数はつねに16n+1の形である
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(4)a^2^(2^m)+b^2^(2^m)の奇約数はつねに2^(m+1)n+1の形である
フェルマー数はFn=2^(2^n)+1という形の数ですが,a=2,b=1とおくと
(5)フェルマー数2^(2^m)+1の奇約数はつねに2^(m+1)n+1の形である
という言明に到達します.m=5の場合,約数は64n+1という形でしかあり得ないことになります.
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【2】オイラーとフェルマー素数
[1]を認めると
p|F5ならば2^6|p−1
すなわち,p=1+k・2^6の形でなければならないことがわかります.kに1〜10まで入れると
k 1+k・2^6 素数
1 65 ×
2 129 ×
3 193 ○
4 257 ○
5 321 ×
6 385 ×
7 449 ○
8 513 ×
9 577 ○
10 641 ○
ここで得られた素数193,257,449,577,641の中から,F5=4294967297を割るものを探すと641が最初のものであることがわかります.このことから
F5=4294967297=641×6700417
と分解されF5が素数でないことが証明されます(1732年).
ついでながら,6700417が素数であることは次のようにしてわかります.
p|6700417 → p|F5 → p=1(mod64)
したがって,p=1(mod64)なる素数で,√6700417=2588.5・・・より小さいものが,どれも6700417を割らないことをみればよいことになります.このような素数は193,257,・・・,1601,2113の11個あります.
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【3】ランドリーとフェルマー素数
1880年,ランドリーは(82才という高齢にもかかわらず)
F6=274177×67280421310721
となることを示しました.
オイラーの場合と同様に,kに1〜20まで入れると
k 1+k・2^7 素数
1 129 ×
2 257 ○
3 385 ×
4 513 ×
5 641 ○
6 769 ○
7 897 ×
8 1025 ×
9 1153 ○
10 1281 ×
11 1409 ○
12 1537 ×
13 1665 ×
14 1793 ×
15 1921 ×
16 2049 ×
17 2177 ×
18 2305 ×
19 2433 ×
20 2561 ×
となります.
素数の割合は次第に小さくなりますが,
274177=2142・2^7+1 (k=2142)
までこのような作業を続けることは容易ではありませんし,素因数274177が決して直観でわかるものではないことも理解されます.
逆に
p|67280421310721 → p|F6 → p=1(mod128)
より,p=1(mod128)なる素数で,√67280421310721より小さいものが,どれも67280421310721を割らないことをみてもよいのでしょうが,このような戦略をとったところで意味のないものになってしまうのがオチでしょう.
ランドリーがオイラーの1732年にやった方法を踏襲したとはとても思えないのですが,どうやってやったのかまったく予想がつきません.それで,ランドリーがとった戦略がいかなるものか調べてみたのですが,1880年に素因数が判明と記載されているだけで方法までは載っておらず,結局,わからずじまいでした.これについてご存知の方はぜひ教えて下さい.
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[補]フェルマー数
フェルマー数(2^(2^n)+1)は簡単な漸化式
Fn=(Fn-1−1)^2+1
を満たしています.Fn-1^2はほぼFnと等しくなるというわけです.
また,この式から
Fn−2=Fn-1(Fn-1−1)=・・・=F0F1・・・Fn-1
言い換えれば,Fn−2はそれより小さいすべてのフェルマー数で割り切れることがわかります.
したがって,(Fn,Fi)=1がすべてのi(0≦i≦n−1)にについて成り立ちます.このことは任意にi≠jをとったとき,(Fi,Fj)=1と意味するのですが,このことから数列{Fn}を用いて,素数が無限にあることを示すことができます.
(証明)
すべてのFiの素因数を1つずつとりpiと呼べばpはすべて異なるから,素数は無限にあることがわかる.
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