プラトン立体とアルキメデス立体による空間充填を分類してみよう.
[1]プラトン立体のみによるもの・・・立方体,正四面体+正八面体
[2]アルキメデス立体のみによるもの・・・切頂八面体,
[3]プラトン立体とアルキメデス立体の組み合わせによるもの・・・切頂四面体+正四面体,切頂立方体+正八面体,切頂八面体+切頂立方八面体+立方体,菱形立方八面体+立方八面体+立方体
[4]アルキメデス立体とアルキメデス角柱によるもの
[5]アルキメデス角柱のみによるもの
正三角形のみによる凸多面体がデルタ多面体である.f=4,6,8,10,12,14,16,20の8種類あり,f=18はない.デルタ多面体による空間充填は正四面体と正八面体の組み合わせがよく知られているが,そのほかにはないのだろうか?
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【1】デルタ充填
デルタ多面体の木工製作を終えた中川宏さんがこの問題を検討してくれた.デルタ充填は双子の正12面体を除くと,正三角錘,正四角錘,正五角錘,正三角柱に分解されるが,いろいろ試した結果,どの組み合わせもうまくいかないことがわかった.
凸多面体に限らなければ正三角形面のみからなる多面体は無数にできる.たとえば,正多面体のすべての面に正三角錘,正四角錘,正五角錘を載せた多面体(ダ・ヴィンチの星)は凸多面体ではない.デルタ多多面体の面に正四面体をのせるだけでも新しいデルタ多面体が得られる.正八面体をねじれた柱のように積んでいくこともできるから,無限の可能性がでてくる.
ダ・ヴィンチの星などのデルタ多面体も加えたデルタ充填も存在しないだろうか?
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【2】ジョンソン・ザルガラー充填
デルタ多面体に対して,正方形面のみによる凸多面体は立方体,正五角形面のみによる凸多面体は正十二面体しかない.正六角形面のみによる凸多面体はもはや存在しない.しかし,正多角形面のみからなる多面体はプラトン立体,アルキメデス立体,アルキメデスの角柱と反角柱を除いて92種類あることをジョンソンとザルガラーは報告している(ミラーの多面体とデルタ多面体のうち,正多面体以外のものも含まれる).
デルタ充填は発見できながったが,つい最近,中川宏さんはジョンソン・ザルガラー多面体N91が加わった空間充填を発見した.N91は重月形重回転体として知られており,菱形12面体と同じ2回回転対称性をもっている.これはこれでなかなか趣きのある多面体である.ジョンソン・ザルガラー多面体のなかで一番美しいといってよいかもしれない.
どことなくβ14面体に似ているということで,中川さんが積み木をしてみたところ,N91の正三角形面を合わせるように繋いでいくと,立方体と正十二面体の隙間が現れる.すなわち,N91・立方体・正十二面体の3種類の立体で空間充填することが可能であることがわかった.新発見であると思われるが,中川さんの遊びの中で予想外のことが起こったのである.
平面では正五角形の配列による隙間を正10角形や菱形・星形5角形で埋め尽くすことができる.デューラー・ケプラー・ペンローズはそのような正五角形の連結図(デューラー・パターン,ケプラー・パターン,ペンローズ・パターン)を残しているが,中川さんは正方形と正五角形と10角形のパターンを考案した(中川パターン).
中川パターンでは,すべての正五角形が3つの正方形と隣り合い,すべての正方形が2つの正五角形と隣り合い,すべての10角形が6枚の正五角形と6枚の正方形に囲まれている.それに相当する空間版が正十二面体同士の隙間をN91と立方体で充填することだと考えられるのである.
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