コラム「パズルワールド散策(その9)」では,
(Q)5つの合同三角形に分割できる三角形は何か?
(Q)5つの相似三角形に分割できる三角形は何か?
という三角形分割の問題を取り上げた.今回のコラムでは,鈍角三角形の鋭角三角形分割の問題を取り上げてみたい.
鈍角三角形を最小個数の鋭角三角形に分割するにはどうしたらよいのだろうか.まずは復習から・・・
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【1】三角形分割
任意の三角形の3辺の中点を結ぶと,もとの三角形は合同な4つの三角形に分割される.新たに生じた三角形はもとの三角形と相似(相似比1:2)である.このように任意の三角形は自分自身と相似な4個の三角形に分けることができる.辺の長さが1:2:√5の直角三角形は同形4つだけでなく,5つにも分割できる特殊な三角形である.
新たに生じる三角形同士は合同である必要はないとして,n個の自分自身と相似な三角形に分割する問題は,n=4またはn≧6ならば可能であることが知られている.n=2,n=3の場合は直角三角形のみがそのように分割可能である.直角の頂点から斜辺に垂線を下ろせばよい.
(A)n=5の場合,直角三角形は自分自身と相似な5個の三角形に分割できるが,それ以外に内角30°,30°,120°の二等辺三角形(1:1:√3)が可能である.
30°,30°,120°の角をもつ三角形は,正三角形格子(3,6)の各面を3個の合同な三角形に分解することによってできるモザイク模様である.「麻の葉」文様と呼ばれるくり返し文様であり,日本では古くから装飾工芸品や寄木細工のデザインなどとして用いられているから,ご存じの方も多いと思う.
自分自身と相似な5個の三角形に分割するには,内心で3等分した正三角形の2辺に相似な2等辺鈍角三角形をつける.5つの相似三角形に分割できる三角形はこの2種類のみであることがウシスキンとワイメントにより証明されている.
[Q]正三角形を3つの相似な図形に分割せよ.ただし,どの2つの図形も互いに合同ではないとする.
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【2】鈍角三角形の鋭角三角形分割
鋭角三角形とは3つの角がすべて鋭角であって,直角三角形は鋭角三角形でも鈍角三角形でもない.この問題は優れた数学者でさえ,しばしば誤った結論を導いてしまうことで知られている.
[1]∠A>90°,∠B>∠A−90°,∠C>∠A−90°すなわち90°<∠A<135°のとき
与えられた三角形の内心Iを中心として,頂点Aを通る円を描き,その円と三角形の辺との交点を内心XIと結ぶと,7個の鋭角三角形に分割される.
[2]∠A≧135°のとき
AからBCに向かって二等辺鋭角三角形ABDを作るように線を引くと,8個の鋭角三角形に分割される.
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二等辺三角形,四角形,正五角形を鋭角三角形だけで分割するとき,最小何個の三角形で分割できるだろうか? 正方形の場合,9個の鋭角三角形で分割されるが,8個に分割する方法もあるという.現れる角度のうちいくつかはほとんど直角になるが,ただし,それが最小かどうかはわからない.
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