■指数的減衰と代数的減衰(その2)
指数的減衰はどんな代数的減衰よりも速く0に近づく.たとえば,x→∞のとき,裾の重みを比較してみると
1/(1+x^2)>exp(−x)>exp(−x^2)→0
関数f(x)=1/(1+x^2)の定義域は(−∞,∞),値域は(0,1]である.
ここで,変数を実数から複素数に拡張してみると,定義域はすべての複素数からz=±iを除いたもの,値域はすべての複素数に拡がる.
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[1]ピカールの小定理
定数でない関数の定義域が複素平面全体であって,すべての点で微分可能であるならば,値域は複素平面全体から高々1点を除いたものになる.
たとえば,exp(z)の値域は複素平面全体から0を除いたものになる.
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関数f(z)=sinz/zはz=0では定義されないが,z→0のとき,f(z)→1.このような特異点を除去可能特異点と呼ぶ.
関数f(z)=1/zはz=0では定義されないが,z→0のとき,f(z)は収束しない.このような特異点を1位の極と呼ぶ.一般に(z−z0)^mf(z)が定義されるか除去可能特異点のとき,m位の極と呼ぶ.
極にもなりえないほど強い特異点を真性特異点と呼ぶ.たとえば,exp(1/z)におけるz=0はその1例である.
[2]ピカールの大定理
z=z0を真性特異点とする.z0を中心とする穴のあいた円板を定義域とすると,値域は複素平面全体から高々1点を除いたものになる.
たとえば,exp(1/z)の場合,円板をいくら小さくしたとしても,0だけは値域に含まれないが,それ以外の複素数はどても値域に含まれるのである.
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[まとめ]ピカールの定理
zが正則関数f(z)の真性特異点であれば,円環0<|z|<εのfによる像は,高々1点を除いた複素平面全体になる.
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