(その4)では半ばあてずっぽうで多面体の頂点の位置を推測したが,大失敗に終わった.しかし,金原博昭さんから送られてきた紙模型を調べても,新たな固定点(不動点)は見つからない.そこで,固定点を見つけることをあきらめて,これまでの計算過程を振り返ってみることにした.
菱形多面体の黄金化・白銀化は1パラメータ問題,凧形多面体の黄金化・白銀化は2パラメータ問題に帰着された.このことからも5角多面体の黄金化・白銀化は3パラメータ問題に帰着されると思われるが,もう一つの固定点が見つからず,仕方なしにそれを2パラメータ問題として解こうとしたのが失敗の原因であった.
今回の検討で5角多面体の場合の方程式のたて方が判明した.しかしながら,それを解くためには方程式を数値的に解きつつ3元連立2次方程式(あるいは4元連立2次方程式)にかけるというやり方を強いられることになり,この方法は膨大な計算量を必要とすることがわかった.このような特殊な問題に対しては,関数の描画や方程式の数値解法など多くの数値計算手法やプログラミングの知識が要求され,また,多くの時間と労力が必要になる.3パラメータ問題を解くという方針がたったからといって,直ちに計算可能とはならないのである.
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【1】3元2次連立方程式
3元1次連立方程式
a1x+b1y+c1z=d1
a2x+b2y+c2z=d2
a3x+b3y+c3z=d3
の場合,その解(x,y,z)をa1,a2,a3,b1,b2,b3,c1,c2,c3,d1,d2,d3で表すことは容易である.
それに対して,3元2次連立方程式では
(x−a1)^2+(y−b1)^2+(z−c1)^2=d1
(x−a2)^2+(y−b2)^2+(z−c2)^2=d2
(x−a3)^2+(y−b3)^2+(z−c3)^2=d3
のような簡単なケースであっても式のサイズは2メガとなった.これでは出力が大きすぎる.もし出力したならば言葉が一切入らない数式が数百ページ,数千ページにも及んだであろう.4元2次連立方程式ではどれくらいの出力となったのだろうとも思う.
どのようなプログラミング言語を用いても連立3元2次方程式(あるいは連立4元2次方程式)の解を求める計算は無理と思われたので,達人・阪本ひろむ氏にMathematicaによる数式処理の援用をお願いすることになった.
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【2】検討すべきいくつかの点
第1パラメータは一意に決めることができるが,第2パラメータは2次方程式の解となり2通り得られる.さらに第3パラメータは3元2次連立方程式の2実解として得られることになる.とくに5角24面体の黄金化では想定した近傍における極値は2カ所あり,これらの組み合わせの中から最適解を選択しなければならない.
阪本ひろむ氏に求めてもらった連立3元2次方程式の解と回転行列をもとに必要な頂点座標を計算した.頂点の座標は
黄金化5角24面体 白銀化5角60面体
A(0,0,1.38298) A(0,.529682,.857043)
B(.18246,.622138,.844437) B(-.0607624,.101426,.754406)
C(.590315,.590315,.590315) C(.0307624,-.101426,.959693)
D(.844437,.182459,.622243) D(.355643,0,.931085)
E(.622138,-.182459,.844437) E(.276371,.234679,.672051)
F(.590316,-.590315,.590315) F(.580678,.295006,.714685)
で与えられる.
二面角は
黄金化5角24面体の二面角=173.296, 158.688 (146.873)
白銀化5角60面体の二面角=117.93, 112.921 (85.1833)
と計算された.
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【3】雑感
5角24面体の黄金化と5角60面体の白銀化問題を再検討してみたところ,方程式の立て方に誤りが見つかった.しかもその誤りに長い間気づかないでいた・・・.金原さんには長い間ご迷惑をおかけしてしまった.
これにて一件落着,やれやれといきたいところであるが,まだ計算値と実測値の間に大きなズレがあるようである.どうやらこの問題は泥沼(アリ地獄?)にはまってしまったらしい.
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