(その5)では
z^m=az+b
において,a=0ならば線形従属,b=0であっても線形従属であるから,
a≠0,b≠0
とした.これは直観的な証明といえるだろう.Qの2次拡大体を用いても矛盾を引き出すことはできるが,今回のコラムではより初等整数論的な証明を提供したい.
正四面体 → cosδ4=1/3,sinδ4=√8/3
立方体 → cosδ6=0,sinδ6=1
正八面体 → cosδ8=−1/3,sinδ8=√8/3
正十二面体 → cosδ12=−√5/5,sinδ12=√20/5
正二十面体 → cosδ20=−√5/3,sinδ20=2/3
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【1】正四面体の場合
[Q]角δがtanδ=2√2を満たすならば,δはπの有理数倍ではない.
[A]もしδがπの有理数倍ならば,あるnに対しnδがπの整数倍となって,tannδ=0または∞となる.そこで,すべての整数nに対し,tannδ≠0,∞であることを示す.
加法公式
tan(n+1)δ=(tanδ+tannδ)/(1−tanδtannδ)
より,
tanδ=2√2
tan2δ=−4√2/7
tan3δ=10√2/23
tan4δ=−56√2/17
tannδ=a√2/b
ならば
tan(n+1)δ=(a+2b)√2/(b−4a)
帰納的にtannδはすべてのnに対して√2の有理数倍(=a√2/b)であることがわかる.
この分数の(a,b)=(2,1)から出発して,(分子,分母)=(a+2b,b−4a)を(mod 3)でみると
(2,1)
(4,−7)=(1,2)
(−10,−23)=(2,1)
(−56,17)=(1,2)
の2ステップの繰り返しになることがわかる.したがって,a,bのどちらも0にはなり得ず,tannδ≠0,∞となる.
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ところで,この証明には(mod 3)が現れた.あまりにも唐突すぎて,この意味をわかるひとはたとえいたとしても少ないと思われる.
Z4=cosδ+isinδ=1/3+i√8/3
z−1/3=i√8/3
より,Z4は2次方程式3z^2−2z+3=0の解であるからというのがその理由である.
[参]Hartshorne "Geometry: Euclid and Beyond", Springer-Verlag
あるいは(その5)お読みいただき洞察してほしい.
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【2】正八面体の場合
[Q]角δがtanδ=−2√2を満たすならば,δはπの有理数倍ではない.
[A]
tanδ=−2√2
tan2δ=4√2/7
tan3δ=−10√2/23
tan4δ=56√2/17
tannδ=a√2/b
ならば
tan(n+1)δ=(a−2b)√2/(b+4a)
Z8=cosδ+isinδ=−1/3+i√8/3
z+1/3=i√8/3
より,Z8は2次方程式3z^2+2z+3=0の解である.
そこで,この分数の(a,b)=(−2,1)から出発して,(分子,分母)=(a−2b,b+4a)を(mod 3)でみると
(−2,1)=(1,1)
(−4,−7)=(2,2)
(10,−23)=(1,1)
(56,17)=(2,2)
の2ステップの繰り返しになることがわかる.したがって,a,bのどちらも0にはなり得ず,tannδ≠0,∞となる.
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【3】正十二面体の場合
[Q]角δがtanδ=−2を満たすならば,δはπの有理数倍ではない.
[A]
tanδ=−2
tan2δ=4/3
tan3δ=−2/11
tan4δ=−24/7
tan5δ=−38/41
tannδ=a/b
ならば
tan(n+1)δ=(a−2b)/(2a+2b)
Z12=−√5/5+√20/5i
z+√5/5=−i√20/5
より,Z12は2次方程式5z^2+2√5z+5=0の解である.
そこで,この分数の(a,b)=(−2,1)から出発して,(分子,分母)=(a−2b,2a+b)を(mod 5)でみると
(−2,1)=(3,1)
(−4,−3)=(1,2)
(2,−11)=(2,4)
(24,−7)=(1,3)
(38,−41)=(3,1)
の4ステップの繰り返しになることがわかる.したがって,a,bのどちらも0にはなり得ず,tannδ≠0,∞となる.
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【4】正二十面体の場合
[Q]角δがtanδ=−2√5/5を満たすならば,δはπの有理数倍ではない.
[A]
tanδ=−2√5/5
tan2δ=−4√5
tan3δ=22√5/35
tan4δ=8√5/79
tannδ=a√5/b
ならば
tan(n+1)δ=(5a−2b)√5/(10a+5b)
Z20=−√5/3+2/3i
z+√5/3=−i2/3
より,Z20は2次方程式3z^2+2√5z+3=0の解である.
そこで,この分数の(a,b)=(−2,5)から出発して,(分子,分母)=(5a−2b,10a+5b)を(mod 3)でみると
(−2,5)=(1,2)
(−20,5)=(1,2)
(−110,−175)=(1,2)
(−200,−1975)=(1,2)
の繰り返しになることがわかる.したがって,a,bのどちらも0にはなり得ず,tannδ≠0,∞となる.
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