■デーン不変量と二面角の幾何学(その7)

 (その5)では

  z^m=az+b

において,a=0ならば線形従属,b=0であっても線形従属であるから,

  a≠0,b≠0

とした.これは直観的な証明といえるだろう.Qの2次拡大体を用いても矛盾を引き出すことはできるが,今回のコラムではより初等整数論的な証明を提供したい.

  正四面体 → cosδ4=1/3,sinδ4=√8/3

  立方体 → cosδ6=0,sinδ6=1

  正八面体 → cosδ8=−1/3,sinδ8=√8/3

  正十二面体 → cosδ12=−√5/5,sinδ12=√20/5

  正二十面体 → cosδ20=−√5/3,sinδ20=2/3

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【1】正四面体の場合

[Q]角δがtanδ=2√2を満たすならば,δはπの有理数倍ではない.

[A]もしδがπの有理数倍ならば,あるnに対しnδがπの整数倍となって,tannδ=0または∞となる.そこで,すべての整数nに対し,tannδ≠0,∞であることを示す.

 加法公式

  tan(n+1)δ=(tanδ+tannδ)/(1−tanδtannδ)

より,

  tanδ=2√2

  tan2δ=−4√2/7

  tan3δ=10√2/23

  tan4δ=−56√2/17

  tannδ=a√2/b

ならば

  tan(n+1)δ=(a+2b)√2/(b−4a)

帰納的にtannδはすべてのnに対して√2の有理数倍(=a√2/b)であることがわかる.

 この分数の(a,b)=(2,1)から出発して,(分子,分母)=(a+2b,b−4a)を(mod 3)でみると

  (2,1)

  (4,−7)=(1,2)

  (−10,−23)=(2,1)

  (−56,17)=(1,2)

の2ステップの繰り返しになることがわかる.したがって,a,bのどちらも0にはなり得ず,tannδ≠0,∞となる.

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 ところで,この証明には(mod 3)が現れた.あまりにも唐突すぎて,この意味をわかるひとはたとえいたとしても少ないと思われる.

  Z4=cosδ+isinδ=1/3+i√8/3

  z−1/3=i√8/3

より,Z4は2次方程式3z^2−2z+3=0の解であるからというのがその理由である.

  [参]Hartshorne "Geometry: Euclid and Beyond", Springer-Verlag

あるいは(その5)お読みいただき洞察してほしい.

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【2】正八面体の場合

[Q]角δがtanδ=−2√2を満たすならば,δはπの有理数倍ではない.

[A]

  tanδ=−2√2

  tan2δ=4√2/7

  tan3δ=−10√2/23

  tan4δ=56√2/17

  tannδ=a√2/b

ならば

  tan(n+1)δ=(a−2b)√2/(b+4a)

  Z8=cosδ+isinδ=−1/3+i√8/3

  z+1/3=i√8/3

より,Z8は2次方程式3z^2+2z+3=0の解である.

 そこで,この分数の(a,b)=(−2,1)から出発して,(分子,分母)=(a−2b,b+4a)を(mod 3)でみると

  (−2,1)=(1,1)

  (−4,−7)=(2,2)

  (10,−23)=(1,1)

  (56,17)=(2,2)

の2ステップの繰り返しになることがわかる.したがって,a,bのどちらも0にはなり得ず,tannδ≠0,∞となる.

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【3】正十二面体の場合

[Q]角δがtanδ=−2を満たすならば,δはπの有理数倍ではない.

[A]

  tanδ=−2

  tan2δ=4/3

  tan3δ=−2/11

  tan4δ=−24/7

  tan5δ=−38/41

  tannδ=a/b

ならば

  tan(n+1)δ=(a−2b)/(2a+2b)

  Z12=−√5/5+√20/5i

  z+√5/5=−i√20/5

より,Z12は2次方程式5z^2+2√5z+5=0の解である.

 そこで,この分数の(a,b)=(−2,1)から出発して,(分子,分母)=(a−2b,2a+b)を(mod 5)でみると

  (−2,1)=(3,1)

  (−4,−3)=(1,2)

  (2,−11)=(2,4)

  (24,−7)=(1,3)

  (38,−41)=(3,1)

の4ステップの繰り返しになることがわかる.したがって,a,bのどちらも0にはなり得ず,tannδ≠0,∞となる.

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【4】正二十面体の場合

[Q]角δがtanδ=−2√5/5を満たすならば,δはπの有理数倍ではない.

[A]

  tanδ=−2√5/5

  tan2δ=−4√5

  tan3δ=22√5/35

  tan4δ=8√5/79

  tannδ=a√5/b

ならば

  tan(n+1)δ=(5a−2b)√5/(10a+5b)

  Z20=−√5/3+2/3i

  z+√5/3=−i2/3

より,Z20は2次方程式3z^2+2√5z+3=0の解である.

 そこで,この分数の(a,b)=(−2,5)から出発して,(分子,分母)=(5a−2b,10a+5b)を(mod 3)でみると

  (−2,5)=(1,2)

  (−20,5)=(1,2)

  (−110,−175)=(1,2)

  (−200,−1975)=(1,2)

の繰り返しになることがわかる.したがって,a,bのどちらも0にはなり得ず,tannδ≠0,∞となる.

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