■数とあそぶ(その18)

【1】オイラーの五角数定理

  Π(1-q^n)=Σ(-1)^mq^(m(3m-1)/2))

は,オイラーが分割関数p(n)の研究中に発見した関数等式です(1750年).この等式もオイラー積のように「無限積=無限和」型の等式ですが,左辺は整数のk個の平方数の和への分割問題(nが平方和として何通りに書けるか)

  n=□1+□2+・・・+□k

に結びつく母関数で,それを展開すると右辺が得られるというわけです.

 mが負になる項も含んでいるため,展開すると

  Π(1-q^n)=1-x-x^2+x^5+x^7-x^12-x^15+x^22+x^26-x^35-x^40+x^51+・・・

       =Σ(q^(6m^2-m)-q^(6m^2+5m+1))

になります.級数中の係数はすべて0か±1であり,指数の引数はm(3m−1)/2,すなわち,1,5,12,22,35,51,・・・という数列がピタゴラスの五角数であることから,五角数定理と呼ばれています.

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【2】分割数の母関数

 ところで,分割数は,以下の公式によって代数的に定義することができます.

  f(x)=Π(1-x^n)^(-1)={(1-x)(1-x^2)・・・(1-x^n)・・・}^(-1)

    =Σp(n)x^n=1+p(1)x+p(2)x^2+p(3)x^3+・・・

すなわち,f(x)は分割関数p(n)の母関数で,p(n)はx^nの係数になっています.

 オイラーは4平方和定理

  「すべての正の整数は4個の整数の平方和で表される」

を証明するために,級数1+2Σx^(n^2)を考察しているのですが,このアイディアは,nの分割がnをk個の平方数の和への分割(nが平方和として何通りに書けるか):

  n=□1+□2+・・・+□k

として表した場合の解と1対1に対応することに拠っています.

 このことより,

  f(x)=(1+x+x^2+・・・)(1+x^2+x^4+・・・)(1+x^3+x^6+・・・)・・・

    =Π(1-x^n)^(-1)

そして,

  f(x)=Π(1-x^n)^(-1)={(1-x)(1-x^2)・・・(1-x^n)・・・}^(-1)

    =Σp(n)x^n=1+p(1)x+p(2)x^2+p(3)x^3+・・・

の恒等式は,1918年にハーディーとラマヌジャンによって,p(n)の漸近式を見いだすのに利用されることになるのです.

 なお,オイラーの五角数定理

  Π(1-q^n)=Σ(-1)^mq^(m(3m-1)/2))

により

  x^(1/24)/f(x)=Σ(-1)^nx^((6n-1)^2/24)

したがって,左辺はデデキントのイータ関数の定義そのもの,また,右辺は確かにテータ級数(ベキが平方数であるような交代級数:例えば,1-x+x^4-x^9+x16-・・・)であることがわかります.

 分割関数の母関数は本質的にモジュラー形式を与えるというわけで,ラーデマッハーはその保型性から明示公式にたどりついたのですが,ハーディーとラマヌジャンはその第一近似式を得たことになります.このことに関して,セルバーグは,ハーディーとラマヌジャンが明示公式までたどりつけなかった原因はハーディーがラマヌジャンを十分に理解できなかったことによると興味深いコメントを述べています.

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