■通信,暗号,そして多面体(その2)
下熱後まもなく書いた原稿を書き直してみる.
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n次元準正多面体はシュレーフリ記号にワイソフ記号を添加したもので表すことができる.
3次元準正多面体の例{34}(111)で説明すると,シュレーフリ記号{34}は単なるタグであって,実はBでもCでも何でも構わない.それに対して,ワイソフ記号(111)は多面体の遺伝子をいう意味合いがあり,指定された正多面体に対して切頂,切稜という操作を加えろというコマンドになっている.
正八面体{34}に対してこの操作を加えるとひとつの頂点のまわりに正方形,正六角形,正八角形が集まった多面体になる.この多面体は(468)と従来呼ばれてきたものであるが,それは表現型(phenotype)であって,その遺伝子型(genotype)はシュレーフリ・ワイソフ記号{34}(111)になっているというわけである.
逆に,{34}(111)からこの多面体の頂点数,辺数,面数,面の形,体積や表面積をすべて求めることができる.3次元場合で説明したから有難味は乏しいかもしれないが,驚くべきことに,この方法ですべての次元の任意の準正多面体情報を得ることができるのである.たとえば95種類ある6次元準正多面体になかから任意に選んだ(33334}(010110)のfベクトルは(5760,23040,32160,19680,5276,476),ひとつの頂点まわりに集まるk次元面数は(1,8,22,29,20,7)と計算されるのである.
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【1】計算のトリック
計算に使っている方法は初歩的あるいは古典的といってもよい位相幾何学的組み合わせ論だけである.しかし,たったn桁の0/1から多面体の基本情報を引き出すことができる様子は1種のトリックのように見える.
その核心部分を紹介すると,それは準正多面体の旗構造にある.それによって,(010110)であれば,oneway-onetime sequencingではなく
(10110)×()
(0110)×(0)
(110)×(01)
(10)×(010)
(0)×(0101)
()×(01011)
にようにdeep sequencingすることによって図形の細部に至るまで情報を得ているのである.
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【2】雑感
私はこれを通信,暗号などに応用できるのではないかと考えた.突飛な発想(妄想?)かもしれないが,多面体そのものを通信に役立てようというわけである.
しかし,その具体的な方法は私には答えを与えられそうにはない.もしかしたら,故・乙部融朗老師ならば4次元多胞体の針金模型の先に通信理論への先駆的な応用を見据えていたのではなかろうかと思える節があるのだが・・・
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