正の整数Aが3辺が有理数の直角三角形の面積になっているとき,すなわち,A=ab/2,a^2+b^2=h^2のとき,合同数と呼ばれる.
ピタゴラス三角形と関連する合同数は古い歴史をもっていて,合同数をすべて求めること,あるいは与えられた正の整数Aが合同数であるかどうかを判定することは古代からの問題であった.たとえば,6は直角三角形(3,4,5)の面積,30は直角三角形(5,12,13)の面積であるから合同数である.最小の合同数は直角三角形(3/2,20/3,41/6)の面積5である.1が合同数ではないことはフェルマーが証明した.7が合同数であることを示したのはオイラーである.
合同数問題を同値な形で言い換えると,「Aを与えるとき,有理数xでx^2+Aとx^2−Aがともに有理数の平方となるものを見つけることができるか」になる.すなわち,(平方因子をもたない)正の整数Aが合同数であるための必要十分条件は
x^2+Ay^2=z^2
x^2−Ay^2=w^2
が整数解でy≠0のものをもつことである.A=1のときがフィボナッチの問題である.
連立整数解をもつ整数Aが合同数であるが,合同数がいまもなお興味をかきたてる理由のひとつは,合同数では最小解がしばしば常軌を逸した大きさになるからである.たとえば,A=101は合同数であって,最小解は
x=2015242462949760001961
y= 118171431852779451900
z=2339148435306225006961
w=1628134370727269996961
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【1】合同数と楕円曲線
2つの方程式をかけると
(zwx/y^3)^2=(x^2/y^2)^3−A^2(x^2/y^2)
を得る.
合同数問題における整数Aの性質と楕円曲線:
y^2=x^3−A^2x=x(x+A)(x−A)
Aは合同数←→y^2=x^3−A^2xは無限個の有理点をもつ
との関連については
J.S.Chahal「数論入門講義」共立出版
などを参照していただきたいのであるが,わかっていることをまとめると,
[1]Aが分離的数の場合,
A=1,A=2→自明解のみ
A=3(mod8)→自明解のみ
A=5,6,7(mod8)→非自明解がある
A=1,2(mod8)→どちらの場合もある
Aが分離的とはp^2|Aなる素数pがないこと,すなわち,A=±p1p2・・・pn,pi≠pjと因数分解されることである(A=±1は分離的,A=1は平方数であり分離的数である唯一の整数).
k=5,6,7(mod8)→非自明解がある
という予想は,BSD予想からも自然にでてくるものであるという.
[2]非自明解がある場合,
Ac^2=ab(a^2−b^2) (a,b)=1,a≠b(mod2)
を満足するa,b,cに対して,
x=(a^2+b^2,2c,a^2−b^2+2ab,a^2−b^2−2ab)
は非自明解を与える.
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【2】合同数の判定アルゴリズム
A=1,2,3,4は合同数ではなく,A=5,6,7は合同数であるが,与えられた正の整数Aが合同数であるかどうかを判定する手順については,タンネルの定理(1983)
「Aを平方因子をもたない正の奇数とすると,Aが合同数ならば
2x^2+y^2+8z^2=Aを満たす(x,y,z)の組数は,2x^2+y^2+32z^2=Aを満たす(x,y,z)の組数の2倍に等しい.(BSD予想が正しいならば逆も成立する.)」
たとえば,A=101(合同数)の場合,A=5(mod8)であるが,
2x^2+y^2+8z^2=A→0組
2x^2+y^2+32z^2=A→0組
非自明解そのものを与えることはできないものの,合同数か否かの判定は可能である.
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