■乙部融朗の針金模型と通信理論(その8)
乙部融朗の針金模型には,高次元模型の持つ特徴が表現されているが,悲しいかな,3次元人には難解極まりない.そこで,今回のコラムでは高次元図形を正しく認識する方法について述べたいと思う.
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まず,4次元空間が実在するというのは,ある意味,人間の理解を超えていますが,4次元図形は数学的脳産物として十分に考えうるものです.
4次元図形は3次元図形が4次元空間をリンゴの皮のように取り囲んだ図形です.しかし,それを3次元空間に投影すると内部構造をもった3次元図形の集合体として描写されます.すなわち,内部は4次元空間ではなく3次元図形で充満された形になってしまうのですが,このことが理解の最大の障壁であるようです(実際によく質問されます).
そのことを3次元で考察しますと,3次元図形を2次元平面に投影すると内部構造をもった2次元図形の集合体として描写されます.また,3次元図形は表裏の2次元図形が3次元空間を内包したものになっています.したがって,内部構造をもつということはおかしいことで何でもなく,当然のことなのです.
つぎに,次元をひとつあげて,その投影図が4次元空間を取り巻いているようにイメージするためには,脳のなかで,投影図の中心を北極,投影図の内部を北半球,表面を赤道とみなします.また,ここまでは膨張してきましたがこれからは収縮に転じて,内部を南半球,最後は投影図の中心を南極というように再構成しなければなりません.
このことを再び3次元で考察します.北極から360機の飛行機が南極に向かって経線上を等速航行するとします.観測者が北極星からこれを見ていると,地球は円板に見え,飛行機は次第に全長が縮まり,赤道上空では機体長さは0になってしまいます.しかし,その間,機体の幅は一定に保たれます.地球が透明であれば,その後は機体の長さは回復していき,機種が中心に向いてきます.北半球上の点と南半球上の点は同一の点とみなされます.
それをバネにして,4次元でも思考的類推を行うと,前記の如く,「脳のなかで,投影図の中心を北極,投影図の内部を北半球,表面を赤道,ここまでは膨張してきましたがこれからは収縮に転じて,内部を南半球,最後は投影図の中心を南極というように再構成しなければなりません」となるわけです.
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