「正多面体に内接する最大の別の多面体は何か」という問題では5種類の正多面体の組み合わせは全部で20通りあります.立方体に内接する最大の正八面体の解答はいささか意外な結果になりますが,今回のコラムでは正四面体の最大内接立方体と立方体の最大内接正四面体について調べてみます.
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(Q1)正四面体に立方体を内接させる問題を考えます.正方形の8つの頂点は正四面体の面上にあり,4つの頂点は正四面体の底面に,2つの頂点は斜面に,あとの2つの頂点はそれぞれ斜面の上にあるものとします.
(A1)正四面体の面上に立方体の1面と1辺と2頂点が接する配置ですが,このとき,正四面体に内接する最大の立方体が得られます.その場合の体積比の計算方法ですが,立方体の上面を延長した正三角形の断面を考えると(Q1)と同じ状況が現れます.
正四面体の1辺の長さを1とし,立方体の上面を延長させた面が正四面体の斜辺をy:1−yに内分するとき
(2√3−3)y=(1−y)sin60°・sinδ
ここでδは正四面体の二面角で,cosδ=1/3ですから,
sinδ=2√2/3
したがって,
(2√3−3)y=(1−y)(3/2)^1/2
y=√2/(6−3√3+√2)
立方体の1辺の長さは
(2√3−3)y=6/(6+4√3+3√6)=0.295907
ですから,求める体積比は
{6/(6+4√3+3√6)}^3・12/√2=0.219852
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(Q2)立方体にはいる最大の正四面体は?
(A2)立方体の上面に1本の対角線を引きます.下面には上面の対角線と直交する向きの対角線を引きます.この4頂点を選べば驚くほど単純な正四面体が得られます.
正四面体の辺が立方体の対角線になるように配置すると立方体に正四面体を内接させることができることは最初ケプラーにより指摘されたので,ケプラー四面体と呼ばれます.正六面体の4個の頂点を結ぶと,正六面体の中に正四面体ができますから,この正四面体の体積はもとの正六面体の1/3であることは簡単にわかります,
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(Q3)立方体にはいる最大の正八面体は?
立方体に内接する正八面体の場合,立方体の各面に2本ずつ対角線を引き,6個の対角線の交点を選べば正八面体が得られます.この正八面体は立方体に内接する2つのケプラー四面体の積集合になっています.なお,積集合ではなく和集合はケプラーの八角星と呼ばれます.正四面体の6個の辺の中点を結ぶと,正四面体の中に正八面体ができますから,この正八面体の体積はもとの正四面体の1/2であることは簡単にわかります.したがって,正八面体の体積はもとの立方体の1/6となります.
しかし,これは立方体に内接する最大の正八面体ではありません.解答はいささか意外な結果になります.
(A3)ここでは,立方体に内接する最大の正八面体の作り方を記しますが,立方体の頂点からでる3本の辺を3:1に内分する3点をとります.その頂点の対蹠頂点からでる3本の辺を3:1に内分する3点をとり,この6点を選べば立方体に内接する最大の正八面体が得られます.
(3√2/4)^3√2/3=9/16=0.5625
最小(0.167)であった正八面体が正20面体の0.515を超え,最大(0.5625)になるのです.
[参]コラム「立方体に内接する最大の正多面体」
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