(その3),(その5)では与えられたf個の面をもつ多面体に対する等周不等式の問題を取り上げた.
(Q)3次元空間の多面体について,f個の面をもつ多面体の中で等周比の最小値を与えるものは何か?
(A)f≦7においては正四面体,直三角柱,立方体,直五角柱.f=12では正十二面体が最小値をとる.しかし,f=8で等周比の最小値をあたえるものは正八面体ではない.
凸f面体の表面積をS,体積をVとすれば,等周不等式は,
S^3/V^2≧54(f−2)tan(ωf)(4sin^2(ωf)−1)
ただし,等号は3稜頂点多面体に対してのみ成り立つ.
与えられた頂点数をもつ多面体の場合,対応する不等式は正しくないことがわかっていて,たとえば,3角形多面体に関しては
S^3/V^2≧54(n−2)(3tan^2(ωn)−1)
であることが予想されているが,これは未だに解決されていない.
今回のコラムでは,多面体ではなく多角形に対する等周問題と取り上げてみたい.平面上の凸多角形に関してさえ,未だに解決されていない問題がたくさん残っているのである.
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【1】2次元等周不等式
「周長Lの等しい平面領域で,最大の面積Sをもつものは円である.」これを別の表現にしたものが,等周不等式
「L^2≧4πS 等号は円に対してのみ成り立つ.」
である.
n角形に関する等周不等式は,n角形の周の長さが与えられているとき,面積の最大のものは正n角形であるから,
L^2≧4nStan(π/n)
等号は正n角形に対してのみ成り立つ.
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[Q]与えられた直径をもつ凸n角形で,最大周長をもつものは何か?
[A]nが奇数kで割り切れるならば,ルーローのk角形の各弧をn/k等分して頂点を決め,その凸包となる多角形.n=2^rの場合は未解決で,最適な四角形は正方形ではなく,最適な八角形もまた正八角形でないことが示されている.
一般にn角形の直径に関する問題はnの整除性ゆえ難解となる.たとえば,奇数のnに対して,与えられた直径をもつ凸n角形で,最大面積をもつものは正n角形であるが,n≧6の偶数の場合はあてはまらない.正方形以外にも多くの最適四角形があり,最適六角形・八角形は正五角形・正七角形をわずかに変形させたものであることが示されている.
[Q]与えられた直径をもつ3次元多面体で,最大体積をもつものは何か?
はなかなか一筋縄ではいかない問題であろう.なお,3次元空間の多面体について,以下のことがわかっている.
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【2】多面体の稜の全長について
単位球面をn(≧3)個の等面積な部分に分割する網目の長さの総和Lについては,
L≧6(n−2)arccos(2/√3ωn)
等号は3稜頂点多面体の球面網に対してのみ成り立ちます.
また,表面積Sの凸多面体のすべての面が等面積ならば,稜の全長は
L≧√(6(n−2)Stanωn)
等号は3稜頂点多面体に対してのみ成り立つ.
以上より,与えられた直径Dの球を内部に含むならば,L/Dの値は立方体のとき最小値をとり,
L≧12D
となることが証明されています.立方体が最小の稜の長さの和をもつのです.
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