■e+πに収束する分数列(その18)
【1】超越数
古代ギリシャのピタゴラス学派は√2や黄金比を発見し,それらが有理数ではないことを知って驚きましたが,超越数の研究が本格的に始まったのは,1844年,リューヴィルによる超越数の発見以後のことです.
リューヴィルは
2^(-1!)+2^(-2!)+2^(ー3!)+・・・+2^(-n!)+・・・
が超越数であること,すなわち,超越数の存在をはじめて示したのです.後にカントールは,ほとんどの数は超越数であることを証明しています.
1873年,エルミートは
e=1+1/1!+1/2!+・・・+1/n!+・・・
が超越数であることを証明しました.これはリューヴィル数のような人為的に作った数ではない最初の超越数です.
リンデマンは,エルミートの方法を一般化して,πの超越性を証明するのですが,リンデマンの定理(1882年)より,
e,π,e^(√2),e^α,log2,logβ
(α,βは代数的数で,α≠1,β≠1)
の超越性が導かれます.
πは超越数ですから√πも超越数なのですが,したがって,√πは代数方程式の解とはなりえず,ギリシャの三大作図問題のひとつ,円積問題(円の正方形化問題)は作図不能となるのです.また,これにより,指数関数:y=exp(x)は,点(0,1)を除き代数的点を通ることができないことになるのですが,指数曲線や対数曲線が超越曲線と呼ばれる所以です.
1900年,ヒルベルトはパリの国際数学者会議において,2^(√2)が超越数であるかどうかを当時の数学の問題のひとつとしました(ヒルベルトの第7問題).この問題は,「0または1でない代数的数αと有理数でない代数的数βに対し,α^βが超越数であることを示せ」というものですが,1934年,ゲルフォントとシュナイダーによって独立に,肯定的に解決されました.
その結果,
2^(√2),e^π,α^β,log102,logba
がいずれも超越数であることが判明しました.なお,
e^π=(-1)^(ーi)
は,ゲルフォント・シュナイダーの定理によって超越数なのですが,
π^e,π^π,e^e
は有理数かどうかもわかっていませんし,π+eは無理数かどうかも知られていません.
ついでに述べますと,1929年,マーラーは
2^(-2^1)+2^(-2^2)+2^(ー2^3)+・・・+2^(-2^n)+・・・
の超越性を示し(マ−ラーの定理),さらに1961年には,自然数を順に並べて得られる正規10進法小数(チャンパーナウン数)
0.12345678910111213・・・
が超越数であることを示しました.
また,Γ(1/2)=√πは超越数ですが,ネステレンコの定理より,
Γ(1/3),Γ(1/4)
も超越数であることが導かれます.
この辺の話を詳しく知りたい方には「無理数と超越数」塩川宇顕(共立出版)をお勧めします.
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