■e+πに収束する分数列(その6)
整数の平方根の連分数についてみていきます.
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【1】周期性
連分数展開によって
(1+√5)/2=[1;1,1,1,1,1,・・・]
√2=[1;2,2,2,2,2,・・・]
のように,1や2が無限に繰り返されるという規則性を見ることができます.
√3=[1;1,2,1,2,1,2,・・・]
では交互に1,2が現れる循環連分数となります.以下,
√5=[2;4,4,4,・・・]
√6=[2;2,4,2,4,2,・・・]
√7=[2;1,1,1,4,1,1,1,4,・・・]
一般に,√mの連分数展開は循環連分数となり周期性が証明されます.これは既約分数の小数展開が循環小数になることと対比するとおもしろい事実です.
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【2】2倍性
その際,周期の最後の数は最初の数q0の2倍に等しい,すなわち,
√m=[q0;q1,q2,・・・,qn-1,2q0,・・・]
という周期nの連分数展開が得られます.
√2=[1;2,・・・]
√3=[1;1,2,・・・]
√5=[2;4,・・・]
√6=[2;2,4,・・・]
√7=[2;1,1,1,4,・・・]
すなわち,どの循環節もqn=2q0=[2√m]で終わっています.
たとえば,√199の展開
√199=[14;9,2,1,2,2,5,4,1,1,13,1,1,4,5,2,2,1,2,9,28,・・・]
をみると,14で始まり28で終わるというのもこの理由によります.
このように,標準無限連分数のうち,部分分母列のあるところから先が巡回的になる循環連分数は2次の無理数(整数係数の2次方程式の解として表される数)に収束します.この性質により,整数項の標準連分数はいわゆるペル方程式:x^2−my^2=d(多くは±1,±4)の解法など整数論の分野で活用されます.
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【3】回文性
また,√199の循環節の最後の28を除くと13を中心として対称になっていることにも気付かされます.
√19=[4;2,1,3,1,2,8,・・・]
√29=[5;2,1,1,2,10,・・・]
√43=[6;1,1,3,1,5,1,3,1,1,12,・・・]
√54=[7;2,1,6,1,2,14,・・・]
√76=[8;1,2,1,1,5,4,5,1,1,2,1,16,・・・]
√94=[9;1,2,3,1,1,5,1,8,1,5,1,1,3,2,1,18,・・・]
√1000=[31;1,1,1,1,1,6,2,2,15,2,2,6,1,1,1,1,1,62,・・・]
循環部の最後の項を除いた部分は回文(前から読んでも後から読んでも同じ)になっているという事実も,199のみならず,2次の無理数√mに共通していえる性質です.
√m=[q0;q1,q2,・・,q2,q1,2q0,・・・]
なお,2次の無理数には循環連分数が対応しますが,連分数による実数の最良近似は解を下方と上方から近似していく方法であって,ユークリッドの互除法に直結しています.
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【4】周期1の整数
以上のことから,最も素朴な循環連分数は
√m=[q0;2q0,2q0,2q0,・・・]
で表されるものと考えられます.
このとき,
P=2q0^2+1,Q=2q0
より,mは
(2q0^2+1)^2−m・4q0^2=±1
を満たす整数となるのですが,結局,このようなmは
m=q0^2+1=2,5,10,・・・
となることが導き出されます.
√2=[1;2,2,2,・・・]
√5=[2;4,4,4,・・・]
√10=[3;6,6,6,・・・]
√101=[10;20,20,20,・・・]
しかし,他の整数の平方根はかなり長い周期を持つが,長周期を予言する公式はないようである.
√61=[7;1,4,3,1,2,2,1,3,4,1,14,・・・,・・・]
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