今回のコラムでは,5角24面体の黄金化立体と5角60面体の白銀化立体の二面角を求めてみることにする.その際,必要になるのは連立3元2次方程式の解と回転行列である.
連立3元2次方程式では2実数解が得られるはずだが,数値計算誤差がつきまとうため2虚数解になったりして計算が難航したが,阪本ひろむ氏に助けてもらいながら修正し最終的には実数解を得ることができた.
また,コラム「凧型24面体の黄金化と凧型60面体の白銀化」では正五角形面をz軸方向にして投影したので,座標計算は簡単であったが,「5角24面体の黄金化と5角60面体の白銀化」では辺心図を用いたため,任意の軸の周りの回転行列は必須のものになった.
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【1】回転行列
空間を回転させる行列で直交変換となっているパラメータ数が3つの「回転」かつ「直交」行列として
(1)オイラー角に基づくもの
(2)ロール・ピッチ・ヨーに基づくもの
がある.(1)はz軸まわりの回転α→新しいy軸まわりの回転β→新しいz軸まわりの回転γ,(2)はz軸まわりの回転φ→新しいy軸まわりの回転θ→新しいx軸まわりの回転ψの3段階によって表すもので,両者に本質的な違いはない.
x,y,z軸の周りの回転では使いにくいので,任意の軸の周りの回転行列を探してみたところ,単位ベクトル
n=(α,β,γ)
を回転軸とし,その周りに正の回転方向にθだけ回転する回転行列が見つかった.それはα,β,γは方向余弦で,α^2+β^2+γ^2=1を満たすものとして
R(1,1)=α^2(1-cosθ)+cosθ
R(2,2)=β^2(1-cosθ)+cosθ
R(3,3)=γ^2(1-cosθ)+cosθ
R(1,2)=αβ(1-cosθ)+γsinθ
R(2,1)=αβ(1-cosθ)-γsinθ
R(1,3)=αγ(1-cosθ)-βsinθ
R(3,1)=αγ(1-cosθ)+βsinθ
R(2,3)=βγ(1-cosθ)+αsinθ
R(3,2)=βγ(1-cosθ)-αsinθ
で表される回転行列である.
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【2】二面角の計算
阪本ひろむ氏に求めてもらった連立3元2次方程式の解と回転行列をもとに必要な頂点座標を計算した.頂点の座標は
黄金化5角24面体 白銀化5角60面体
A(0,0,1.38298) A(0,.529668,.857043)
B(.172475,.667443,.895711) B(-.107905,.110308,.732555)
C(.595118,.595118,.595118) C(.107905,-.110308,.857043)
D(.827357,.172474,.599089) D(.365219,0,.956155)
E(.667443,-.172474,898711) E(.243692,.194229,.680689)
F(.595119,-.595117,595118) F(.525904,.281407,.564545)
で与えられる.
二面角は
黄金化5角24面体の二面角=177.263, 179.594 (123.792)
白銀化5角60面体の二面角=65.5408, 179.923 (106.617)
と計算されるが,凧型多面体の場合と比較してみると
黄金化凧型24面体の二面角=170.864 (127.511)
白銀化凧型60面体の二面角=74.9556 (116.582)
になり,ほぼ相同な値が得られたことになる.
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